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シザーハンズ |
夜空に浮かぶ満月は青白い光で大地を照らし、星々はいつもより騒がしく煌いている。 「はぁ、今夜は満月か・・・ついてないよね、この頃・・・」 間延びした声の持ち主は少し眠たそうな表情で空を見上げていた。 「ついていないのはいつもの事だろ、それはいいとしてなぜ私が君に呼ばれなければならんのだ?」 間延びした声の持ち主は空を眺めながら受け答えをした。 「あれぇ言ってなかったっけ?」 それを聞いた長髪の男の顔は不快の表情を浮かべた。 満月の晩は妖魔たちの活動が活発になる時間帯の一つだ。満月の晩が来ると、この街の商店のシャッターは閉められ、人々は足早に帰宅し家の戸締りを厳重にするのがこの街で生きていくための掟であった。満月の晩に外出するなど常人のする事ではない、メインロードはまだしも裏路地に一歩でも踏み込んでしまえば、そこは魑魅魍魎の巣窟となっている。 「私を呼び出したからにはそれなりの事があるのだろうな?」 「切り裂き魔のニュースは知ってる?」 「帝都新聞で読んだがそれが私の呼ばれた理由と何の関係がある?」 先月から今月にかけて17件の殺人事件のニュースが帝都の街をにぎわした、目撃証言や使われた凶器の刃型が一致した事などから事件を起こした人物は、ほぼ同一人物とされている。 狙われた被害者は皆長い黒髪の女性であった。被害者たちの手足には何かで縛った後があり、衣服は脱がされ、身体は刃物で滅多刺しにされた状態で路上に放置されていた。報道各社はこの事件を大々的に取り上げ特集番組も組まれるほどであった。 「えーと、その切り裂き魔なんだけど、証拠はいっぱい残ってるのに足取りがまったく掴めないらしくってさぁ、帝都警察本部長に直々に仕事の依頼を頼まれちゃって」 「仕事なら一人ですればよかろう、私が呼ばれる理由はあるまい」 空を眺めていた若者が長髪の男の方へと顔を向けた。月明かりに照らされた若者の顔は以前眠そうな表情を見せていたが、その顔は中性的な美しさに満ち溢れており、彼が道を歩けば男女問わず誰もが振り返り顔を赤らめうっとりとしてしまうほどだ、天使がこの世界にいるとしたら彼にちがいない。 「じつはさぁ、その切り裂き魔は不思議な幻術を使うんだけど、僕には全く太刀打ちできずに困っちゃってね、紅葉[クレハ]にならなんとかできるかなぁとか思ってさぁ」 紅葉と呼ばれた男は顔をしかめながらこう言った。 「太刀打ち出来ずに困っただと・・・どういうことだ、すでにその切り裂き魔とやらに会ったのか?」 「あぁ、もう2回も会っちゃったよ、ほら、この傷見てよザックリいっちゃってるだろ」 そう言って若者は腕の傷を見せた。傷は鋭利な刃物で付けられたような15センチに達するほどの重症であったが、その傷の持ち主はのほほんとした表情でまるで他人事のようでだった。 「2回も会っていながら取り逃がし、そのうえ傷を負わされるなど”帝都の天使”も地に堕ちたものだな」 「なんとでも言うがいいさ、でもその代わり仕事を手伝ってもらうよ」 「君の仕事の手伝いをして私に何の見返りがある?」 「僕が手傷を負わされたほどの幻術使いだよ、いい研究材料になると思うけどなぁ、それじゃあダメ?」 ダメ?といった若者の表情は子犬のような愛くるしさをしており、その瞳に見つめられた者は誰もが彼の為だったら何でもしてあげたくなる、そんな表情だった。 「駄目だ、私は研究が忙しい、それにだ、今日その切り裂き魔が現れるという確証はないだろう」 「それがねぇ、あるんだよね」 「言ってみたまえ」 天使の顔は勝ち誇った表情をしていたがそれを見た紅葉は少し不服そうだった。 「切り裂き魔が現れるのは決まって月・水・金の午前0時から4時の間なんだよね」 「そこまで分かっていて、帝都警察も君も切り裂き魔を捕らえる事ができんとは、ワイドショーのいいネタになるな」 「しかたないだろ、ほんとに手強い相手だったんだから」 今度は紅葉が勝ち誇ったような表情をし、天使は不服そうな表情をした。 「私は研究の続きがあるので帰らせてもらうぞ」 紅葉は白衣をなびかせながら足早にその場を立ち去ろうとしたがそれを天使が引き止めた。 「ま、待ってよ、幻術の研究も”プロフェッサー”の大事な仕事だろ」 「幻術ならば、お前の所に凄腕の魔導師がいるだろう」 「彼女なら、ヨーロッパで魔導書が発見されたとかで休暇とって出かけて行っちゃったよ」 「魔導書か・・・私もそちらの方が興味をそそられる、私も研究のために出向いてみるか」 プロフェッサーの頭の中にはもう切り裂き魔の事など微塵もなかった。今彼の頭にあるのは魔導書の事だけだ。 「わかった、取り引きをしよう」 「取り引き?」 「その魔導書を君にやる代わりに仕事手伝ってよ」 「よかろう、しかし、その魔導書はどうやって手に入れるつもりだ?」 「彼女の事だから、その魔導書をパクってくると思うし彼女1回読んだらすぐに覚えちゃうから、そしたら、君にやるよ」 「契約成立だ、それでは狩りを始めよう」 時計の針は深夜12時を回っていた。夜の闇は深さを増し、街を照らす光は街灯と月光のみであった。 「切り裂き魔の現れる場所の見当はついているのだろうな」 「僕の半径1Kmに奴が入ればダウジングで分かると思うよ」 天使の右手にはひも状の物が握られており、その先端にはひし形の宝石らしき物がぶら下がっていた。 「奴が僕の半径1Kmに入ると、こんな風に魔石がその方向を示してくれるんだけど・・・あっ反応してる・・・」 「・・・気づくのが遅い」 紅葉が気づいたときには天使は月光に照らされたビル街を魔鳥のごとく宙を舞っていた。 「紅葉、遅いよ、早くしないと逃げられちゃうよ」 この日、2羽の魔鳥が帝都の夜空を舞った。 今宵の帝都は静けさに満ち溢れていた。 月光に照らされたビル街はまるで氷でできた彫刻のようであったし、風もなく、獣の声すら聞えない、まるで廃墟と化した街のようであった。 ひもの先に付けられた魔石が獲物の方向を強く示している。 「反応が強くなった・・・もう近いよ」 「あと、どのくらいだ?」 「・・・目の前」 「・・・!?」 天使の言葉に紅葉は少し度肝を抜かれた感じだった。 二人の魔鳥の前方には紫色の髪の若い男性が何かを物色するように辺りを見回しながら歩いていた。 「あれが獲物か?」 「あぁ、そうだよ、でもやっぱり、今夜は獲物がなかなか見つからないらしいね、ほら、あんなに辺りを見回して」 「満月の晩に好き好んで出かける奴はいないだろう」 「知能低いのかな」 とそんな会話を二人がしていると、切り裂き魔は二人に気づいたらしく全速力で突進してきた。 切り裂き魔の両手には鋭い爪のような武器が装着されていた。 「シザーハンズか、肉弾戦は私より時雨、君の方が向いているだろ」 「OK」 時雨はそう言うとコートのポケットから何かを取り出し、それについているボタンらしきものを押した、すると時雨に握られたそれの先端から閃光が飛び出した、ビームサーベルと呼ばれるようなものなのだろうか。 シザーマンは時雨めがけて鋭い爪を振り下ろしてきた。 時雨はその攻撃を素早くかわすとジザーマンの頭上から地面にビームサーベルを振り下ろした。 「捕らえた!」 時雨の手にはたしかに手ごたえがあった・・・しかし、そのとき、時雨に紅葉から罵声が飛ばされた。 「どこを斬っている!獲物はこっちだ」 「えっ!?」 時雨はシザーマンの幻術に惑わせれたのだ。 時雨が自分の置かれた状況について把握した時にはすでにシザーマンは紅葉にその刃を向けていた。 「肉弾戦は私の専門外なのだが・・・」 そういいながら紅葉はどこからともなく、二つのフラスコを取り出し、蓋をしてあるコルクを抜くと科学の実験を始めた。 「これを実践で使うのは初めてなのでいいレポートが書ける事を期待する」 そう言い終わると紅葉はフラスコの中にある不思議な液体を一つに混ぜ合わせた、すると、フラスコの中から大量の煙が発生し辺りを包み込んだ。 「ねぇ紅葉、仲間の僕まで見えないよー」 「大丈夫だ君が見えんという事はシザーマンにも見えておらん」 「ダメじゃん」 「もうすぐ、霧は晴れる、お楽しみはその時だ」 「はぁ・・・?」 辺りをたちこめていた霧が徐々に晴れてきた、すると、そこには異様な光景が広がっていた。 「何これ!」 と大声を上げたのは時雨だった、彼が大声を上げるのは無理も無い、なぜなら・・・。 「実験は成功だな、私が調合したこの薬は人間に一種の幻覚作用を引き起こす、君に難しい話をしても分からんだろう、まぁ薬の効能は見ての通りだ」 「見ての通りって、紅葉がたくさん居るよ」 時雨の目には何人もの紅葉が映っていた、時雨に映る紅葉たちは個々に別々の動きをしていた。 シザーマンは次々に紅葉を斬りつけていく、しかし、傷も付かなければ、血も一滴もでない。 「後は君の仕事だ時雨、奴が私の幻覚を相手にしているうちに仕留めろ」 時雨はビームサーベルを構えると、シザーマンにその刃を向けた。 『ぎゃあぁぁぁぁ!!』 シザーマンは悲鳴を上げるとその場に倒れ込んだ。 「あっけなかったね・・・なんか」 「そんな、相手にてこずっていたのはどこの誰だ?」 「・・・・・・!?」 「どうした?」 「爪が勝手に動いてる」 「何!?」 二人の目線の先には不気味な動きをするシザーハンズがその鋭い爪を時雨に向けていた。 「こちらが本体のようだな」 シザーハンズは装着者の手を離れ時雨目掛けて飛んできた! 時雨は目にも止まらぬ速さでシザーハンズをビームサーベルで地面に叩きつけた。 と思った瞬間、またも紅葉から時雨に罵声が飛ばされた。 「どこを斬っている、獲物が逃げるぞ!」 「えっ!?」 時雨が気づいたときには敵はその場から姿を消していた。 この事件以降、シザーハンズが帝都の街に姿を現すことはなくなった。 都民の関心も次第に薄れ、報道各社も今ではこの事件を取り上げる事はなくなった。 今の都民の関心の的は帝都の地下で発見された、古代遺跡に集中している。 この遺跡が都民の暮らしをより良いものにしてくれると科学者達は口々に言っている。 現に遺跡ですでに多くのロストテクノロジーが発見されている・・・。 「ロストテクノロジーねぇ」 時雨はTVを見ながらおせんべいをツマミに熱い緑茶を飲んでいた。 するとそこに一人の訪問者が訪れた。 コンコン、戸を叩くと同時に男の声がした。 「入るぞ」 「どうぞ」 時雨が返事をすると、紅葉が部屋の中へと入ってきた。 「報酬を受け取りに来た」 「報酬?」 「魔導書だ」 「あぁ魔導書ねぇ、でもさぁ、逃げられちゃったから」 「逃げれたからなんだというのだ、私は君に仕事を手伝えと言われただけで、獲物に逃げられようが私の関知するところではない」 「はいはいわかったよ、苦労して手に入れたんだから大事にしてよ」 そう言うと時雨は紅葉に向かって魔導書を投げた。 紅葉は魔導書をキャッチすると、足早に部屋を出て行った。 紅葉が部屋を出て行ったのを確認すると時雨はため息をつきお茶をすすりながら一言。 「がめついよ紅葉」 「何か言ったか?」 時雨の目の前には部屋を出て行ったはずの紅葉がいて、それに気づいた時雨は思わずお茶を少し噴出してしまった。 「な、何でまだいるんだよ」 「言い忘れていた事がある」 「なにさ」 時雨は、噴出したお茶をティッシュで吹きながら、紅葉を見上げた。 「帝都の地下で発見された遺跡の事は知っているな?」 「あぁ、ニュースで毎日やってるからね」 「時間があったら行ってみろ」 そう言うと紅葉は部屋の外へと出て行っていまった。 「はぁ、何だよ、どういうこと?」 時雨はこたつに潜るとそのまま目をゆっくりと閉じた。 「まぁいいかぁ」 そう呟くと同時に時雨はやさしい寝息をたてていた。 部屋の窓からはやさしい光が差し込んでいて、外からは子供たちの遊ぶ声が遠くから微かに聞えていた。 シザーハンズ(完) 【作者のコメンツ】 文章の作法すらできてませんね。 酷いですね。 いかにも何も知らずに書きましたって感じですよね。 「」の前に空白入れてる(ひとマス空けてる)のも仕様ね。 自分的段落で空白入れてました。 半角だったり全角だったりも、そこまで気が回ってなかった証拠です。 小説とかもあんまり読んだことがなかったの丸わかりですね。 このときに比べると、今の文章はだいぶ改善されていると思います。 なのに、このちょっとあとに書いた「大魔王ハルカ」がランクの上位に居座ってる罠。 文章力は成長しても「内容」は成長してないのでしょうか。 マジショック!!(マジカルショックの略、嘘w) 今後も精進したいと思います。 秋月あきらでした。 |
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