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モンスター「夜明け」 |
作業は一晩中続き、嵐は過ぎ去っていた。 雨も去り、強風も去り、変わりに恐怖を孕んだ静寂が訪れた。 手術台に横たわる変わり果てた彼女の姿。 継ぎ接ぎだらけの醜い躯から、チューブやプラグが伸びている。 こんな姿にさせることを彼女が望んだだろうか? 魔導師は憑かれていた。 そして、疲れていた。 夜が明ける。 東の地平線が黄金色に輝き、巨大な雲が不気味に輝く。 魔術師の夜明け。 禁忌の夜明け。 ブレーカーに魔導師の手が伸びた。 あとはこのブレーカーを下ろせばいい。 今まで世話しなく身体を動かし、疲れなど忘れていた魔導師に迷いが生じた。 ブレーカーを固く握ったまま、魔導師は動きを止めていた。 死は全ての者に平等に訪れる。 だが、彼女の死は早すぎたのではないか? 再び外で強風が吹きはじめた。 窓が風によって強く叩かれ、雨も降りはじめた。 魔導師の手は止まったままだ。 空に悪魔の怒りが奔り、雷鳴よりも早く、稲妻が魔導師の自宅に堕ちた。 部屋中が眩むほどに輝き、実験器具と稲妻が共鳴し、轟音が頭を割る。 このとき、魔導師は電撃に弾かれ、ブレーカーから手を離してしまっていた。 手術台の上で横たわる異形の躯の指先が、ぴくりと動いたのを魔導師は見てしまった。 歓喜した。 しかし、すぐに恐怖した。 目を開け、黄泉帰った彼女が上体を起こし、魔導師を見つめた。 死んだ魚のような濁った瞳。 縫い合わされた顔は微笑むことなく、死んだままだった。 彼女は死んでいる。 脳も心臓にも命が吹き込まれた筈だ。それにも関わらず彼女が死んだままなのは、魂が死んでいるからだろう。 そこにいるのは彼女じゃない。 ――怪物だ。 醜く恐ろしい怪物を創ってしまった。 魔導師は床に尻を付いて項垂れ、闇の中に意識を落とした。 思い出されるのは、彼女との幸せな思い出。 花咲く日々。 |
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