刹那編003
【渉】「そんじゃ俺はアーケード街を探してみるわ」
【彰人】「俺は駅前を探してくる」
【渉】「じゃあな」
【彰人】「ああ」
 俺は彰人を分かれてアーケード街に向かうことにした。


■■■b004 アーケード街(背景CG)
●●●SE055 アーケード街(ざわめき)〈リピート〉
 ふぅ、アーケード街に来たぞ。
 アーケード街はそれなりに人も多いし、店も結構あるから潜伏場所としてはイケてると思う。となると、桜井たちがここにいる可能性は大だな。
 ――ん?
 あそこにいるのって雪乃じゃないか?
 しかも、なんか数人の男に取り囲まれてるし。
 よし、行ってみよう。
■■■A020 雪乃・制服(表示)
【雪乃】「もうあなた方に用はありませんの。そこを退いてくださる?」
 淡々とした口調で言う雪乃の前に男が三人立ちはだかった。
■■■A110・A100・A120 不良BAC(表示)〈Aを真ん中に表示〉
【不良A】「だから、俺たちがその二人組みのところに連れてってやるよ」
【雪乃】「顔に嘘って書いてあるわ」
■■■A100・A110・A120 不良ABC(表示)〈Bを真ん中に表示〉
【不良B】「嘘じゃねーって、俺たちその二人の居場所知ってんぜ」
■■■A100・A120・A110 不良ACB(表示)〈Cを真ん中に表示〉
【不良C】「知ってる知ってる」
■■■A110・A100・A120 不良BAC(表示)〈Aを真ん中に表示〉
【渉】「おい雪乃、なにやってんだよ?」
【雪乃】「あら、麻生君も明日香たちを探しに来たの?」
【渉】「おぅ」
【雪乃】「明日香へのポイント稼ぎかしら、うふふ」
【渉】「ち、ちげーよ!」
【雪乃】「ジョーダンよ」
 雪乃は顎に手を当てて、静かに微笑んだ。この表情を見てると、なんだか魂が吸い込まれそうになる。
 いつも物腰が静かな雪乃に俺は魔力めいた雰囲気を感じている。
 いつよーこいつとは幼馴染なんだけど、なんか得体の知れないモノを感じるんだよな。
【不良A】「おいテメェら、俺たちのこと無視して話してんじゃねぇよ」
【雪乃】「あら、またあなた方いらっしゃったの。もう用がないって、聞こえなかったのかしら?」
 静かに微笑みながら、雪乃は深い黒瞳で不良たちを見据えた。
 これって微妙に喧嘩売ってないか?
 微妙つーか、普通に喧嘩売ってる?
 雪乃に見つめられた不良たちは一歩後退った。俺も雪乃から少し離れたい気分だ。なんだか知らないが、雪乃から底知れぬ怖さを感じる。
 怖い、俺は正直、雪乃が怖い。
 確かに普段の雪乃は怒鳴ることもないし、比較的ひとに優しいし、物静かな才女って感じだ。でも、俺にはなんか厳しかったりするけど。
 まあ、でも、とにかく、普段の雪乃からは『怖い』なんてイメージ思いもしない。
 でも、俺は雪乃が怖い。
【不良A】「お、俺たちに喧嘩売ってんのか?」
【雪乃】「そう思われてしまったのなら謝るわ。ごめんなさい」
【不良A】「ごめんじゃねぇだろ、他のことで償ってもらおうじゃねぇか」
 と口では言ってるが、不良たちは雪乃に近づこうともしない。
■■■A100・A110・A120 不良ABC(表示)〈Bを真ん中に表示〉
【不良B】「俺たちと、俺たちと、その、とにかく俺たちに付き合えや」
■■■A100・A120・A110 不良ACB(表示)〈Cを真ん中に表示〉
【不良C】「そうだそうだ」
■■■A110・A100・A120 不良BAC(表示)〈Aを真ん中に表示〉
【雪乃】「あら、困ったわ。それってデートのお誘いかしら。麻生君、どうしたらいいと思う?」
【渉】「デートの誘いのわけねぇだろ!」
【雪乃】「そう、それではお断りするわ」
【不良A】「そうは行かねぇ。おい、一緒に行こうぜ!」
 ゴツゴツした不良Aの手が雪乃の腕を強く掴んだ。
【雪乃】「離してくださらない?」
 深みを湛えた黒瞳が不良Aを見据えた。
 次の瞬間、不良Aは雪乃から手を離していた。別に睨まれたわけでもなく、ただ静かに見つめられただけなのに。
 熱いわけでもないのに、不良Aは顔全体に汗をかき、蒼ざめた表情で叫んだ。
【不良A】「やれ、この女をやっちまえ!」
【雪乃】「あら……」
 溜息を吐いた雪乃に襲い掛かる者はいなかった。
 不良BとCは顔を見合わせて動こうとしない。
【不良B】「兄貴、本当にやるんですかい?」
【不良A】「やれったら、やれ!」
【不良B】「だって、相手は女ですぜ」
【不良A】「かまうもんか、その女をやんねぇんなら、俺がお前らをぶっ飛ばすぞ!!」
【不良C】「ひぇ〜〜〜っ」
 兄貴に逆らえない子分二人は、しぶしぶ雪乃の前に立ちはだかった。
【不良B】「兄貴の命令だ、悪く思うなよ」
【不良C】「思うなよ」
【雪乃】「あら、女の子に暴力を振るうなんて、最低ね。ね、麻生君?」
▲▲▲BGM002(フェードアウト)
【渉】「あ、ああ」
 このとき俺は、すでに雪乃から5メートルは離れていた。
 普通、男だったら雪乃を助けるべきだろう。男として女を見捨てるのはよくない。でも、身体が勝手に雪乃から離れちまったんだからしょうがない。
 なんだか気温が一気に下がったような気がする。背筋がなんだかゾクゾクするんだけど。
 この異様な雰囲気を感じているのは俺だけではあるまい。
▲▲▲BGM001(スタート)
■■■A100 不良A(消去)
■■■A120 不良C(消去)
■■■A110 不良B(表示)〈真ん中に表示〉
【不良B】「おりゃ!」
 意を決してついに不良Bは雪乃に殴りかかった。
●●●SE046 ボディブロー(腹に重いパンチ)
■■■A110 不良B(消去)
●●●SE013 倒れる(人が倒れる)
 と思った次の瞬間には不良Bは俺の視界から消えていた。
【渉】「ありえねえ」
 俺の視界から消えたと思った不良Bは、地面に横たわり白目をむいて口から大量の泡を吐いていた。
■■■A120 不良C(表示)
【不良C】「よくもよくも!!」
 太い巨体に似合わないスピードで、不良Cはイノシシのように雪乃に頭から突っ込んだ。猪突猛進ってこういうことを言うんだろうな。
●●●SE049 叩く(パンチ!)
【不良C】「うぐっ」
 胃の中身を吐き出しそうな声を出した不良Cは、腹を両手で押さえながら倒れることもなくその場で動かなくなった。
 そこにすかさず雪乃の手が伸びた。
【不良C】「ぐあっ!?」
 伸ばされた雪乃の手は、なんと相手の顔面を鷲掴みにしたのだ!
 そして、そのまま全身の力と体重を込めて、不良Cの後頭部をコンクリの地面に叩きつけるように押し倒した。
●●●SE026 重いものがぶつかる(ドン!)
■■■A120 不良C(消去)
 ヤバイぞ、明らかにヤバイ音したぞ。
 地面に膝を付く雪乃が残った不良Aを見た。
 その表情を見た不良Aは思わず凍りつく。
 そこにいたのは雪乃であって雪乃じゃなかった。普段の雪乃だったら、あんな狂気じみた表情なんてしない。今そこにいるのは血に飢えた悪魔だ。
 すっと立ち上がった雪乃が舌なめずりをして獲物を見定めた。
【雪乃】「オイ、テメェ!!」
 雪乃の怒鳴り声が辺りにに沈黙を呼んだ。
 今の雪乃の声を聞いただけで、俺の股間はスーっとしちまった。
 ヤバイぞ、これはすごいヤバイ状況だ。
 なにがヤバイって、あの不良が殺されるかも。
【雪乃】「子分二人がやられて、黙ってるわけネェよな?」
 不良Aが唾を呑み込んだのが俺のとこまで聞こえたような気がする。
■■■A100 不良A(表示)
【不良A】「あ、あったりめぇだ。よくもかわいい子分を甚振ってくれたな!!」
【雪乃】「だったら、来いよ。さっさとかかって来いや!!」
【不良A】「…………」
 可哀想に、あれだけ挑発されてんのに動けねぇでやんの。
 不良Aの脚はそこだけ局地地震に見舞われたみたいに激しく震えている。あんな状態じゃ喧嘩もできないな。
 だが、不良Aの目にある物が飛び込んできた。
 それは長くて硬くて手で持つにはちょうどいい物体。
 鉄パイプだ!!
 すごい偶然とも言うべきか、近くのお店で看板を設置するための鉄パイプやらが落ちていたのだ。不良A絶好のチャ〜ンス到来!!
 迷うことなく不良Aは鉄パイプを拾い上げ、そのまま雪乃に殴りかかった。
【不良A】「し、死ねーっ!!」
【雪乃】「アタイに喧嘩売ろうなんざ、100年早いよ!」
 踏み込んできた巨漢の懐に素早く入り込み、雪乃は腕を振り上げて不良Aの顎に裏拳をかました!
●●●SE013 叩く2(強く殴る)
【不良A】「あがっ!」
 あ〜あ、歯か顎の骨いったっぽいな。
【雪乃】「坊やはお寝んねの時間よ!」
 怯んだ相手から雪乃は鉄パイプを奪い取った!
■■■G200 雪乃(華月流――流し斬り。鉄パイプで技を決めた後)
●●●SE044 剣の煌き(シャキン!)
【雪乃】「華月流、流し斬り!」
●●●SE040 斬る(ズバッ!人が斬られる)
●●●SE013 人が倒れる(バタっ!)
 一瞬の出来事でなにがなんだかよくわからんかった……。
 ただ言えることは、病院送りだなってことだ。
▲▲▲BGM001(ストップ)
■■■b004 アーケード街(背景CG)
 3人を倒し終えた雪乃の身体からスッと力が抜け、倒れそうになった雪乃の身体を急いで俺が支えた。
【渉】「大丈夫か、雪乃?」
 目を閉じていた雪乃が目をぱりくりさせて俺のこと見つめた。
【雪乃】「あら、ええと、なにがあったのかしら?」
【渉】「えーと、その……」
 俺は辺りに転がる3人の男たちに目をやった。
 辺りで気を失っている男たちを見て、雪乃はハッとした表情をして俺を見つめた。
【雪乃】「あらやだ。私、もしかしてまたやっちゃった?」
 苦笑いを浮かべながら、雪乃は自分が握っていた鉄パイプは投げ捨てた。
●●●SE041 金属音1(カラン!鉄パイプを投げる)
 さっきの裏雪乃の記憶は雪乃本人はまったくないらしい。つまり二重人格とか、そんな感じなんだと思う。どっちが本物の雪乃なのかは考えたくないけど。
▲▲▲BGM002(スタート)
■■■A020 雪乃・制服(表示)
 俺の腕から雪乃は離れ、静かに微笑んだ。
【雪乃】「ありがとう、麻生君」
【渉】「いや、別に……」
 別に俺はなにもしてない。やったの全部雪乃だ。そう、俺は無罪潔白だ!
【渉】「早く逃げよう、この場にいるとヤバイ」
【雪乃】「そうね」
 警察とかが呼ばれる前に俺たちはさっさとこの場から逃げることにした。
■■■A020 雪乃・制服(消去)
 だが、逃げようとしている俺たちの前に男が立ちふさがった。
■■■A110 不良B(表示)
【不良B】「よくもさっきは、殺してやる!」
 クソッ、気失ってたんじゃねえのかよ。
 不良Bは手に鉄パイプを持って殴りかかってきた。
【渉】「危ない雪乃!」
●●●SE026 重いものがぶつかる(ドン!)
【雪乃】「麻生君!」
●●●SE027 人が倒れる(バタっ!)
■■■b004 アーケード街(背景CG)〈背景CGを消して画面を黒〉
●●●SE042 救急車(ピーポーピーポー!)
 救急車のサイレンが微かに聞こえた。
 そして、俺は決して覚めぬ眠りに落ちたのだった。


BAD END1


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