第1章006_03
【渉】「渡したい物があるから、とりあえず受け取れよ」
【明日香】「…………」
 桜井は無言のまま俺を見つめている。
 俺はポケットの中から小包を出して桜井に手渡した。
【明日香】「なにこれ?」
【渉】「本当は俺の力で探したかったんだけど、刹那の力を借りて探してもらった」
 自分バカ正直だな。
 ここはカッコよく俺が探したとか言えばいいのに。
【明日香】「……これって?」
 小包を開けて驚いた顔をする桜井の手のひらの上で、ハートペンダントが美しく輝いていた。
【渉】「桜井が歩道橋の上から投げたやつ」
【明日香】「……探してたんだ」
【渉】「は?」
【明日香】「あのあと歩道橋の下を探したんだけど見つからなかったの……よかった本当に……」
【渉】「まあ、感謝するなら俺じゃなくって刹那にだけどな」
 俺が笑って見せると、桜井も笑った。
【明日香】「渉のやつ出して、持ってないとか言ったら殺すから」
【渉】「はぁ?」
【明日香】「早く渉のペンダント出して、早くしないとあたしの気が変わっちゃうぞ」
【渉】「ちょっと待て、すぐ出すから」
 俺はよくわからないまま、桜井の言うとおり自分のペンダントを首から外して桜井に渡した。
【明日香】「もう絶対に離れないから」
 そう言って桜井はペンダントについているハート型の知恵の輪をひとつにした。
【明日香】「1つにしたら奇跡が起こるんじゃなかった? ……ウソばっかり」
 その時、俺に奇跡が起きた。
 爪先立ちする桜井の唇が俺の頬に少し触れた。
 ついに俺はやったぞ、とにかくやった!!
 やっと桜井の気持ちを実感できた。
 ……ぎゅるるるるるぅ〜。
【渉】「……すまん腹が鳴った」
【明日香】「はぁ、ホント渉ってサイテー」
【渉】「だってさ、緊張が解れたらなんかさ」
【明日香】「こんなヤツを好きになったあたしがバカみたい」
【渉】「今俺のこと好きって言ったよな!?」
【明日香】「はぁ? 耳悪くなったんじゃないの?」
【渉】「っまいっか。そんなことより飯食いに行こうぜ」
【明日香】「渉のおごりね」
【渉】「また俺かよ」
【明日香】「おごってくれてら、いいことしたげる」
【渉】「マジで!?」
【明日香】「……やっぱバカ」
 クスクスと笑う桜井につられて俺も笑う。
 そして、いつの間にか手を繋ぎ、屋上を後にしていた……。


第1部完結

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