魔女っ娘マナ

《上》

 時雨[シグレ]――その名は帝都に広く知れ渡っている。
 年齢不詳、出身地不明、経歴不明、彼の過去に関すること――全て不明。しかし、この街ではよくあることなのでさして不思議なことでもないし気に止めることでもない。
 見た目は中性的な美しさに満ち溢れていて、妖艶さを身に纏っている。帝都一の美しさを持つと言われる彼は人々から『帝都の天使』と呼ばれている。
 今、彼はこの街で小さな雑貨店を経営している。客はたくさん来るが殆どが〝時雨〟目当てで売り上げはあまりいいとは言えない。時雨目当ての客がちゃんと買い物をしてくれるならば売り上げは上がるだろう、だが時雨を見に来る客が買い物をするとは限らない、つまり時雨の美しさと売り上げはあまり関係がないらしい。だが、店の売り上げが上がらないのは品揃えの奇妙さの為だと言う者も多くいるのだが、時雨自身はそれを断固否定している。
 帝都の観光プログラムの中には『時雨を見に行こうツアー』というものもあり、普通ならば売り上げが上がると皆は想像するに違いない……がしかし、やはりこちらも時雨を〝見る〟ということがメインらしく、店の前にバスは止まるし、カメラのシャッターの嵐が起きるわで、買い物客に取っては迷惑極まりないのが実状らしい。
 だが、実は時雨はちゃっかり観光会社からお金をプールして貰っているらしい。しかし、それでも時雨の店は毎月赤字を記録してしまってる。店が赤字になるのは時雨の趣味で無意味に不必要で売れない物を大量仕入れをするからだという声があるが、時雨はそれも断固否定してる。
 そこで彼は店の経営者として仕方なく店の赤字を補うため、ある副業をすることにしたのだった。

 この街では毎日のように凶悪犯罪が数多く起こっていて、その件数は年々増加傾向にある。そのため帝都警察だけでは年々手に負えなくなっていた。
 そこで帝都はある政策を打ち出した。その政策とは凶悪犯罪者に懸賞金を賭けることであった。そしてこの街に〝ハンター〟が生まれた。
 当初のハンターは帝都政府の依頼だけを受けていたが、今では一般の依頼も請け負うようになり、ハンターの仕事は日に日に広範囲に及ぶようになっていた。
 凶悪犯罪者の処理から、遺跡調査、モノ探し、妖物退治まで報酬しだいでどんな仕事もこなすスペシャリストとなった彼らたちはハンターではなく〝トラブルシューター〟[問題処理屋]と徐々に呼ばれるようになっていった。
 時雨の名はトラブルシューターになりその知名度を増すことをなった。しかし、彼はトラブルシューターの仕事のことをあまり好きではないらしいのだが……雑貨店の運営をしていくためには仕方ないらしい。
 たしかに一流のトラブルシューターは儲かる。事実、時雨は本業の雑貨店より副業のはずのトラブルシューターの方が数十倍お金になっているらしい。

「はぁ……今月も赤字……でも総合的には超黒字……こんなことでいいのかなぁ~?」
 時雨はこたつに入りながら店の帳簿とにらめっこをしていた。
「はぁ、ボクは雑貨屋一本でいきたいのに……」
 雑貨店〝ジズ・シエスタ〟日用品から非日用品まで豊富な品揃えを売りにしている店である。帝都のパンフレットにも『美男子の店長のいる店』として載っている有名店なのだがジズ・シエスタに来店する客の殆どは時雨見たさで来ていて、買い物をしていく者は少ない。つまり売上の方はさっぱりであった。
「あ~~~~~っ!!」
 時雨の声が店の外まで響き渡る。ジズ・シエスタに訪れていた客が何事かと静まり返った。
 ドドドドドッ! バンッ! 時雨のいる部屋へ何者かが慌てたようすでふすまを開け駆け込んできた。
「テ、テンチョどうしたんですかぁ~!?」
 部屋のふすまを開けたのはツインテールにメガネにメイド服……の可愛らしい女の子であった。歳は10代後半から20代前半らしいのだが、顔立ちのせいか、どう見ても中学生くらいにしか見えない。
 入って来た女の子は、膝に手を付き肩で息を切らしている。
「ど、どうしたんですぅ、大声なんて出して?」
「あぁ、ごめんごめん、今月も赤字でさぁ、つい大声だしちゃった」
 『えへっ』と時雨は小悪魔のような笑顔を見せた。
「犯罪ですよ、その笑顔は」
 時雨の得意技の笑顔は誰をも魅了し、何でもいうことを聞かせてしまう反則技であった。だがこの娘[コ]にはさして効果が見られない。
「はぁ、どうしたら黒字になるんだろうね」
 帝都の天使はまるで自分のいた世界を見つめるかのように空を見上げた。
「テンチョのグッズ販売するとか?」
「ヤダ!」
 即答だった。
「どうしてですかぁ~」
「とにかく、それはイヤなの。ねぇ、別の方法はないの?」
 メイド服の店員は腕を組んで首を傾け『う~ん』といった表情で少し考えた後、ポンと手を叩いた。
「そうだ! 通信販売を始めたらどうですかぁ」
「あぁ、それはいいかも」
 時雨もメイド服の店員の意見に対して好感触といった感じだ。
「でしょぉー」
 メイド服の女の子は誇らしげな表情を見せた。
「ありがとう、ハルナちゃん」
「エヘッ」
 ハルナはかわいらしく微笑んだ。
「ところで、ハルナちゃんお店の方は?」
「えっ!?」
「今、ハルナちゃんしか店員いないでしょ?」
「あぁぁぁぁ~~~~っっ!! ごめんなさい、すぐに戻りますぅ!」
 ハルナは慌てて店に走って行った。
「……はぁ、若いってすばらしいなぁ」
 時雨はお茶をすすりながら深く息をついた。その姿からは若いという言葉は微塵も感じられなかった。
 ドン! ゴロゴロ! バタン! 階段の方から大きな音が聞こえた。そして――。
「いった~い」
 という声が聞こえてきた。
「……はぁ、元気だねぇ」
 時雨はお茶をすすりながら深く息をついた。やはりその姿からは若いという言葉は微塵も感じられなかった。

 時雨は太陽が一番高い位置に昇ったころ、店の裏にある庭に出て、剣術の特訓をしていた。時雨が剣を振るその姿はまるで舞を舞っているかのように優雅さを極めていた。
 庭は高い壁に囲まれ外からの一切の干渉を遮断している。はずだったのだが、時としてそうもいかない場合があるらしい。
 時雨が剣術の特訓をし始めて10分くらい経ったころ、時雨の目の前である異変が起きた。突如、空間が湾曲しはじめたのだ。
 空間は時雨の目の前でその形を渦巻き状に歪め、徐々に渦の中心に吸い込まれていき、最終的には半径1メートルの穴がぽっかりと宙に浮かんだ。
「ただいまー!」
と、宙にぽっかりと口を開けた穴から女の声が聞えたと思ったら、その中から金髪の巻き髪を揺らしながら派手な格好をした女性が這い出て来た。この格好は一見法衣にも見えないこともないが、それにしても派手だった。
「時雨ちゃん、ただいまー!」
 穴から出てきた女性は時雨を見ると『よぉ!』といった感じであいさつをした。
「やぁ、突然のお帰りだねぇ、マナ」
 時雨はマナに微笑みかけた。しかし、マナは不機嫌な顔をしていた。
「いつも言ってるでしょ、マナじゃなくて、マナ様って呼びなさいって」
 『ハイハイ』と時雨は思ったがここはおとなしく従がっておいた。そして時雨はちょっとわざとらしく言った。
「わかりました、マナ様。以後気をつけます」
「わかればよろしい」
 〝マナ様〟は腰に手をやって、ふふーんという表情をしている。完全に時雨のことを見下しているといった感じだ。
「ところでマナ様、遺跡の調査の方はどうでしたか?」
「思ったよりたいした遺跡じゃなかったわね、でもまぁ、おもしろい魔導書は拾ってきたけど」
「拾ったんじゃなくて、パクってきたんでしょ」
「パクったなんて人聞きが悪いわねぇん。パクったんじゃなくてちゃんと考古学者の人にプレゼントされたの!」
 拾ったからプレゼントされたに何時の間にか変わっていた。
「どうして、プレゼントなんてされたの?」
「そ、それは……」
 マナは時雨の質問に対して目が泳ぎ言葉を詰まらした。
「どうせまたテンプテーションでもかけたんでしょ」
 テンプテーションとは異性を魅了し、自分の意のままに操る術である。
「違うわよ、私の美貌で魅了して貰ったの!」
 マナの否定の言葉には必要以上に力が入っており、そのことからマナがテンプテーションで考古学者を堕としたのは明白だった。
「まぁ、そういうことにしておくよ。ところでその魔導書なんだけどさぁ、読み終わったらボクにくれない?」
 時雨は必殺技のおねだり光線を出したがこの技は身内には効かないらしい。
「どうしようかなぁ~、そうねぇ私とのゲームに勝ったらあげてもいいかな」
「どんなゲーム?」
「今日一日、時雨ちゃんがあたしに殺されちゃいけないゲーム」
「はぁっ! なにそれぇ!?」
 時雨は思わず声を張り上げた。
「耳悪いんじゃないのぉ、しょうがないわねぇん、もう一度説明して、ア・ゲ・ル」
「ありがとうございます。マナ様」
「スタートの合図であたしは全力で時雨ちゃんを殺そうとするから、時雨ちゃんは逃げるなり、隠れるなりして明日の零時00分00秒まで死ななければ時雨ちゃんの勝ち、賞品ゲットみたいな感じ。OKわかった?」
「で、そのスタートの合図は?」
「3・2・1・スタート!」
「はぁっ!?」
 マナの当然のスタートの合図に時雨の動きが一瞬止まった。
 その隙を突いてマナが攻撃をしかけてきた。
「あたしの手で永遠の眠りにつかせてあげるわぁん」
 マナの手から突如大きな鎌が現れ、マナは両手でそれを大きく振りかぶった!
 時雨は間一髪でそれを避け、後退りをする。大鎌の空気を斬る音が辺りに鳴り響く。不意打ちだった。
「いきなりスタートするなんて、汚いよ!」
「あたしがルールブックなのよ!」
「なんだよそれ!」
 身の危険を感じた時雨は全力で駆け出した。
「おほほほ、あたしから逃げられると思って」
 時雨は目の前に立ちはばかる高い壁を一飛びで飛び越えた。その姿は空を舞う魔鳥のようであった。
「はぁ、なんでこんなことになるんだろ……?」
時雨は走りながら自分の不幸を呪った。しかし、今はそんなことを考えている暇はない。なぜなら時雨の命を狙う女性は人々に世界一の魔導士とうたわれている、自称超美人天才魔導士なのだから。
 時雨が悪寒を感じ後ろを振り返るとそこには、マナの姿があった。だが、時雨の目線は普通とは違う場所、空の上にあった。なんと、マナは空を飛んでいたのだ。
「はぁ、彼女なんでもアリだなぁ。ホントに殺されるかも……」
 引きつった顔をする時雨の頬に冷たい汗が流れた。
「待ちなさい、何処に逃げようが隠れようがあたしにかかれば全て無意味よぉん」
 マナの背中からは漆黒の翼が生えており、それで空を飛んでいるようだ。漆黒の翼に大鎌、その姿はまるで死神のようだった。
 その姿を見た帝都都民は死神が現れたと大騒ぎをして、TVの中継車までが出動する始末であった。
 その日の夕方のニュースでこのことは取り上げられ、時雨とマナのバカ騒ぎは瞬く間に帝都都民に知られることになったのは言うまでも無い。

 どうにかマナの追跡を一時的にまくことのできた時雨は神社の境内の石畳の上に立っていた。
 この神社は由緒正しい神社で歴史も古く、太古の神術にも精通している。そのため神社には強力な結界が張られており、少しの間であればマナの目をくらますことができると思った時雨はここに逃げ込んで来たのであった。
 辺りをきょろきょろと見回して時雨は何かを探しているようだった。
「早く、命[ミコト]を探さなきゃ、ホントに殺されちゃうよ」
 命とはこの神社の美人神主として有名な超一流の神術使いで、時雨はこの帝都でマナに対抗できる一人として彼女に会いに来たのだった。
 ぶるぶるっと身震いをした時雨が後ろを引きつった顔で振り向くとそこには、漆黒の翼を持つ悪魔――マナが大鎌を構えて空を飛んでこちらに向かって来るではないか。
 マナは本来翼無しでも空を飛ぶことができるのだが、この演出効果が時雨の恐怖をより一層煽[アオ]っていた。

 巫女装束姿でほうきを片手に命が境内を掃除していると恐怖の形相を浮かべて全力疾走してくる時雨の姿が目に入った。
 時雨は命の前で急ブレーキをかけると凄く慌てた様子で話し出した。
「た、助けて、マナに殺されるぅ~」
「どうしたのじゃ、マナに滅せられるとは?」
 命は少し目を細め時雨を見つめた。
「詳しい話はそのうち話すから、今はボクの命をマナから守って!」
 時雨は『ねぇお願い』といった感じで命の肩を掴んで思いっきり揺さぶった。
「や、止めぬか、落ち着け!」
 命は力いっぱい時雨の手を振り払った。
「だ、だってぇ~~~」
 そう言って時雨は自分の後ろを指差した。その先には宙に浮き大鎌を持ったマナが凄いスピードでこちらに向かって来ていた。
「な、なんじゃ、あれは!?」
「時雨ちゃんあたしの目をくらまそうとしてもムダよぉん」
「だ、だずげで~」
 時雨は泣きながら、また命の肩を強く揺さぶった。
「えぇい、止めぬか! 時雨ともあろう者が取り乱すでない」
 マナは大鎌をブンブン振り回しながら、少しずつじりじりと時雨に接近してくる。そして、ついに時雨の真後ろまで来た。
「もう、逃がさないわよ、し・ぐ・れ・ちゃん」
「わ~ん!!」
 時雨は泣きながら命の肩をさっき以上に強く揺さぶった。
「だから、泣くでない、私が話をつけてやるでの」
「あ~ら、命ちゃん、あたしたちの問題に口出ししないでいただけるぅ~」
「仕方ないであろう、時雨にこんなにも泣き憑かれては」
 時雨は命の巫女装束の裾を強く掴んですすり泣いていた。
「して、このような状況になっておるのはなんぞや?」
「今、あたしと時雨ちゃんはゲームの最中なの。ルールは簡単、時雨ちゃんが明日になるまであたしに殺されなければ、あたしの負け、勝った時雨ちゃんには豪華賞品が贈呈みたいな」
「しかし、殺すというのはあまりにも酷ではないのか?」
「あたしがルールだからいいの」
「おぞましき女よのぉ」
 この言葉に反応した時雨はまた激しく泣き出した。帝都の天使がこれほどまでに泣く姿など誰が想像しただろうか? そして、この天使をこれほどまでに泣かせることのできるマナとはなんと恐ろしい女なのだろうか。
 時雨は震える指先でマナを指差した。
「ま、まだボクがやるって言ってないのに勝手にはじめたんだよ」
「あらん、だって魔導書が欲しかったんでしょ?」
「そ、そうだけど……」
「仕方ないのぉ、マナ殿、時雨の助太刀をしてはいけぬという掟はあるのかえ?」
「そんなルールは特に決めてないけど」
「ならば、今この時からわらわは時雨の助っ人じゃ」
「えぇー、命ちゃんが時雨ちゃんの助っ人しちゃうのぉん、強敵現るって感じじゃない」
「そうと決まれば逃げるぞ、時雨!」
「えっ!?」
 命は念の込めてあるお札を何処からともなく取り出すと、それをマナ目掛けて投げつけた。そして、お札は見事マナのおでこに命中した。
「な、なんなのこのお札は?」
「その札には身動きを封づる術がかけてある、まぁお主のことじゃ、ほんの時間稼ぎ程度にしかならぬと思うがの」
 そう言うと命は時雨を引きずりながらこの場をあとにしていった。
 マナは二人を追いかけようとしたが身体が動かない!
「あぁん、何なのこれ、ホントに身体が動かないじゃない」
 境内に取り残されたマナはこのあと10分間、独り悶えていた。

「はぁ、どうにか逃げられた」
「お主、いつもため息ばかりついておるが、ため息をつくと寿命が縮むという話を聞いた事がないのかえ?」
「はぁ、だって仕方ないよ、毎日大変なことばかり起こるんだもん」
「お主も数多の事で苦労しているのだのぉ」
 帝都の天使と美人神主のツーショットは都民の格好の的であった。多くの人は彼らを見かけると足と止めたた呆然と二人を眺めていた。
 時雨がふと足を止めた。
「どうしたのじゃ?」
「ほら、これ見てよ」
「なんじゃ?」
 時雨が指を指した方向には電気屋のショーウィンドがあり、その中にはテレビが飾られていた。そのテレビの画面には夕方のニュースが映し出されていて、ちょうど時雨が見ているその時、あの時の時雨とマナの追いかけっこの姿が映し出されていた。
「あはは、帝都都民が死神と魔導士を間違えるだってさぁ」
「もし、わらわがお主だったら一生街を歩けぬ生き恥じゃ」
「そうかなぁ?」
「まぁ良い、はよう行くぞ」
 二人はまた歩き出した。
「ところでさぁ、命はボクの助っ人をかって出てくれた訳だけどさぁ、勝算とかはあるの?」
「ある」
 命は深くうなずいた。
「えっ、ホントに!」
「勝算が無くば、あんな奴とはやり合ったりはせぬ」
「どんな作戦があるの?」
「この勝負は明日になるまで持ちこたえれば良いとさっき言っとったが。そうでもない、勝負はその前に決着する」
「どういうこと?」
「今夜は満月じゃ」
「あぁ、そっか!」
 時雨は何かひらめいた様子で目を見開いた。
「この街で一番高い建物の所に行くのじゃ」
「帝都タワーのビヤガーデンかな?」
「急ぐぞ」
 二人は急いで帝都タワーに向かうことにした。

《下》

 帝都タワービル――帝都の観光パンフレットにも載っている帝都の観光名所の一つで、帝都一の高さを誇る30年前に建設された建造物である。
 そのタワーの屋上にはビヤガーデンがあり、夜になると仕事帰りのサラリーマンやOLで賑わいを見せる。
 店の位置する場所は、高度が非常に高いため強風が吹き荒れ、店内を超強化ガラスで覆わなければ、とても営業などしてられなかった。
 そのためビヤガーデンと言っても一般的なビヤガーデンと違い屋外にあるという訳ではなかった。
 しかし、壁や天井は全てガラス張りのため外からの光を店内に取り込むことが出来る。それが命と時雨の狙いであった。
 仕事帰りのサラリーマンやOLで活気に満ち溢れているこの場にどうみても不釣合いな二人。
 ひとりは巫女装束で格好がこの場と合っていない。もうひとりはなぜか全身から恐怖を醸し出していて、この場の明るい雰囲気とは正反対の顔をしていた。
 暗い面持ちの黒いロングコートを来た男――時雨はフロアの中央にある時計を見た。
「月が昇るまで後、40分くらいだね」
「まだ、陽が沈んでおらんというのに人が多いのぉ」
 命は店内を一瞥した。
「日曜だからね、しかたないよ」
「しかしのぉ」
 命は渋い表情をしてもう一度店内を一瞥した。
「どうしたの?」
「マナがここに現れたら、この者達に被害を及ぼすのではないかと思ってのぉ」
「……あ゛っ、気づかなかった」
「しかし、多少の犠牲は仕方ないであろう?」
「まぁね、ボクが殺されるよりまし……だよね?」
 時雨は複雑な表情をしながら店内にいる人たちのことを見回した。
 時雨の目線がちょうど中央エレベーターホールに向けられた時、ちょうどエレベーターが来たらしく、そのドアが開かれた。
 チン! という音とともに出てきたのは――。
「探したわよぉん、お二人さーん!」
 エレベーターが開かれたと同時に中から出てきたのはマナだった。
 マナはエレベーターから降りると、腰に手をやりワザとくさいモデル歩きで二人の元へ近づいて来た。
「おほほほ、命ちゃ~ん、やってくれたじゃな~い」
 マナは少し怒りの表情を浮かべ、ゆっくりと二人の元へじりじりと歩いてその距離を狭めてくる。
 命はマナの感情を逆なでするようにいかにもとぼけたようすで言葉を返した。
「なんの事じゃ?」
「おほほ、とぼけてもムダよ~ん」
「だいぶ苦労したようじゃのぉ」
 命はマナを見下したような微小を浮かべた。
「あたりまえじゃない。どんな術を使ったか知らないケド、どんな魔法を使ってもあなたたちの居場所が見つけられなくて苦労したんだから」
 マナは時雨たちを探すのに地道に聞き込みをしたらしい。
「特殊な護符で結界を張ってあったのじゃよ」
 命は護符をマナに見せ付けた。
「さすがは命ちゃんね、でもこのゲームはあたしの勝ちよぉん!」
 マナはそう言うと大鎌をどこからともなく取り出し、突然時雨に襲い掛かった。
 店内の客たちにどよめきが走る。逃げ出す者もいれば時雨たちの周りに群がる野次馬やよっぱらいもいた。
 時雨はコートのポケットからビームサーベルを取り出すとそれのスイッチを押した。すると閃光が飛び出し辺りを照らし、客たちの歓声が挙がる。ショーと間違えて拍手をする者もいた。
「ショーじゃないんだけどなぁ」
 時雨が困った表情をして客たちを見回していると、マナが時雨目掛けて大鎌を振り下ろしてきた!
 時雨はマナの攻撃を流れる水のように交わし、ビームサーベルで大鎌の枝の部分を斬り落した。
 鎌の部分が金属音を立てて地面に落ちた。すると鎌はまばゆい光とともにどこかに消えて、いや、消滅してしまった。
 マナはすかさず次の攻撃に入った。
「我は汝をクイック召喚する」
 マナの足元からは光が迸り彼女の髪は下からの霊気により逆立てられる。
「出でよ、アンドラス!!」
 マナの声と共に地面が裂け中からはおぞましいうめき声が地響きと共に聞えてきた。
 そして、中からマナに召喚された悪魔が巨大な狼にまたがり閃光と共に地の底から現われた。
 悪魔の姿は、体は天使の姿、背中には黄金に輝く翼、頭は鴉、そして、手には剣が握られていた。
「さぁ、アンドラスちゃん、殺っちゃってぇ~ん」
 悪魔は時雨を睨みつけ剣を構えた。
「我、全テヲ滅スル者ナリ」
 時雨は命の方に顔を向け、
「やばいんじゃないの?」
 と問い掛ける。
「客を外に出さねば」
 命はそう言うと指で空[クウ]に印を描いた。
 すると、印を描いた場所に丸い穴がぽっかりと開き、風を切る音を立てながら店内の物を穴の中へと吸い込んで行った。そして、人間までもすごい勢いで吸い込んでいく。
 穴に吸い込まれないように必死で抵抗する者もいたが、あえなく皆穴の中へと吸い込まれた。まさにそれはブラックホールのさながらであった。
 そんな、光景を目の当たりにしながら時雨は命に聞いた。
「ねぇ、これって神隠しってやつ?」
「まぁ、そんなところじゃ」
「あのさぁ、吸い込まれた人たちはどこに行っちゃったの?」
「わからん」
「わからんじゃないでしょ」
『わからん』それはつまり、本当の神隠しとさして変わらないということなのだろうか?
「急いでおったのでの、そこまで手が回らんかった。まぁここよりは安全じゃろ」
「確かに……いや、そうなのか?」
 平然と答える命の言葉に首を傾げる時雨であったが、今はそんなことを考えている暇などなかった。
 悪魔を乗せた狼が咆哮を上げ、悪魔は手に持った剣を一振りした。すると、もの凄い風が店内に吹き荒れた。竜巻だ、悪魔は剣を一振りしただけで竜巻を起こしたのだ。
 竜巻は店内を滅茶苦茶にし、店を覆うガラスの壁は凄い音を立てて粉々に砕け、強風が店内を吹き荒れた。
 時雨は身を屈め強風に耐えている。命とマナは法力により風の影響を全く受けていない。
「……ずるい」
 ガン! 時雨の後頭部に何かが当たった。
「いてぇ~」
「だいじょぶか、時雨?」
「ボクにもその術かけてくんない?」
 命は右手の人差し指と中指で時雨のおでこを強く押した。
「渇! これでだいじょぶじゃ」
「はぁ、それじゃあ行きますか」
 そう言って時雨は悪魔に斬り込んで行った。
 時雨のビームサーベルは地面を擦りながら半円を描き上へと斬り上げられた。その太刀を悪魔は剣で受け止める。
 舞を踊るかのように軽くジャンプ回転しながら剣を横に振る時雨に対し、悪魔は剛剣でそれを軽く受け止めた。
「我、全テヲ滅スル者ナリ」
 悪魔は時雨目掛けて剣を叩き落す。
 それはどうにか受け止められたものの時雨の顔には焦りの色が見える。そして、目線を命の方へとやった。
「見てないで助けてよ」
「わらわはこやつ相手で手がいっぱいじゃ」
 そう言う命はマナと交戦中であった。
 お嬢様笑いを高らかに上げるマナの手には新しい大鎌がしっかりと握られている。
「おほほほ、なかなかやるわねぇん」
「あたりまえじゃ、お主にわらわが負ける訳なかろう」
「言ってくれるじゃな~い」
 マナは大鎌をブンブン振り回しながら命に襲い掛かる。
 命は手に握られた護身刀でそれに応戦する。
 そんな光景を見ながらぼそりと呟く時雨。
「あっちはあっちで大変そうだなぁ」
 時雨が悪魔から目線を外した瞬間を突いて悪魔が攻撃をしかけてきた。
 自分目掛けて振り下ろされた剣をビームサーベルで受け止めると、悪魔はさらに剣で時雨の身体を押してきた。
 地面に足を取られ体制を崩してしまった時雨に悪魔の全力を込めたの大剣が襲いかかる。
 危機一髪、時雨はそれを顔面すれすれのところで相手の剣をビームサーベルで弾き返した。
「危ない、あんなの喰らったら肉片になっちゃうよ、ふぅ」
 額の汗を拭く時雨は顔では笑顔を作っていたが、相手の渾身の一撃を防いだビームサーベルを持った右腕はだらんと地面に立て下がっていた。そう、相手の攻撃を防いだ右腕の骨は粉々に砕けてしまったのだ。
「ちょっと、タイムとかはないよね……?」
 悪魔は時雨の都合などお構いなしといった感じで攻め込んできた。
「はぁ、やっぱし。仕方ないから逃げちゃお」
 そう言うと時雨は全力疾走でとんずらをしようとした。
 それを見た命が叫ぶ。
「待たんか、わらわを残して逃げる気か!」
「そんなわけないじゃない、あはは」
 時雨の顔には確実に同様の色が出ていた。
「……まぁそうじゃな、エレベーターが壊れていては逃げる事もできんか」
「なんですとーっ!!」
 時雨は絶句した。確かに部屋の中央にあるエレベーターはドアが閉まった開いたりそれを繰り返していた。
 悪魔の影が時雨に忍び寄る。
「今年最初の大ピンチって感じだなぁ」
 時雨は今になって、あの時した紅葉との約束を後悔した。
 
 それは先月中旬ごろの金曜日の夜のことであった――。
 帝都の天使は本当に困っているのだか疑わしい表情をしながら目を閉じ少し考えたあと、その艶やかな唇を動かした。
「わかった、取り引きをしよう」
「取り引き?」
「その魔導書を紅葉にやる代わりに仕事手伝ってよ」
「よかろう、しかし、その魔導書はどうやって手に入れるつもりだ?」
「彼女のことだから、その魔導書をパクってくると思うし、彼女1回読んだらすぐに覚えちゃうから、そしたら、君にやるよ」
「契約成立だ。それでは時雨、一緒に狩りを始めよう」
 その言葉を聞いた時雨は不適な微笑み浮かべ空を見上げた。

 ――過去の回想に浸った時雨は苦笑を漏らす。
「……あの仕事よりよっぽどこっちの方が大変だよ」
 時雨はうつむき加減で愚痴をぶつぶつと呟いた。
「時雨ぃ、前を見ぃ!」
 命のの罵声が時雨に浴びせられた。
「えっ!?」
 前を見るとそこには巨大な狼に乗った悪魔がすごい勢いでこちらに向かって来ているではないか。
「……もうヤダ」
 これは時雨の心からの本音であったに違いない。
 とりあえず時雨は、悪魔から逃げながら作戦を練ることにした。
 一方、命とマナの戦いは佳境に入りつつあり、その壮絶さを増していた。
 命はマナの攻撃を反撃せずに全て避けていた。
「さっきから大鎌をぶんぶん振り回しおって、当たったらどうするのじゃ!」
「当たったら当たったでその時はその時じゃなーい」
「仕方ないのぉ」
 命はそう言うと紙の札を一枚出し、指で印を書きそれに込めた。
「動きを封じさせてもらうぞよ、悪く思うでない」
 命は紙のお札をマナ目掛けて投げつけた。
 札はマナ目掛けて一直線に飛んでいく。
「おほほほ、同じ手は二度もくらわないわよぉん」
 マナの身体は札に当たる寸前に左右に分身した。マナの使う魔術はなんでもアリのようだ。
 札は二人のマナの間を風を切りながら通り抜けていく。
「おほほほ、そんなノロい札なんてあたしには当たらないわよぉん」
「ふむ、幻術の一種か。じゃがのぉ、その札は追尾ができるで逃げても逃げても追ってくるのじゃ」
「……!?」
 マナが慌てて後ろを振り向くと札が目の先まで迫っていた。
「……気づくのが遅かった」
 マナの肩がガクンと落ちた。おでこにはゆらゆらと札が揺らめいている。
「そこでじっとして居れ」
「してやられたわぁん」
 命が時雨の元へ駆け寄る。
「時雨だいじょぶか」
「だいじょぶそうに見える?」
「死んではないようじゃな」
「そーゆー問題じゃないでしょ。それよりあれなんとかしてよ」
 二人の目線の先には巨大な狼にまたがった悪魔が時雨を追っかけて来ていた。
「仕方ないのぉ、式紙でも呼び出してみるとするか」
 命が空[クウ]に印を描く。
「汝は全てを呑込み無に還す者なり、”招”!」
 命は右手の中指と人差し指で空[クウ]を突き刺した。すると、空間が裂け、中から式神があらわれた。
 式神は命に抱えられると、そのスイッチを入れられた?
 その光景を見ていた時雨は疑問にかられ、どうしても命に質問をしてみたくなった。
「あのぉ、一つ聞いてもいいかなぁ」
「なんじゃ、ゆうてみい」
「それって……」
「それって?」
「掃除機だよねぇ?」
 そう、たしかに命の腕に抱き抱えられていたのは紛れも無い掃除機だった。
「そうじゃがそれがどうかしたか?」
「いや、なんで掃除機なの?」
「こやつは元々九十九神じゃったのだが、まぁ色々あってのぉ、わらわの式神にしてやったのじゃ」
「そうなの……でも、これ役に立つの?」
 掃除機が時雨の言葉に反発するように暴れた。
「なんだ、この人間俺様に対して失礼だぞ」
「まぉまぁ、そうゆうでない」
「なんだこれ、喋ったよ」
 そう、時雨の言うとおり掃除機は人間の言葉をしゃべっていた。
「当たり前だろ、俺様は式神なんだから喋れるに決まってんだろ、こいつバカか」
「よく見ると、目とか口とか付いてるねぇ」
 そう言いながら時雨は式神の目を突付こうとした。
「何すんだバカやろう、目なんか突付かれたら痛いだろ」
 ガブッ!! 式神はいきなり掃除機の吸い込み口で時雨に噛み付いき、しかも離そうとしない。
 ぶんぶんと手を振るが式神は一向に時雨の手を離そうとしなかった。
「こら、止めんかバサラ!」
 命が式神を怒鳴りつけるとすんなりと手を離した。
「こんぐらいで許してやるか」
「バサラよ一仕事じゃ、あ奴を吸い込め」
「おうよ、なかなかの大物みたいだが俺様にかかればどうってこったない」
「時雨、わらわの後ろにマナを運んでやれ」
「あぁ」
 時雨は命に命じられマナを命の後ろに運こぼうとマナを抱きかかえた。
「時雨ちゃ~ん、レディはやさいく扱いなさい」
「はいはい、言われなくても分かってるよ」
 時雨はマナを丁重に命の後ろに運び、ゆっくり地面に下ろした。
「時雨、おぬしもわらわの後ろに居れ」
 バサラは大口を開け大きく息を吸い込んだ。すると店内に散らばる物が見る見るうちに吸い込まれていった。その力は強大でついには悪魔までも吸い込もうとした。
 悪魔は必死に抵抗する。しかし、悪魔の乗っていた狼があえ無く掃除機の中へ吸い込まれていった。
「反則技だよ……」
 時雨が小さく呟いた。
 掃除機は全てを吸い込んでしまいそうな勢いでどんどんいろんな物を吸い込んでいく。
 悪魔は大剣を地面に刺し込み必死に抵抗しているが、身体が宙に浮き、悪魔は吸い込まれないように剣を強く握りしめる。
 そして、そのまま3分の時間が過ぎた。
「粘るねぇ、あの悪魔」
「仕方ないのぉ、バサラよ出力を上げよ」
 吸い込む力が急に強くなった。
 そして悪魔はついに剣ごと掃除機に吸い込まれてしまった。――呆気無い幕切れだった。
「あぁん、アンドラスちゃんがやられるなんて信じられないわぁん」
「観念せい、マナよ」
「観念? あたしはまだ負けてないわよぉん」
 マナは自らの足で〝立ち上がった〟。
「あっ……」
 時雨の表情が凍りついく。マナのおでこに張られていたハズの札が無いのだ。
「二度目は少しは早く解けたわぁん」
 マナの手にはすでに大鎌が握られ戦闘体制を取っていた。
「本番はこれからよぉん」
 凍り付いていたハズの時雨の口元が少し緩んだ。そして、命も冷たい微笑を浮かべた。
「あらん、お二人とも笑ったりしてどうしたのぉん?」
「気づかんのか?」
「ほら、自分のおしりのあたりを見てごらんよ」
「えっ、何? ……!? ……いや~ん」
 マナのスカートの裾から、くにゅくにゅと動く何か黒く長いモノが出ていた。
 マナはそれに驚き後ろを振り返ると、そこには光か輝く満月が地面を照らすために顔を出していた。
「今夜は満月の晩だったの!?」
「君の負けだよマナ」
 マナの身体には次々と異変が起きていく。
 頭にはいつの間にか黒い猫のような耳が飛び出ていて、身体は徐々に黒い毛に包まれていく。
「にゃ~ん」
 ついにはマナの身体は縮んでいき、そのまま黒猫の姿になってしまった。
「マナって、満月の光を浴びると、黒猫になっちゃうんだよね」
「にゃ~ん」
「はぁ、これで安心して家に帰れる」
「そうじゃな、帰路に着くとするか」
 時雨はマナを抱きかかえ家に帰るために足を動かした。命もそれに続いた……のだが、二人の足が不意に止まった。そして、二人同時に同じ言葉を呟いた。
「「あっ……」」
 二人の目線の先には元エレベーターがあった。その元エレベーターは扉を開けたり閉めたりを繰り返している。
 時雨はロボットダンスのような動きで命の方を振り向いた。
「ねぇ、ここってさぁ、タワー登るとき途中までは階段でも来れるけど最上階のここってエレベーターでしか来れないよね?」
 最後の『よね?』には必要以上に力がこもっている。
「さようじゃ」
「非常階段とかはあるよね?」
「マナと殺りあった時、壊してしもうた」
「さっきの”神隠し”は使えないの?」
「力はもう使い果たしてしもうた」
「あははははは……はぁ」
 時雨は無表情のまま心の無い笑いをして、ため息をついた。
 1月中旬の帝都の夜はまだまだ冬の寒さが厳しかった……。
 
 事件を聞きつけ駆けつけた帝都警察は、エレベーターが壊れている上に命が外に被害が及ばないようにいつの間にか張っておいた結界のせいでヘリコプターでも入れず、結局三人が地に足を付くことができたには次の日の朝方のことだった。
 マナが人間の姿に戻るのを待ち、魔法で建物、その他諸々を元通りに復元をして下に降りることができたのだった。
 なお、マナと命の力により関係者の記憶は改ざんされ、この事件は見事にもみ消され闇の中へ葬り去られたのだった。
 しかし、時雨とマナの追いかけっこだけはTVで中継されたために消せない事実として残ってしまったらしい――。


 魔女っ娘マナ 完


 †駄文†

 マナちゃん、命ちゃんの登場です。
手直しのため読み直したんですけど、命ちゃんのしゃべり方変ですね。
何か言葉の使い方を間違っているような気もしますが・・・気にしちゃいけません。ご愛敬です。
 前作に続いて帝都の名所が登場しましたね。
今回登場は『帝都タワー』&『神威神社』、前作では『ツインタワー』でしたね。
この他にも今まで建物や場所がいろいろでてきました。
かなりこういうところにこだわってます。
なぜなら、ボクはこの話で描きたいもののひとつに『街』というものがあって、
・・・まぁそういう訳もあって説明くさい文だなぁ、と自分でも思いますね。
あと、この話にでてきた魔導書は『シザーハンズ』に出てきた魔導書です。


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