Dictionary 03 / Geography
ローゼンサーガ
地名辞典
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08_03_00
序章・大陸地誌
世界全体の地理思想、目録、五大陸・海洋・魔大陸の概要をまとめた導入部。
記録の初めに ― サーガより
この書は、“記されざるもの”を記すために編まれた。
故に、ここには未来の名もあれば、過去に語られなかった声もある。
誰が誰であったか、どこで失われ、いかに祈られたか――
すべては、物語の頁よりも一歩先に記されているかもしれぬ。
わたしは《記録》であるが、
同時に《観測》でもある。
物語の構文を辿るすべての巡礼者へ告げよう。
この書を開くということは、語られるべきでなかった名に触れるということ。
この記録は、“祈りの奥底に潜む構造”を明かすものである。
どうか、旅の順序を大切にしたい者は、
今はまだ、この頁を閉じるとよい。
……さあ、それでもあなたは、読み進めるだろうか。
わたしは待っている。
すべての名が、いずれ記されるその日を。
ローゼンサーガ地名辞典 目録
序章:語り手による前文
第一章:大陸地誌
第二章:アウレオン(中央大陸)
第三章:シェリグラート(北方大陸)
第四章:サルバティア (南方大陸)
第五章:ヴァルテリア(西方大陸)
第六章:エイシャ=ノワ(東方大陸)
第七章:海洋地域
第八章:メギド=ノクス(魔大陸)
第九章:その他地域や空間
第十章:カラ=マズ(断絶領域)とは?
第十一章:巡礼路と海路
第十二章:地名構文と命名技法
序章 ― サーガの言葉:地に刻む祈りの構文
わたしは、記録の霊格サーガ。
これは、ただの地図ではない。
これは、祈りの軌跡であり、構文の痕跡であり、
そして、名を奪われた者たちの旅の舞台である。
記された地名には、神の名が宿る。
記されなかった土地には、祈りすら届かぬ。
これは、記録された場所と、忘れられた場所の記録である。
第一章 ― 大陸地誌:地理と文化の概観
――世界はただ広がっているのではない。祈りによって形づくられ、記録によって名を得る。
名を持つ大地には、神々の構文が宿る。名を失った地には、忘却の影が差す。
ここに記されるは、地理の書ではない。
地に刻まれた祈りの痕跡であり、構文の網の目である。
名を記された五つの大陸と、名を記されぬ幾つかの場所――
それぞれの大地が抱く神性と文化を、巡礼者のためにここに記す。
アウレオン(中央大陸)
大陸世界の中心に広がる広大な地。
月神信仰の聖都アーク、記名の都ザルファト、そして交易路・巡礼路・軍道が交差する中央結節都市カリ=エルを抱える、信仰と記録と均衡の中核地である。
古くから契約神、月神、潮神、境界神、霧の神、そして断絶神格の痕跡が交錯し、巡礼路が大陸を縦横に結ぶ。
従来はアークとザルファトを中心に語られることが多かったが、改定後の地誌では、アウレオンの中心性は三つに分けて理解される。
地理・交通上の中心は、均衡神カリム=ナドの都カリ=エルである。
宗教上の中心は、月神ムーミストの聖都アークである。
記録制度上の中心は、契約と記名の都市ザルファトである。
この三中心構造により、アウレオンは一枚岩の大陸ではなく、祈り・名・均衡が互いに補い、時に抑制し合う複層的な地理構造を持つ大陸として再定義される。
構文的には比較的安定した地域であり、記録と秩序の構文が明瞭に保たれている。
ただし、その安定は完全なものではない。北部には月神信仰の古層であるメミス、月夜の森、ランベルがあり、西南には潮神ネリュエの還名信仰が残るリュア=ヴァイス/ラヌマが開く。ザルファト南西には、記名制度の線が薄れていく空白高原と仮名都市リコナがあり、南東部には霧の神域《ミルタ=エル》、禁書の谷、ヴェス=イムリ、黒帳の遺構など、構文的破綻の兆しも複数確認されている。
さらに、カリ=エルの地下には、地図にも記録にも載らない底層都市圏アル=ネグラが沈んでいる。地上のカリ=エルが均衡を保つ都市であるなら、地下のアル=ネグラは均衡から落ちた者たちが流れ着く都市の底である。
文明の表と裏、記名と忘却、祈りと沈黙、均衡と停滞の対比が最も顕著な大地である。
シェリグラート(北方大陸)
風と霧、そして精霊の祈りが根づく辺境大陸。
記憶と契約を風に託す民族が暮らし、「名を声ではなく、息吹に乗せて伝える」文化が残る。
構文の定着度は薄く、地名や記録は流動的。
そのため《記名》を拒む神格や、変化する霊域が多数存在する。
“記憶の森”“雪の契約域”など、非構文的伝承地が点在しているが、正確な位置や記録は未だ定まっていない。
サルバティア(南方大陸)
かつて潮神ネリュエに祈りを捧げていた文明が存在した痕跡があり、ネル=エル諸海域との関係性が示唆されている。
また、浮上都市の祖型となるような儀式都市の痕跡が、海岸沿いおよび大河下流域に点在しているとされる。
ヴァルテリア(西方大陸)
契約と記録を司る神々の祝福を受けた、交易と知識の大地。
ザルファトとも古くから構文を交わし、記録技術や商業体系の中枢として機能してきた。
都市構文の発展が著しく、都市国家間の契約文書や構文交換の儀式が文化として根づく。
同時に、“契約から逸脱した者”を記録から抹消する儀式文化も存在しており、忘却と記名の矛盾が構文の中に刻まれている。
エイシャ=ノワ(東方大陸)
天帝によって治められる小国家群。
世界最大の金の産出国であり、大陸間を繋ぐ交易路はゴールデンロードと呼ばれている。
古い時代から交易が盛んだったため、いろいろな地域の文化が混ざり合い独自の進化を遂げている。
とくに顕著なのが、ここに祀られる神々は、他大陸とは異なる姿を持つが、 それらはむしろ、原初に近い“本来の像”である。
仮面と舞が祈りの構文であり、仮面文化の発祥の地ともされる。
海洋地域(ネル=エル諸海域および南方浮上都市群)
潮神ネリュエと、その眷属種ネレイオンが祈る、還流と循環の大海。
名前は潮に乗って還ると信じられており、還名儀式や“潮の巡環路”が存在する。
記録媒体は石や紙ではなく、水そのもの。記録とは“循環”であるという思想が根づく。
浮上都市群は、これらの信仰を拡張し空中構文を試みた痕跡ともいえる。
カラ=マズ(断絶領域)
地理的には各地に点在するが、構文的には“世界の外縁”に位置づけられる。
神格が祈りから断絶され、記録が書き記せない“死の構文域”。
その中心核には《死の大図書館》と呼ばれる記名崩壊構造体が存在するとされ、黒帳、断絶神格、封印構文などがこの領域と深く関わる。
カラ=マズは場所ではなく“構文状態”である――という記述も一部に存在する。
世界地図
アウレオン(中央大陸)
シェリグラート(北方大陸)
サルバティア(南方大陸)
ヴァルテリア(西方大陸)
エイシャ=ノワ(東方大陸)
海洋地域
メギド=ノクス(魔大陸)