第7話_バーニング少女

《1》

 燃えさかる火炎。
 火の手は瞬く間に部屋中を包み込み、サイレンの音が遠くから聞こえる。
「ふぁ~、よく寝た」
 華艶は呑気にあくびなんかしながら、すでに原形を留めていないベッドの跡地で目を覚ました。
 そして……。
「ぎゃぁぁぁぁぁいったい何が起きたのーーーっ!?」
 炎に包まれすっぽんぽんの華艶が飛び起きた。
 生まれてからもっとも目覚めが良くて悪い朝になってしまった。目は冴えまくっているが、起きたら業火の中だなんて、最悪の1日のはじまりだ。
 〈不死鳥〉の華艶の通り名を持つ彼女の特技は炎を躰から放出させること。それに伴い、炎に対する耐久や治癒能力の高さという驚異の身体能力も備わっている。
 そのため、このくらいの炎の中にいてもどうってことはないのだが、問題は――。
「うわぁ~っ火事!? どうしよ火事じゃん! 消さなきゃ火事!」
 本人が平気でも周りがダメだった。
 辺りは火の海。オレンジ色の光と濃い煙が視界すらも奪う。もう華艶一人の力ではどうしようもなかった。
 慌てるばかりの華艶。
「消化器……って今さら遅いか。そうだ、賠償金払わなきゃ……イヤ……そんなの……いやぁン!」
 ブシャ、ブシャァァァァァァッ!!
 突然、華艶の股間から飛沫が噴き出した。
 まるで消化器の煙のように辺りは煙に包まれた。
 腰を低くしてかろうじて立っている華艶の姿。全身は痙攣し、顔は恍惚としていた。そう、華艶は炎の中で絶頂を迎えたのだ。
 股間から立ち昇った湯煙がすぐに消え、華艶の全身から紅蓮の炎が放出された。
 炎に抱かれながら、快感の波が押し寄せる。
「ダメ……イっちゃう……ああっ!」
 躰が激しく震え、再び華艶は絶頂を迎えた。
 脚の震えが治まらない。
「すごひ……こんなの……」
 下腹部がヒクヒクと痙攣する。
 子宮が奏でる震えは全身に伝わり、もう立っていられない。
 華艶は崩れるように床に倒れてしまった。
「早く……逃げ……ヒィッ!」
 床に皮膚が擦れただけで感じてしまう。
 膝を抱えるようにしながら華艶は断続的に全身を痙攣させた。
 華艶は胸を持ち上げるように下から揉んだ。
 軽く触れた乳首。
「あッン!」
 乳首が尖りすぎて乳輪にまでしわが寄ってしまっている。
「ダメ……乳首気持ちいい……」
 堪らず両方の乳首を摘んだ。
 指先でこね回される乳首。
「乳首で……こんな……はじめて……」
 小振りな2つの乳首に神経が集中される。
 自然と片方の手は股間へと伸ばされようとしていた。
 自分で触っているのに、指先が滑るお腹で感じてしまう。
 そして内腿も触れるだけで全身が身震いする。
「濡れてる……こんなに……」
 自分でも驚くほど濡れていた。
 ぐっしょりしたたる愛液は秘裂を伝わり、菊座まで穢し床との間で糸を引いている。
「こんなことしてないで……早く逃げなきゃ……」
 もう火の手を抑えることはできない。
 逃げなくてはいけないと頭ではわかっていても、抗えない魔力。
「どこ触っても気持ちいい……お尻も気持ちいいよ……」
 イキ過ぎて全身が性感帯になってしまった。
 炎が巻き起こす風に当てられるだけで気持ちいい。
「もっと……もっと炎を……」
 肌をくすぐる炎。
 業火が華艶を包み込む。
「ヒィィィィィィ!」
 炎こそが快感の源。
 華艶は人差し指と中指で器用に包皮を剥き肉芽を炎に晒した。
 限界まで硬く尖った肉芽。
 剥き出しにされた肉芽は感度を増し、さらに炎に焼かれる。
「気持ちひい……クリが……焼かれるの……気持ちひいっ!!」
 股間を突き出すように体が弓なりになる。
 狂うほどの快感。
 通常の人間では耐えきれない肉体の快楽を華艶は越えた。
 〈不死鳥〉の躰はまだまだ快楽に耐えられる。
 だが、精神が狂ってしまう。
 それでも求めてしまう。
「イク……また……ヒィィィィィっちゃうぅぅぅぅっ!」
 ブシュゥゥゥゥゥッ!
 尿道から噴き上がった潮は瞬時に煙と化す。
「ヒッ、ヒィッヒィッヒィッヒィッヒィッ!」
 イキながら華艶は肉芽を何度も激しく擦った。
 今そこにある快感を貪り喰う。
 脳が蕩け頭が真っ白になり、快感の波が次から次へと押し寄せる。
「ハァハァ……ヒィィィィィッ!」
 目が白黒して、だらしなく舌が出てしまう。
 のどが渇く。
 この渇きを潤したい。
 快楽は麻薬と同じ。
 より強い快楽を求め、欲望は留まることを知らない。
 華艶は肉芽を強く摘んだ。
 普段なら痛みを覚えるはずだった。
「気持ひぃ、気持ひひよぉ~~~っ」
 尖った肉芽を指で伸ばす。
「ひぃッ!」
 根本から掘り起こされる肉芽。
 普段は皮に包まれて外気にすらさらされていない肉芽が、今は伸ばされては元に戻され、さらにはひねられている。
 愛液どころか、汗すらも枯れてしまった。
 体中の水分が奪われていく。
 朦朧とする意識。
 気持ち良さに溺れ、生死の狭間を彷徨っていることすら自覚できない。
 躰もだんだんと自由が利かなくなってきた。
 自分で触らなくても快感は治まらない。
「子宮が熱ひ……もっと熱ひの欲ひぃよぉ!」
 まるで坩堝[ルツボ]で炎が渦巻いているようだ。
 華艶は躰を仰け反らせ、肉芽に触れようとするが、腕が重くて持ち上がらない。
 もっと欲しい。そう思えば思うほど炎はさらに燃えさかる。まさにそれは命の炎。
 華艶は命を削ってまで躰を動かし、膣口を両手の指で左右に広げた。
 炎が華艶の中に還っていく。
 真の意味で華艶は坩堝で炎を渦巻かせた。
「ヒャヒィィィィィィィ!!」
 炎の華が咲いた。
「ひゃあ……こんなの……はじめてーっ!」
 華艶は数えきれぬ絶頂に果てた。
 この朝のことを華艶は決して忘れないだろう。
 ――こうして華艶は18歳の誕生日の朝を迎えたのだった。

 真夏の日差し。
 店のドアを開けると鳴り響く涼しい鐘の音。
 冷房の効いた喫茶店のボックス席でカレーを喰う客を尻目に、華艶はカウンター席に腰掛けた。
 この店のマスター京吾は、ゲッソリとした華艶の顔を心配そうに見つめた。
「どうしたの華艶ちゃん、ダイエットでもしてるの?」
「うう……とりあえずビール」
「昼間はお酒出してないっているも言ってるでしょう」
 喫茶店モモンガは日中は寂れた店だが、夜になればBARへと早変わり。夜の住人や闇の住人たちの溜まり場になる。
 京吾はアイスコーヒーを差し出した。
「まあコーヒーでも飲んで気持ちを落ち着かせて」
「……うん」
 と小さく頷いた華艶の頬は少し赤らんでいた。
 華艶はなぜかモジモジしながら、内腿を擦り合わせる。
 そして、太股の付け根から垂れる愛液。それも尋常ではない量が、濡れると言うより漏れていた。
 常連の華艶の顔をいつも見てきた京吾は、急に深刻そうな顔をした。
「顔が赤いけど……まさか病気じゃないよね?」
 華艶はその得意な体質から、病気などになることはまずない。
「ううん、ちょっと調子が悪いってゆか、朝からツイてないってゆか……」
「何があったの?」
「事件を隠蔽してくれるような人紹介してくんない?」
「だから何があったのさ?」
 正直に言うべきか、華艶は口をもごもごさせている。
「いや、その……帰る場所がなくなっちゃって、良い物件知らない?」
「華艶ちゃん何隠してるの?」
「……朝起きたら部屋が全焼してた、みたいな。でもねでもね、マンション全部が燃えたわけじゃないの。ちょっと焦げちゃったかなぁ~、みたいな」
「ちょっとじゃなくて最初に全焼って言ったでしょ」
 実を言うと、燃やしたのは自分の部屋だけじゃなかったりする。
「たしかに自分の部屋は全焼しちゃいましたゴメンナサイ。あと部屋を飛び出すとき爆発しちゃって2次災害なんかになっちゃったりして、ほかの部屋もだいぶ燃えちゃったんだよねー、あはは。でもね、死人は出てないからね! 煙吸って病院運ばれた人はいたみたいだけど」
 故意に事件を引き起こしたわけではないが、大事故である。刑法に問われるかは別として、賠償金は多額になりそうだ。
 華艶は副業――と言ってもモグリだが、トラブルシューターとしてそれなりに稼いでいる。浪費癖があるにはあるが、それなりに多額の蓄えもある。それを使えば賠償金を払えないこともないだろう。
 にも拘わらず。
「それでさ、現場から逃げて来ちゃったんだけど、どうにかして警察にしょっ引かれない方法ないかなぁって」
「この街の火災原因調査員や科学捜査官は優秀だからね。出火場所をすぐに突き止めて、華艶ちゃんに辿り着くだろうね」
「そこをどーにか!」
「ならないね」
 キッパリと言い切られてしまった。
 華艶は京吾に手を合わせて拝み倒した。
「お願い! 今日って何の日か知ってる? あたしの誕生日なの、誕生日プレゼントだと思ってどうにかして、京吾様! 一生のお願いだからね、ね、ね、ねッ!」
 必死に華艶はお願いしながら京吾に顔を近づける。その額からは汗が迸り、顔は先ほどよりも赤くなっていた。さらにチューブトップが汗で滲み、突起した乳首が擦れる。
 その異変に華艶よりも京吾が真っ先に気づいた。
「華艶ちゃん……頭から湯気が……」
 後退る京吾。
「え? あたしの?」
 きょとん華艶がした次の瞬間、
「イクッ!」
 店内で潮を噴いた同時に華艶の躰は火炎に包まれた。
 すぐさま京吾はカウンターの奥に置いてあった消化器を手に取り、華艶に向けて一気に噴射した。
 しかし、白い煙は瞬く間に炎に呑み込まれ、消化器など無意味に等しかった。
 京吾が叫ぶ。
「華艶ちゃん早く店の外に出て!」
 もはや消すのは不可能。引火する物がない場所に行くしかない。それが被害を最小限に抑える方法だった。
 言われたとおり、華艶は店を飛びだそうと走ったが、途中でその躰が大きく跳ね上がった。
「あぅン!」
 足がもつれバランスを崩すが、その勢いに任せてドアをぶち破って外に飛び出した。
 歩道路を歩いていた主婦が叫び声をあげる。
「きゃーっ!」
 火だるまになった若い全裸の女性が突然目の前に現れたら驚くのは当然だ。しかも、藻掻き方が尋常ではない。
「ひぃっ、あああっ……あああああン!」
 感じすぎて藻掻き苦しんでいた。
 しかし、他人から見れば極度の快楽に覚える者は苦しんでいるように見える。
 というか、実際気持ちよすぎて苦しい。
 アスファルトの焼け焦げた臭いが辺りに立ち込める。
 自力では炎の力を制御できない華艶。
 騒ぎは拡大して人が集まってきた。
「人が燃えてる!」
「早く消防車!」
 だが、人々は異変に気づきはじめる。
「ダメッ、気持ひぃ!!」
 悶えながら股間を押さえる華艶。
 若者が青ざめる。
「死にそうになりながら……感じてるぞこの女」
 死にエクスタシーを感じる変態として見られたようだ。
 熱に弱いアスファルトが溶け始めた。
 油まみれになりながら華艶は絶頂を迎えた。
 ブシューーーーーーーーッ!!
 真夏の陽気に輝く噴水。
 慌てふためいていた人々も良い納涼になったようで、だれも口も開かず凍ってしまっている。
 やがて華艶を包み込んでいた炎が鎮火しはじめた。
 身動き一つしないで横たわる華艶。その躰は煤や溶けたアスファルトで黒こげになり、生きているのか死んでいるのもかもわからない。
 近くに寄ってきた若者が、
「こりゃダメだな」
 誰が見ても死んでいる。普通ならそう思うのが当然だろう。
 が、にょきっと華艶が立ち上がる。
 そして……。
「あはは、特撮ヒーローの撮影でしたー。みんな見てねー!」
 すっぽんぽんで猛ダッシュしてモモンガに逃げ込む華艶。特撮ヒーローじゃなくて、特撮AVの間違いじゃないだろうか。
 店内に入った華艶がまた燃えだしでもしたら大変だ。けれど、店の中は平然としていた。客の一人はカレーを食べ続けている。
 常連のトミー爺さんが新聞から目を離して華艶を見た。
「裸でおると風邪を引くぞ」
「……あ、うん。ってみんなもっとあたしに興味持ってよくない? 裸の美少女がここにいるのに……てゆか、風邪じゃなくて人体発火のほう心配しない普通?」
 当たり散らすように華艶はまくし立てたが、し~んっと店内はしていた。
 店の奥から京吾が戻ってきた。
「華艶ちゃん妹の服だけど入るよね、胸もないから」
「胸なくて悪かったですねー。最近の中学生は発育がいいもんねー、特にどっかの誰かさんの妹は」
「燃さないように気をつけてね」
「……なるべく気をつけます」
 自身はあまりなかった。制御できるくらいなとっくにしているからだ。
 華艶は服を受け取ろうとすると、その服を京吾は慌てて引っ込めた。
「先にシャワー浴びてから着替えてね」
「は~い」
 華艶が店の奥へと消えて行った。
 そして、華艶が通ったあとに残された黒い跡。
 京吾が溜息を漏らす。
「落ちるのかな、これ?」

《2》

 迷わずシャワー室に向かった華艶。
 この身の熟しは過去にも京吾のところでシャワーを借りている証拠だ。
 だからと言って二人がそーゆー関係というわけではない。なにより華艶を知っている京吾のほうが拒否するだろう。
「今度からここにあたしの服置かせてもらおうかなぁ」
 服を脱ぎ終わるとシャワールームへ。
 コックをひねって出したお湯を両手ですくった。
 真っ黒に染まるお湯。
 手に付いた煤や溶けたアスファルトを落とそうとするが落ちない。
「うわっ、サイテー」
 ボディソープを手にとって入念に擦り合わせるが、こびりついた汚れはなかなか取れない。
「なんか原油タンカーが座礁したときの鳥の気分」
 いちようそういうニュースにもちゃんと目を通している華艶。
「あれっ? アスファルトってタールだっけ? そもそもタールってなんだっけ? アスファルトって原油からできてんじゃないの?」
 そういうところはうとかった。
 シャワーを出したまま悩む華艶。
「う~ん、洗い流すより完全に燃やしちゃったほうが早くない?」
 普通の人ならやろうと思わない結論だ。
「やっぱやめよう。炎はなるべく使わない方がいいもん」
 マンションを燃やし、さっきは公衆の面前で燃えた。
 制御できない炎で被害は拡大するばかり。
「……あ」
 マンションでの出来事を少し思い出しただけなのに、華艶は股間は濡れていた。
「だめだめ!」
 頭を振って淫らな妄想を掻き消した。
「そうそう身体を洗わなきゃ。あたしは身体を洗う、洗うったら洗う!」
 たっぷりのボディソープをスポンジに取って、身体を洗いはじめる。
「あっ」
 腕をスポンジで擦った瞬間、体が少し震えた。
 生唾を呑み込んだ華艶。
 危険を感じ取った。
 しかし、危険とわかっていながら、むしろ危険だからこそ飛び込みたくなる。
 泡だったスポンジを肌に滑らせる度に鼻から熱い息が漏れる。
「ンッ……うン……ひゃっ……ああン……」
 ふくらはぎがそっと撫でられ、膝裏でゾクッと感じた。
「あふっ」
 内腿はヌルっとしていた。
「これ以上だダメ……絶対にダメ……」
 理性でなんとか疼く躰を押さえようとする。
 秘所に近付いていたスポンジを一気に離した。
 もっとも敏感な秘所への侵食は防げたが、脚を入念に洗うことはやめられない。
「ヤダっ……感じちゃう……」
 バスルームに湯気が立ち込める。
「足の裏とか、指の間とか……いやぁン、だれかに舐めて欲しい!」
 自分自身で触っても快感が一線を越えない。
 指先を立てて触れるか触れないかくらいで脚を滑らすも、自分で触っているのを頭で理解してしまって、イマイチ気持ちよくない。
「もう我慢できないよぉ」
 思わず手が秘所へと伸びそうになる。
「ダメっ、これ以上はダメっ!」
 寸前で理性が勝った。
「べ、べつに欲求不満なんかじゃないんだから……うぅ……人並みにえっちしたい」
 というのも、華艶はその特異体質の性質上、エクスタシーの瞬間、我を忘れて炎の力を解放して相手を丸焦げにしてしまうからだ。
「あぁン、もぉ! 人並みにえっちできないなら自分でしてヤル!」
 吹っ切れた華艶はシャワーを全開まで出し、流水を股間に押し当てた。
「ふっ……ふぐぅ!」
 水の粒が弾ける音に混ざって聞こえる淫らな音。
 クチュ……クチュッ……ペチュッ……。
 華艶の指が音を立てながら割れた恥丘をこねる。
 こんもりと盛り上がったその肉は柔らかく触り心地が良い。
「あう……あっ……ふぅ……」
 乱れた呼吸で華艶は自らの秘裂を指で開いた。
 ほかの場所は黒く汚れているというのに、その開かれたその先は肉々しい色をしていた。
「オマ○コ……ヒクヒク……してる……」
 開かれたことによって流水の刺激も強くなる。
「あっ……あっ……あううう……」
 ヌチュッ……クチュッ……。
 股を閉じて手を太股に挟みながら、割れ目のビラビラを掻き出すように摩った。
「ひゃっ!」
 ビクッと躰が短く痙攣した。
「ああああっ……イイ……すごくイイ……ああっ!」
 膝が震え立っているのもやっとだった。
「あっ、あっ……あっ!」
 肉が充血する。
「ふひっ……ふぅ……すふっ!」
 さらに秘裂がこねられる。
「はぁ……すぅ……ふっ……ふひっ……ああっ……あっ……あっ!」
 仰け反った背中から尻の膨らみを滑り落ちる水の玉。
 割れ目の中心に手を当てたまま華艶の動きが止まった。
 ほのかに赤くに染まった頬。
 惚けた瞳。
 ゆっくりと華艶は膝を付いた。
 そして、快感を求める躰は歯止めが利かなかった。
 すでに充血して少しツンと顔を出していた肉芽の包皮を剥いた。
「ひっ!」
 水の粒が乱暴に刺激してくる。
「クリに当たってるぅ~!」
 叫びながらさらに水の勢いを強くした。
「はぁ……はぁ……あっ……あああっ……ンっ……」
 湯水に混ざって次々と溢れてくる粘り気を含んだ蜜。
「ンッ……ンンッ……ひゃ……ああっ!」
 鼻で押し殺す声が浴室によく響く。
 ビラビラをこねくり、指先で肉芽を転がす。
「あううう……あン……ン……感じちゃう……クリ……スゴイぃぃっ!」
 指先は滑らかに動いているのに、ほかの肉体は硬直してしまっている。
「あうン……あン、あン、あン……ふひぃぃ……あうっ……!」
 グチュッ……ブチュッ……。
 指の動きが加速していく。
 華艶のだらしない口からどっぷりと涎れが垂れる。
「ひゃあっ……ふひ……あうあう……ああああっ!」
 まるで汗のように飛び散るシャワーの水玉。
 そして、蒸気が噴出する。
 指先を振動させながら肉芽に強く押し当てる。
「はあ、はぁ……ああっ、あふっ……ああああ!」」
 荒々しい息と喘ぎが混ざり合う。
「汁が……いっぱい……溢れてくる……あぁン……ふひっ!」
 熱を帯びた愛液。
 掻き毟るように肉芽を振動させながら擦った。
「痺れちゃう……全身が……あぁ……はぁはぁ……ああっ、ああああン!」
 触れてもいない乳首と乳輪が勇ましくせり出して尖っている。
「んあっ……ああふっ……ふひっふひっ……あうあ……あふあふ!」
 酷使された肉芽は赤く腫れてしまっているが、それでも激しく手が動いてしまう。
 溢れる蜜は白濁して泡立ち、その入り口は今か今かとヒクヒクとしている。
「ああっ……イク……イク……イっちゃう……ひっひっ……あっ、あああああ!!」
 頭を振り乱しながら華艶が痙攣した。
 ついに華艶はタイルの上で横になった。
 躰を小刻みに振るわせながら仰向けになり、まだ余韻が残るうちに最後の砦を破ることにした。
「もう……ダメ……我慢……でき……はぁはぁ……」
 切ない声は最後まで保たなかった。
 指先は肉芽から肉の穴へと――。
 クチュッ。
 2本の指が中を犯し、濁った愛液を吐き出しながら、さらに奥へと潜っていく。
 ズブブブブブ……。
「ひとんちのお風呂でこんな……えっちなこと……いつも以上に燃えちゃうぅ!」
 肉壺に呑まれた指。
 リミットを越えた。
 浴室は白に呑み込まれ、炎が舞い上がった。
 それでも華艶はやめられなかった。
 いや、炎がうんぬんということすら頭になかった。
 あるのは渦巻く快感のみ。
 ヌチュッ……ヌチュッ……。
「はあ……あっ、はあ……あっ……」
 2本の指を曲げて膨らんだ肉壁を押し上げる。
「あっ、あっ……あぁン!」
 中を喰い破るようにして指が下腹部を押し上げてくる。
「あううっ、あっ、ひっ、ふっふっふっ……ひぃうっ!」
 グチュッ……グチュッ……。
 掻き出すように動く指に合わせて、穴の入り口も淫らに形を変える。
「あううううっ、ああっ……あううっ……あふン!」
 汁がドロドロと溢れて止まらない。
 自然と浮いた腰が勝手に動いてしまう。
 クチュッ……グチュッ……ヌチュッ……。
 咥え込んだ指が暴れ狂う。
「オマ○コ……痺れ……ふひぃぃ……はうううっ……!」
 形振り構わず華艶は乱れた。
「もっとぶっといの……欲ひぃ……激しく……あふっ……突いて!」
 3本目の指が挿入れられた。
 激しくグラインドする3本の指。
「あふっ! あああっ……すごひ……ふひっ……感じちゃう……激しく感じ……ああああ!」
 ヌプッ……グチュッグチュッ……ヌポッ……ヌチュッ!
 深く挿入れては引き出す。
 グチュッ……グチュッ……ヌプッ……ヌチャッ!
「あひぃぃっ……ああっ……ふひ……あっ……ハァハァ……アアッ……!」
 炎の対流が蒸気を巻き込みながら渦巻く。
 クチュッ……プチュッ……ヌチュッ……ジュプッ!
「あううっ……うひっ……ひゃっ……ひゃああっ……あああああっ!」
 悶え泣きをする華艶。
「ひいいいいっ……あン……あン……ひぃっ!」
 全身でグラインドしながら奥の奥を激しく突く。
 揺れる乳房。
「ああっ……イッ……イッ……ああぁン!」
 ジュププッ……ジュプッ……!
 涎れが垂れる。
 瞳は白黒して焦点が合っていない。
「子宮が……来る……スゴイ……イッちゃう……あああああああっ!」
 炎はさらに燃え上がり、その中で華艶はのたうち廻った。
「ヒィィィィィィィィィッ!!」
 最後は人の叫び声ではなかった。
 絶頂を迎えた華艶はアヘ顔を晒したまま、小刻み痙攣したまま動けなかった。
 静まった炎。
 蒸気もやがて逃げていく。
 蕩けた世界で華艶は夢うつつに浸った。
 流れていく時間。
 どれほど時間が経ったのだろうか、すでに浴室を覆っていた蒸気も晴れていた。
 そして、華艶の耳に届いた悲鳴。
「きゃーっ! なっ、なんなの!?」
 若い少女の声。
「あちっ!」
 壊れていたシャワールームのドアを開けて姿を見せた少女――京吾の妹のさくらだった。
「…………」
 何も言えないまま立ち尽くすさくら。
 それに気づいた華艶は蕩けた世界から一気に瞬間冷凍された。
「……あっ、さくらちゃん」
「『あっ』じゃないでしょ華艶さん!!」
「…………」
 華艶は自分の置かれた状況を理解しつつあった。
 素っ裸でタイルに横たわる自分――問題は崩れ落ちた天井や溶けた浴槽など。
 言い逃れはできそうになかった。
「弁償するから、大丈夫……弁償するから、ねっ!」
「今日のお風呂どうしたらいいんですかっ!」
「……温泉ランドとか……楽しいよ、きっと、うん」
「もぉ、どうしたらこんなことになるんですかっ!」
「それよか、さっき熱いとかなんとか叫んでなかった? 手とか火傷したんじゃない? ちゃんと冷やさないと、ほらシャワーで」
「シャワーのホース無くなってますけど?」
 とっくにシャワーはぶっ壊れ、お湯が止めどなく流れていた。しかもコックも壊れ水が止められない。
「……弁償するから、弁償しますから!!」
 華艶は必至になって土下座した。

 キャミソールとミニスカートに着替えた華艶が、沈痛な面持ちで店のカウンターまで戻ってきた。
 目の前にいるであろうマスターと目を合わせるのが怖い。
 華艶無言。
 京吾無言。
 チラッと華艶は京吾に目をやった。
「怒ってる?」
「お風呂場の水を止めるために店の水も止まってしまって、営業に差し障るんだけどどうしてくれるのかな?」
「……どうしろと?」
「とりあえず今後一切うちのお風呂使わせないから」
「それ困る! ここ便利なんだから!」
「だから?」
 と言った京吾の顔を微笑んでいた。それが逆に怖い。
「……ごめんなさい」
「そう、その言葉が聞きたかったんだよ」
「じゃこれからも――」
「ダメ! 使わせないよ。それからお風呂は修理の見積もりが出たら請求するから。それと水道費や店の負った損害は……」
「それもふんだくるの?」
「華艶ちゃん、言葉の使い方を間違っているよ。僕は正統な権利を主張しているだけで、君からふんだくるなんてマネをするつもりはないよ?」
 また京吾は微笑んだ。
 ゾクッ。
「ご、ごめんなさい。全部ちゃんと払わせていただきます」
 しゅんと肩をすくめた華艶。言葉は多いがとりあえず反省はしているらしい。
 溜息を吐いても吐ききれない華艶は何気なく周りを見回し、カウンターの上に置いてあったバケツを発見した。
「あたしに店を出ろって言ってる?」
「うちの店はちゃんと客を選ぶ店だよ。出て行って欲しいならもっと直接的な方法を取るよ」
「ならいいけど……」
 ここの住人たちは理解のある方なので、まだかろうじて、かろうじて出入り禁止されていないが、別の場所で同じような騒ぎを起こせば完全にアウトだろう。早めに対処しなければどこにも居場所がなくなってしまう。
「今日から夏休みで本当によかった」
 しみじみ華艶は呟いた。
 もしも学校で発火なんてしまくったら、完全に友達をなくしてしまう。ただでさえ留年のせいで浮いているというのに。
 京吾は床の焦げ痕をモップで掃除している。
「ダメだね完全に焼けちゃってるよ。補修が終わったらここも請求書渡すから」
「は~い」
 華艶は気のない返事をした。
 ここの請求だって気が重いのに、逃げて来ちゃったマンションのほうがどうなることやら。これからだって被害が拡大しないとは限らない。やはり早めに対処しなくては。
「やっぱ常識的に考えて病院かな」
 この街の病院は魔導関係の疾患や症状も多い。
 さっそく華艶は病院に電話をかけた。
「もしもし~、火斑華艶ですけど緊急の用件でチアナ先生に繋いでくださぁ~い」
《少々お待ちください》
 保留音のメロディーが流れてしばらくして、電話の向こうからガサガサという激しい音がした。
《ったく、これから手術で忙しいのよ!》
 魔女医チアナの声だ。
「今すぐ診察して欲しいんだけど」
《耳鼻科に行きなさいよ耳鼻科に! 忙しいって言ってるでしょ!!》
「別にいつも忙しそうじゃないじゃん。かなり緊急事態なんだけど」
《どうしたのよ?》
「身体が自然発火しちゃって、そこら中のもの燃やして歩いてるんだけど?」
《あなた生理前はいつもそうでしょ! そんなことで電話かけないでちょうだい!!》
 ブチッと一方的に電話を切られた。
「……ほかの医者探すのめんどくさいなぁ」
 魔導病気はその原因を突き止めるのが難しく、原因がわかったとしても対処の仕様は千差万別。患者そのものに原因がないことも多く、手術や薬でなるというわけではない。場合によっては病院の仲介でトラブルシューターを雇い、妖物退治や呪物を見つけ出すこともある。
 華艶のような魔導的体質を持った者は、一般の患者よりも主治医の必要性があり、ほかの魔導医に看てもらっていては埒の明かないことが多い。
 掃除をあきらめてカウンターの中に戻ってきた京吾。
「華艶ちゃんの力って血筋でしょ。家族に相談したら?」
 一族で同じ体質を持っている場合、すでに一族の中で多くの対処法が体系化されていることが多い。
「身内は姉貴しかいないし。どっかに親類いるかもしんないけど、あたしそういうのよくわかんないし」
「だったらお姉さんに相談したら?」
「連絡先知らない……3年近く顔合わせてないし」
「仲悪いの?」
「違うし、姉貴って昔からほんっと自由人でさ。同じ場所に長くいるってことないし、連絡先もすぐ変わるし、今もどこで何やってんだか」
 この数ヶ月後、華艶は衝撃的な出来事を携えた姉の麗華と再会することになる。
 再び華艶はケータイで電話をかけた。
「もしもし、魔導疾患の急患がいるんですけど、救急車1台寄越してくれますー?」
 横でそれを聞いていた京吾は、
「救急車をタクシー代わりに使うのやめようよ」
 電話を終えた華艶は京吾のほうを振り向いた。
「だって実際にいつ発火するかわかんない急患だし、救急車呼んだ方がすぐに診察してもらえるじゃん?」
 しばらくして救急車の音が近付いてきた。
 華艶は床に寝そべりぐったりとして、京吾をチラッと見た。
「あとはよろしく」
 華艶はいかにも病人ですという表情をして、救急隊員が店に駆け込んでくるのを待つのだった。

《3》

「ここから出しなさいよーッ!」
 華艶の目の前に立ちはだかる頑丈そうなドア。
「悪魔風脚・最上級挽き肉!![ディアブルジャンブ・エクストラ・アッシ]」
 右脚に赤い炎を光らせ、高熱を帯びた蹴りをドアに炸裂させた。
 ゴンッ!
「痛っ!」
 華艶は足を押さえるが、ドアはビクともしない。
「……お腹がすいて力がでない」
 ここに閉じ込められてどのくらいの時間が経っただろうか?
 四方を壁で囲まれた灰色の部屋。窓もなければ、外の様子を窺うことも出来ない。家具もなく、そこにある物といったら2台の監視カメラ。
 部屋の角天井に設置されている監視カメラを華艶は覗き込むように見上げた。
「てゆか、なんで留置場なんか入れられなきゃいけないわけ?」
 カメラに向かって話しかけるが、出力のスピーカーがないので返事があるわけがない。
 救急車を呼んで病院に行くはずが、なぜか連れてこられたのは警察署。
 しかも凶悪犯用の特別房。
 この部屋は対魔導用でもあり、並大抵の攻撃系魔導ではビクともしない。
 もちろん華艶の炎でもだ。
 なぜこんなとこに入れられたのか、それは警官から聞いている。
 もちろんマンション放火の容疑者だ。
 華艶にしてみれば事故なのだが、完全に犯罪者扱いだった。
 ここに放り込まれてからだいぶ時間が経ったような気がする。お腹の空き具合がそれを知らせている。なのに警察側は音沙汰無だ。
 部屋は空調によって気温が一定に保たれているのだが、華艶は少し汗ばんでいた。
 壁により掛かった華艶は、そのままゆっくりと床に腰を下ろした。
 華艶は忙しなく辺りを見回したり、内腿を擦り合わせながらモジモジと落ち着かない様子。
 いつしか手は股間へと導かれていた。
 荒くなる息づかい。
 溢れ出す蜜がショーツに染み出す。
 チラッと華艶は監視カメラに目をやった。そしてすぐに、恥ずかしそうな顔をしてうつむいた。
 監視カメラで見られているのに、手が止められない。
「はぁ……ンふ……はぁ……はぁ……」
 理性はまだ残っている。だからこそ恥ずかしさで狂いそうになる。
「どうして……こんな変態……違う……のに……あぁン!」
 華艶は痴女ではない。ではなかったという過去形が正しいかもしれない。
 ところ構わず性欲を人前に曝け出せるほど、墜ちてしまった。
 火照る肉体が抑えられない。
 まるで可笑しなクスリに脳ミソを漬けられてしまったような……。
「ああっ!」
 こんな恥ずかしい姿をカメラで視姦されているなんて、顔も知らない男どもはどんな気持ちで見ているのだろうか。考えれば考えるほど恥ずかしさが増すのに、手はより激しく動いてしまう。
 借り物のショーツが濡れ、生地が芯を擦る。
 布地の上からでも肉芽[ニクメ]が大きく育っているのがわかる。
 花弁を剥き、芽を出したいと切に懇願している。
「うぐっ……」
 口から垂れた涎れがシャツに染みをつくる。
 ポタ……ポタ……と垂れていた涎れが、ボタ……ボタ……と卑猥な音に変わる。
 もう限界だった。
 ショーツの中に手を入れ、激しく恥丘[チキュウ]の谷間をまさぐった。
 脳は放心に近い。
 蕩ける世界。
 何が何だかわからないまま、ひたすら激しく、全身を使い、床の上で悶え転げ回った。
 止まらない止まらない。
 没頭した。
 指が深い穴へと吸い込まれる――燃え上がる坩堝の中へ。
 もっと激しく。
 もっと熱く。
 欲しくて欲しくて渇望するが、渇きは治まらない。
 刹那、華艶の全身から紅蓮の炎が舞い上がった。
「ひゃあぁぁぁぁン!」
 業火が一気に部屋中を包み込んだ。
 炎に抱[イダ]かれる華艶。
 激情する欲望。
 まだ満たされない。
 もっと熱く、もっと激しく。
 求めても求めても止まない感情。
 腰を振り、目を白黒させ、舌を垂らす。
 もはや見られていることさえも忘却された。
 目はかろうじて開かれているが、もうなにも見えてはいない。
 そこには自分すらもいない。
 あるのは女の奥深くにある――秘奥のみ。
「ひぃ、ひぃィィィィィィィッ!」
 華艶の身体が激しく痙攣する。
 陸に上げられた魚のように何度も床で跳ねてしまう。
 もう力が入らない。
 今は何も逆らうことができない。
 部屋を丸呑みしていた炎が徐々に治まっていく。
 煤だらけになった華艶から立ち昇る湯気。
 余韻に浸りながら、時間だけが過ぎていく。
 意識がしっかりしてきて、思考能力も回復してきたが、身体が重くて起き上がる気にもなれない。
 借り物の服を燃やしてしまった。
 わかっていても抗うことができなかった。
 堕落した。
「……違う」
 否定の一言。
 今起きたこと、自分の欲望を否定したかった。
 100歩譲って欲求不満だったとしても、ここまで爆発するなんて否定したかった。
「……もう恥ずかしくて生きていけない」
 酷く疲れた。
 肉体だけではなく、心が折れてしまった感じだ。
 華艶は膝を抱えて寝転んだ。
 しばらくそのままじっとしていると、ドアの開く音が聞こえた。
 中に入ってきた防火服を着た二人組。通常の防火服ではなく、宇宙服のように顔すらも覆っている。
「話を聞く余裕はあるかね、火斑華艶[ホムラカエン]君?」
 若い男の声。顔は見えないが、声だけなら色男。
 声を発した男が華艶にバスタオルを投げた。
 華艶はそれを受け取る余裕もなく、かけ直す余裕すらもなく、ただ身体の上に乗せられただけ。
 どうやら口を利いている男がゲストで、電磁ロッドを携帯しているもう一人は護衛らしい。
 どのような用件で客人が尋ねてきたのか?
「君は火斑麗華[ホムラレイカ]の妹らしいな」
 男が口にした名前を聞いて、疲れ切っていた華艶が微かに反応して顔を上げた。
 まさかこんな場所で姉の名を聞くとは思ってもみなかった。
 男は軽く鼻で笑うと話を続けた。
「まあ君のお姉さんのことは今は関係のないことだ。まずは自己紹介をして置こう。私の名は水鏡刃[ミカガミジン]、検事をしている」
「で……検事さんが……何の用?」
 細い声で華艶は尋ねた。
「君のことは調べさせてもらった。モグリのTSらしいじゃないか。事件もだいぶ起こしていて、大きな事件では起訴されたことはないが、小さな物はいくつかあるようだ。それも氷山の一角――おそらく上手く我々の目を欺いてきたのだろうが」
「もしかしてあたしのこと捕まえる気満々なわけ――放火犯で?」
 強気な口調で言った。
 水鏡は鼻で笑った。
「そう、君にはマンション放火の疑いが掛けられている。死亡者は出ていないが、放火の罪は重い」
「あたしが犯人って証拠あるわけ?」
「出火場所が君の部屋だという調査結果は出ている。加えて君は炎術士だ。君にとってはとても不利な状況だと言える」
 自分に辿り着くことくらい華艶も予想していた。しかし、身体を治す方が先決で、手を打っているヒマがなかったのだ。
 今はまだ容疑の段階だが、起訴されるのは時間の問題だった。
 状況的に限りなく華艶は黒。事実、放火したのは華艶で、自信もそれを理解している。ただし故意ではなかった。
 華艶としては、ここまで来てしまっては賠償金は払うつもりだったが、あくまで事故扱いで放火の罪で問われたくはなかった。賠償金だけで済むか、刑罰が下るかは大きな差だ。
「じゃあ、例えばあたしが火災の原因だったとして、実はちょっとした事故で故意に火を付けたわけじゃないって証言したら?」
「起訴はする。そこで事故だったかどうかは明らかになることだ」
 いざ裁判になれば、検察側は放火犯として華艶に争いを挑んでくる。その時点で華艶は不利だった。
 しかし、水鏡は急に態度を変えた。
「君一人を有罪にしたところで、誰が得をするだろうか。そこで、我々と取引をしないかね?」
「司法取引ってやつ?」
 華艶は好機が訪れたと少し笑みを浮かべた。なるべく良い条件を吹っかけてやらねば。
 深く頷く水鏡。
「そういうことだ。君がこちらの条件を呑み、ある仕事を片づけてくれさえすれば、起訴はしない」
「起訴はしないだけ? それなら普通に裁判であたしが勝てばいい話だし」
「私はこれまで……1度だけしか裁判に負けたことはないぞ。それでも私に裁判で勝とうと言うのか?」
「ふ~ん、1度でも負けちゃうとカッコつかないね」
「うぐっ……」
 一番突っ込まれたくない場所だったらしい。水鏡は胸を押さえて怯んだ。
 だが、すぐに気を取り直し、
「まあいい、報酬も出そう。君が燃やしたマンションの修繕費だ」
「マジで!? 太っ腹過ぎ……ううん、まあ当然かな。あたしほどのTSを雇いたいなら、そのくらい出してもらわなきゃ。なんせ1度の仕事で10億稼ぐ若手のホープだもんね!」
「10億だと?」
「そうそう、くお……んっ、守秘義務です!」
 依頼人の名前を出しそうになってすぐにやめた。あの依頼人の秘密を華艶は握っている。仕事自体は失敗だったが、10億の報酬は口止め料も入っているのだろう。もしも他言したら、自分の命が危ないことを華艶はわかっていた。
 俄然やる気の出てきた華艶は力強く立ち上がり、バスタオルをキュッと体に巻いた。
「で、あたしに片付けて欲しい仕事って?」
「引き受けるのか受けないのか?」
「内容は?」
「君が契約書にサインするまで依頼内容は話せない」
 華艶はここでわざと渋って見せようとも思ったが、変に仕掛けて話がなかったことにされるのは困ると思った。
「じゃあ受けてあげる」
「では契約書にサインしてもらおう」
 水鏡が独房の外にいた者に合図を送り、すぐに契約書とペンを持って来させた。
 その2つを受け取った華艶は、眉間にしわを寄せて目を細めた。
「何語?」
 契約書は日本語で書かれていなかった。
 嫌な予感がする。字が読めないことをいいことに、よからぬ契約にサインさせる気かもしれない。
 華艶が迷っていると、水鏡が契約書を取り上げようとした。
「サインをしないのならば、この話はなかったことにしよう」
「ちょ、待った!」
 慌てて華艶は契約書を奪い返し、そのまま勢いでサインをしてしまった。
 次の瞬間、華艶は目を剥いた。
 目の前で契約書が生き物のように動き出し、その形を紐のように長くして、華艶に襲い掛かってきたのだ。
 すぐに華艶は躱そうとするが、この至近距離では無理だ。
 華艶のバスタオルがはだけ、契約書が躰に蛇のように巻き付き、胸や尻や秘裂までも締め上げた。
「あぅっ!」
 あの場所を擦られ感じてしまう。
 躰が熱い。
 また……燃えてしまう。
 しかし、躰はこんなにも火照って求めているというのに、欲求ばかりが増幅するだけで、華艶の躰からは炎が上がらなかったのだ。
「君の炎の力は封じさせてもらった」
 と、水鏡は鼻で笑った。
 まるで包帯のように華艶の躰に巻き付いた契約書。この契約書自体が呪符であり、華艶の枷となったのだ。
「ちょっとこんなの聞いてないし!」
 声をあげる華艶。
 だが、契約書にサインしてしまったが最後。あの契約書が魔導を帯びていたことは明らか。一筋縄ではその力を打ち破ることはできない。
「……ハメられた」
 苦笑する華艶。
 こうなってしまっては、仕事を片付けるしか華艶には手がない。
 ただ1つ、華艶にはどーしても納得にいかないことがあった。
「せめてシャワー浴びてからにして欲しかったし」
 煤だらけの躰の上から呪符を巻かれて、気持ち悪いったらしょうがなかったのだ。
 華艶の力が封じられ、水鏡は防護服のマスクを取った。
 明らかになった顔は秀麗そうだが、どこか嫌みったらしい。
 水鏡は刃のように鋭い瞳で自分をまじまじと見ている華艶を睨んだ。
「私の顔に何か?」
「イケメンだけど、彼女とかいないでしょ?」
「恋人は裁判だ」
「うわっ、マジ引く……一生恋人できないよ」
 思ったことをハッキリ口にしてしまう華艶。
 水鏡はこめかみに青筋を立てながらも聞き流した。
「仕事の話をしよう」
「彼女とかいたことあるの? もしかしていい歳してどーてーじゃないよね?」
「仕事内容は君ならばおそらく簡単なものだろう」
「もしかして童貞を奪って欲しいとか?」
「私は童貞じゃない!!」
 ぶち切れた水鏡が指で印を結ぶと、急に呪符の締め付けが激しく華艶の躰に食い込んだ。
「ううっ!」
 苦悶する華艶の顔を見つめる瞳の刃。
「帝都は類い希な犯罪が多く存在する故に、超法規的措置が日常的に行われている。それは無法状態にも近い。ただし、私のテリトリーでは、私が絶対的な法となる。この意味がわかるかね?」
「……う、訴えてやる!」
「君はだいぶ頭が悪いようだ」
「……なにを……する気?」
「頭で理解できない動物には躰に覚えさせるだけのこと」
 検事の仮面を被ったその男は悪魔のような笑みを浮かべていた。

《4》

 華艶の手首が後ろ手に縛られた。
 元は紙だというのに、この紐状の呪符は力を入れても切れない。
 されるがままに全身を締め上げられてしまった。
「ちょっとあんた検事でしょ、こんなことしてタダで済むと思ってんの!」
「この街の住人とは思えない発言だな。検事が正義だとでも思っているのか?」
「モラルくらいあるでしょ!」
「君は私を侮辱した。その罰をこの場で速やかに執行するというだけの話だ」
「そんな権利あんたに!」
「ここは私のテリトリーだ」
 水鏡が印をきつく結んだ。
 華艶の口が大きく開く。
「あぁン!」
 荒縄のように呪符が肉を握りつぶすように喰い込んでくる。
 乳を搾るように巻き付いてくる呪符。
「いやっ、あっ、ああっ!」
 尖ってしまった乳首が擦られる。
「あうン!」
 蛇のように躰を這う呪符。
 太股を舐めるように巻き付き、秘裂までも魔の手を伸ばそうとしていた。
「ダメっ、許して!」
「謝って済むなら検事などいらない」
 とんでもない悪徳検事を前に為す術もない華艶。
 暴走する炎の力でさえ、今は恋しく感じる。
 呪符により得意の炎も封じられ、身動きすらも緊縛されてしまった。
「ひっ……ごめんな……さい……もう……許して……あふっ!」
 華艶は口から垂れそうになった涎れを寸前で啜った。
 だがガクガクと笑う膝には、別の液が垂れてしまっていた。
 秘所から漏れ出す愛液。
 床の上に雨のようにポツリポツリと染みをつくってしまう。
 ついに華艶は持ちこたえられなくなって、床に膝を付いてしまった。
 すぐに水鏡が印を切った。
 呪符から力が抜け、締め付けが治まった。
 華艶は唇を噛む。
「マジ……最悪……」
 そして、顔を上げ水鏡を上目遣いで見ると、
「炎を封じて、逆らえば体罰ってわけ。ほかには何もないでしょうね?」
「ほかにも君が魔導の力を持っていれば、それも封じられていることになる」
 華艶がほかに持つ特殊な能力は、驚異的な治癒能力と炎の耐性。炎の耐性は魔導によるもの
だと華艶は知っていたが、治癒能力については身体的なものなのか魔導に関係するものなの
か、自分自身でも知らなかった。
 もしもすべての能力が失われていたら……。
「悲惨過ぎる……今のあたしってか弱いただの女子校生じゃん」
 か弱いかは別として、今まで普通に存在していた能力が失われれば、苦難を強いられること
は間違いない。
 ここである疑問が浮かび、華艶が尋ねる。
「力を封じられたら仕事のしようがないじゃん、あんたバカ?」
「必要なときが来たら炎の力は解放する」
 すぐに華艶は言葉を拾った。
「ふ~ん、ってことは仕事には〝炎〟の力が必要ってわけ?」
「そういうことだ。詳しい話は別の場所でしよう。シャワーを浴びて着替えを済ませて来たま
え」
「シャワー浴びても浴びた気しないんだけど」
「そんなみっともない顔で人前に出るつもりか? 最近の女子校生ときたら、恥じらいの気持
ちもないのだな」
 言われて華艶は自分の頬を指でなぞり、煤だらけで顔が真っ黒になっていることに気づい
た。
「恥じらいの気持ちくらいありますー! このどーてー!!」
 華艶は床に落ちていたバスタオルを拾い上げ躰に巻いたが、
「あぅン!」
 急に躰がビクッとなり、またバスタオルがはだけてしまった。
 床に膝をついた華艶が水鏡を見ると、彼は鼻で笑いながら印を結んでいた。
 華艶は必死で耐えながら拳を握り、水鏡を睨み付けた。
「覚えとけよ、この早漏童貞!」
 吠えた華艶だったが、すぐにまた躰が――。
「ひゃン!」
 喧嘩をふっかける前に負けは見えていた。だが、華艶の性格なのだから仕方がない。
 呪符がうねる。
 瞬く間に拘束される華艶の肉体。
 手首を後ろ手に縛られ、乳房を絞られ、さらには――。
「この変態検事……あひっ!」
 叫んだ華艶の秘裂を擦り上げた呪符。
 まるで綱渡りのように部屋に張られた呪符。華艶の秘裂はその綱に押しつけられていた。
 無様な性奴隷の姿。
 秘裂によって綱を渡れというのだ!
 しかし、そんなこと華艶が自らの意思でするはずがなかった。
「このドS検事……いやっ!」
 呪符の綱が揺れた。
 つま先立ちになる華艶。
 脚が震える。
 少しでも脚の力を抜けば秘裂に呪符縄が喰い込んでしまう。
 華艶の額から汗の玉が落ちた。
 そして、股間からも淫らな涎れがボタボタと呪符を濡らした。
「あン……こんなことして……ああっ……ひっ……タダで済むと……ひゃあ!」
「私を侮辱してタダで済むと思うな」
 華艶の言いたかった言葉をそっくりそのまま返された。
 綱渡りの縄。ここを渡らなくてはおもしろくない。
 水鏡の手の動きに合わせて華艶の秘裂がこじ開けられる。
「いやっ……そんなに……ああン……広げちゃ……らめぇぇぇぇっ!!」
 肉々しい色をした女の唇が開かれ、敏感な粘膜を呪符縄が触れた。
「ひゃっ!」
 いやらしいビラビラが強く刺激される。
 華艶の脚も限界だった。
 つま先から伝わる震えは、それが逆効果となって、股間を突き上げるようにして擦れてしま
う。
「ひゃっ……ひゃン……もう……だめ……あああっ!」
 力の抜けた膝から崩れ落ちた華艶。
 秘裂を押し上げながら呪符縄が喰い込んだ。
「クリが……クリが……だめなのぉぉぉぉン!」
 水鏡の合図で呪符縄は波のようにうねり、華艶の躰を飛び上がらせる。
「ひっ……ひっ……ひっ……」
 リズムカルに喘ぐ華艶。
 躰が弾む事に呪符縄が秘裂に喰い込み、肉の粘膜や肉芽を摩擦する。
 しかし、まだまだ。
 まだ華艶は綱を渡っていない。
 水鏡の腕が鞭を打つように動くと、それに合わせて1本の長い呪符が華艶の尻を叩いた。
 ビシッ! バシッ!
「あン……あっ……やめて!」
「よがるだけで曲芸もできないのか、このメス豚めッ!」
「いやっ……ああっ……ああああっ!」
「喘いでないで綱を渡ったらどうだッ!」
「あんたの……いうことなんて……いやあああぁぁぁっ!」
 苛烈に華艶の尻を責める呪符。
 尻を叩かれるたびに華艶の躰は小さく跳ねる。
 尻はすでに赤くは擦り切れ、少しばかり血が滲んでいた。
 それでも華艶は耐えた。
 ここで縄を渡ってしまったら、この鬼畜に屈したことになる。
 歯を食いしばった華艶。
 だが、それも長くは保たない。
 バシン!!
「ひゃっあっ!」
 口から漏れる叫び。
 さらに蜜壺からも愛液がドロドロと溢れていた。
 秘裂や肉芽を刺激され、さらに乳房を絞られ尖った乳首を舐めるように擦られる。
 肌が感じてしまう。
 バシッ! ビシッ! バシン!
「ああっ……あああっ……あああああっ!」
 叩かれてるのに感じてしまう。
 そのことに気づいてしまった華艶は、もはや墜ちる寸前であった。
「もう許して……ああンっ……ああっ……ひっ!」
「だったら早く綱を渡るんだな」
「そんな……こと……できな……ああっ!」
「ならもう少し後押しをしてやろう」
 検事の仮面を被った悪魔が恐ろしく嗤った。
 次の瞬間、華艶のケツ穴に呪符が捻じ込まれた!
「ひぃギぃぃぃぃぃぃッ!」
 華艶は甲高く叫びながら一瞬白目を剥いた。
 無理矢理捻じ込まれた激痛は、電流のように脳天まで突き抜けた。
 愛液と混ざり合う鮮血。
 強烈な衝撃によって華艶の躰は綱を前進してしまっていた。
 さらに呪符はケツの中を掻き回してくる。
「ふひっ……ひゃっ……ぎゃあ!」
 後ろの穴を犯されながら全身を余儀なくされる。
 半ば白目を剥いて中を仰ぐ華艶の口から、洪水のように涎れが噴き出してくる。
 秘裂が擦られる――自らの前進によって。
 恥ずかしさなど思いもしなかった。
 そこにあるのは崩壊と堕落。
「ひぃぃ……痛い……あああっ……お尻とアソコが痛いよぉぉぉぉ」
 呪符縄に擦られ続けた秘裂も腫れてしまっていた。
「あああっ……イッちゃう……こんなことされながら……イッちゃうぅぅぅぅ!!」
 背中が弓なりに曲がり、華艶は熾烈の中で絶頂を迎えた。
 痛みであったはずのものでイカされた。
 瞳を潤す涙。
 張られていた呪符縄が消え、華艶の躰が床に崩れ落ちた。
 痙攣しながら華艶は放心した。
「ひっ……ひっ……」
 快感の波がまだ躰を疼かせる。
 荒々しい呼吸が響き渡る。
 今の華艶は驚異の治癒力を失っていた。躰は鍛えられてるとはいえ、責苦は肉体に堪えた。
 しかし、肉体よりも心のほうが傷ついたに違いない。
 沸々と華艶の腹の底から沸き上がってくる憎しみ。
「契約とか……もうそんなの……この場で殺して……」
 消え入りそうな声だったが、切意の響きは威圧感を放っていた。
 だが、それを水鏡は鼻で笑い飛ばしたのだ。
「まだわかっていないようだな。しかし、馬鹿は本当に飼育甲斐がある」
「きゃっ!」
 突然、華艶の躰が持ち上げられた。
 呪符によって絡め取られる四肢。
 なんと華艶は呪符によって宙づりにされてしまったのだ。
「いやっ……下ろして!」
 四点によって吊り下げられている華艶の躰。
 両手首を結んだ1本、乳房に絡められて伸びる1本、両足首に1本ずつ。ギチギチと皮膚を
擦り肉に喰い込んでくる。自分の体重を支えるこの姿は肉体に苛烈な苦痛を与える。
「うぐっ……ううっ……うううう……」
「苦しいか? 苦しいなら支えをもう1本加えてやろう」
 それが親切のはずがなかった。
 新たに宙から伸びた呪符が秘裂に喰い込んだ。
「ひぃぃぃっ!」
 ギシシ……ギシィ……。
 暴れてしまった躰に合わせて呪符縄が揺れる。
 揺れれば揺れるほど呪符は肉に喰い込み、さらなる刺激をもたらすのだった。
 秘裂に喰い込む尻縄が何度も上下に揺らされる。
「ひぃ……あひぃぃぃ!」
 華艶の流すべっとりとした脂汗が過酷さを物語っている。
「痛ひ……もう許して……ひゃああああっ!!」
 尻縄が持ち上げられ華艶の躰が海老反りになった。
 汗や涎れや愛液がボトボトと床を穢す。
 水鏡は華艶の尻に回り込んで、秘所を覗き込んだ。
「本当に汚らしい穴だ。次から次へと変態汁が漏れてくる」
「見ないで……ああっ……ひっ……見ちゃだめぇぇン!」
 風邪を引いたように華艶の顔は真っ赤にだった。
 痛みによって責められているのに……。
「ああっ、感じちゃう!!」
「あはははっ、メス豚が。これは罰なんだ、感じたら意味がない……根っからの君は肉奴隷
だ!」
 水鏡は華艶の肉芽を摘んで捻った。
「ぎゃあああっ!」
 大きく開いた華艶の口から舌がベロリと垂れた。
 目を白黒させて、荒い呼吸をしながら、唇をわなわなと振るわせている。
 意識が途切れそうになっている。
 そこへ水鏡のさらなる狂気が華艶を襲った。
 ヌチュッ!
 3本の指が問答無用に華艶の肉壺に押し込まれた。
 指がピストン運動をするのに合わせて、宙づりになっている華艶の躰が揺れる。
 揺れは反動を伴い、どんどんと大きく揺れ動き、指が奥へ奥へと突き刺さる。
「ああっ……あっ……あああっ……うううっ、あン!」
 ギシ! ギシ! ギシ!
 肉の振り子が汗を迸らせる。
 グチュ! グチュ! グチュ!!
 中から泡だった愛液が掻き出される。
 水鏡は声を出して嗤っていた。
「あはははははっ、どうだ火斑麗華、手も足も出ないとはまさにこのことだ!」
 水鏡が叫んだ名は華艶ではなく、その姉の名だった。
 やはり水鏡検事は弁護士火斑麗華に因縁があるらしい。
 さらなる呪符縄が操られる。
「君にはもっと、もっと屈辱を味合わせてあげよう!」
 水鏡の合図でまたも呪符がケツ穴に捻じ込まれた。
「ぎゃあああっ……深い……いやっ……ああっ……そんな奥までぇぇぇ!!」
 ズブブ……ズブブブ……
 ドリルのように呪符が肛門をこじ開けていく。
 呪符はさらに口を中や鼻や耳の穴まで、穴という穴を犯した。
「ううっ……うぐぐ……」
 塞がれてもなお口からは涎れが漏れ出してしまう。
 肉壺を犯す指も激しさを増す。
「火斑麗華、火斑麗華、火斑麗華ーーーッ!!」
「ひぃぃぃ……イイィ……ふギィィィィッ!!」
 華艶が白目を剥いた瞬間!
 ブシャァァァァァァーーーッ!!
 股間から大量の潮が噴き出した。
 絶頂を迎えたというのに、苛烈な責苦は終わらなかった。
「まだだ、まだだ火斑麗華ッ、私は君はまだ許してはいないぞ!!」
 肉壺が激しく摩擦され、子宮が突き上げられる。
「ヒィィィィィ……イッ……イイッ……ヒギィィィィィィ!!」
 華艶の躰が激しく暴れた。
 また絶頂を迎えた。
 それでも終わらない。
「イイイイィ……ヒィィィィィ……」
 華艶の声が途絶えた。
 だがまだだま終わらせない。
 鬼畜は肉穴を犯し続けた。
 大きく跳ね続ける華艶の躰。
 やがて――華艶は完全に意識を失った。

《5》

 和風庭園の一角にある池。
 真夏だというのに、その池は水底から凍り付いてしまっていた。
 華艶は氷を足で踏んで割ろうとしたが、ヒビすらも入らず振動だけが足に伝わった。
「別にあたしがやんなくても、重機とか爆弾とかで壊せば?」
 華艶が振り返った先に立っていたのは水鏡だった。
「すでに多くの方法を試したが無駄だった。物理的な衝撃ではひびすらも入らない。唯一有効だったのは熱で氷を溶かすことだったが、それでも並の熱源では逆に冷やされ、少しばかり溶かせたところでまたすぐに凍り付いてしまう」
 そこで華艶の出番というわけなのだろう。
 この場所がどこで、なぜ氷を溶かさなくてはならないのか、華艶はまだ知らされてしない。
 近くには古い日本の屋敷があり、ここが良家であるということと、もう1つ華艶は気づいていた。
「ここあなたの家でしょ?」
「なぜそう思う?」
 水鏡は興味深そうに訊いた。
「だってさっき表札見たもん」
「いかにも、ここは私の実家だ」
「司法取引とか言って、プライベートな依頼するなんて、職権濫用じゃない?」
「私の仕事に関わることなので、決してプライベートなことではない」
 しかし、ここは水鏡の実家なのだという。仕事とどのような関係があるのか?
 華艶は水鏡の言葉を信用していないようすだった。
「ふ~ん、だったらどんな風に仕事と関係あるのか教えてよ」
「それは仕事に関わることだ。言うことはできない」
「あ~やっぱりプライベートなことなんだ。もしかして報酬も税金から出す気じゃないでしょうね?」
「違うと言っているだろう」
「ウソばっか」
 ふふん、と華艶が笑った次の瞬間、水鏡の指が印を結んだ。
 呪符が華艶の首を絞め、声も出せず息すらもできない。
 苦しむ華艶の姿を見ながら、水鏡は鼻で笑っていた。
「無駄口を叩くな」
 解放の印が切られる。
「ゲホッ、ゲホゲホッ!」
 地面に両手を突いて咳き込んだ華艶。絶対に仕返ししてやると心に誓った。
 そのためにも早く仕事を片付け、この忌々しい呪符を解かなくては。
 さっそく華艶は凍り付いた池の真ん中に立った。
「封印解いてよ」
「わかった」
 頷いた水鏡が印を切った瞬間、華艶が手から炎を放った。
「炎翔破![エンショウハ]」
 炎の玉は水鏡の真横を通り過ぎ、華艶はわざとらしく、
「あっ、ごっめ~ん、間違っちゃった」
 悪戯っぽく笑った。
 一方の水鏡は冷たい視線を華艶に送っていた。
「今の一件、殺人未遂で訴えてもいいのだぞ?」
「ごめんなさい、もうしませ~ん」
 と、別に悪びれたふうもなく、気のない返事をしたのがまずかった。
 水鏡のこめかみに青筋が浮いた。
「言葉で言ってもわからないようだな。ならばまた躰に教えてやる」
 印が結ばれ、呪符が服の中に侵入して躰を締め付ける。
 呪符がショーツごと秘裂に食い込み、肉芽や花弁を擦り刺激してくる。
「だめ……そんなにされたら……この変態どーてー! あぁン!!」
 華艶は藻掻き苦しみ氷の上に倒れてしまった。
 花弁の中から蜜が溢れてくる。もう止まらない。溢れ出した蜜は氷の上に垂れ、瞬く間に凍り付いてしまう。恥ずかしい蜜が凍り付き、その場にずっと残ってしまうのだ。
 呪符はまるで蛸の足のように動き、華艶の躰をまさぐる。
 硬く尖った乳首が擦られ、脇の下や膝の裏を呪符が擦りながら通り抜ける。
 太ももに絡みついた呪符が秘所へと伸びていく。
「あふン、だめ……そんなの……挿入[イレ]ないで」
 口では嫌がりながらも、華艶は股の力を抜き、呪符の侵入を受け入れた。
「あぁン!」
 秘奥へと続く道の中で、呪符が蠢いている。何本も何本も入ってくる。幾重ものヒダと呪符が絡み合い、出し入れされるたびに大量の愛液が掻き出される。
「ああああっ、だめぇぇぇぇン!!」
 まるでお腹の中でたくさんの生き物が蠢いているような。次から次へと刺激を押し寄せてくる。
 氷の上だというのに、こんなにも躰が熱い。
 目をとつぶると、躰が舐め回されているいるような気がする。何本もの長い舌が、躰の隅々まで舐め回してくる。
 華艶の意識は朦朧としていた。
 近くには水鏡がいて、全部見られてしまっている。こんな恥ずかしい姿をあんなヤツに見られてるなんて……。
 留置場で陵辱されたあと、復讐を誓ったはずなのに、いざ責められると快楽に堕落しまう。
「もっと……もっと……もっとちょうだあぁぁぁい!」
 ズブズブと侵入してくる呪符を蜜壺が歓喜の涎れを垂らしながら歓迎する。
 愛液で濡れた呪符はまるで長い舌のような触感。
 ヌメヌメと唾液を垂らすように呪符が華艶の躰を這う。
 これは他人の唾液ではなく、自らのいやらしい汁なのだと華艶は思うと、より恥ずかしさと変態行為をしているという意識で、全身はさらに火照り蜜壺から愛液を垂らしてしまう。
 グショグショに濡れた呪符は華艶の口の中にも侵入してきた。
「うぐっ!」
 自らのいやらしい臭いが鼻から抜ける。
 呪符は華艶の舌を犯した。
 いや、それは犯すという一方的な行為ではなかった。
 華艶も自ら舌を動かし、呪符を絡め取るように舐めた。
「ふぐっ、んくぅふんん!」
 呪符はさらに口の奥に侵入し、のどの入り口まで突いてきた。
「うえっ!」
 思わず嗚咽が漏れる。
 自然と目頭から涙が溢れてきた。
 同時に唾液とは異なるヌメっとした粘り気のある涎れが口から漏れてきた。
 まるでローションのようなその涎れを呪符は掬い、華艶の顔や首や耳の後ろに塗りたくった。
 ゾクゾクっと華艶の躰が震える。
「もっと……うぐ……舐めて……んぐっ……」
 首回りや脇の下まで、愛液と涎れを含んだ呪符でグショグショに濡らされる。
 全身が臭い立っている。
 この全身をネチネチと舐めるような行為と、今の水鏡の表情はまさに合致していた。
「悪臭がこちらまで漂ってきそうだ、メス豚め」
 嘲り嗤うその表情。
 水鏡に何を言われても華艶の耳には届いていない。
「ああっ……ンッ……ンッ……うぐぐっ……」
 氷上で弄ばれる華艶。
「きゃっ!」
 片足を高く持ち上げられて、ショーツが剥ぎ取られた。
 さらにあろうことか、そのショーツが口の中に押し込められてしまった。
「うぐっ!」
 呪符とは比べものにならないほど鼻いっぱいに臭いが充満した。
 愛液を舐めるなんてものではない。無理矢理呑まされている感じだった。それほどまでにショーツは愛液を十分に吸っていた。
 呪符は華艶の躰を無理矢理動かし、四つん這いにさせ尻を突き上げさせた。
 ビシッ!
 尻に呪符鞭が打たれた。
「ヒッ!」
 赤く腫れ上がった尻を見て水鏡が言う。
「冷やすならすぐ下に氷があるぞ」
 華艶の意思など関係なく、呪符によって無理矢理M字開脚で尻を氷に押しつけられた。
「ふひっ……冷たひ……ああぁン……あああっ!」
 さらに尻でかき混ぜるように氷の上で動かされ、尻の谷間が引っ張られて肛門まで広げられてしまう。
「そんなにしちゃ……あうっ……ああっ……あっ……ひぃぃっ!」
「少々冷やしすぎたか、では温めやろう」
「ひっ!?」
 短く漏らした華艶は再び四つん這いにされた。
 ビシッ! バシッ!
 呪符鞭でケツを叩かれる。
「あっ……あうっ……あううっ……」
「どうだ? 熱いだろう?」
「ああっ……あああっ……ああああっ!」
 ビシッ! バシッ!
 叩かれるたびにケツが震える。それはまるで『もっともっと』とおねだりしているようだった。
 水鏡は大きく笑いなら呪符鞭を打ち続ける。
「あはははっ、もっと欲しいか、もっと欲しいなら鳴いて懇願しろ!」
「ひゃっ……ひぃっ……ああぁン……そんなこと……言えない」
「まだ反抗心が残っていたのか、驚くに値する」
 快楽に墜ち続ける華艶。だが、また一欠片の理性が残っていたようだ。
 真夏の太陽を浴びながら、無抵抗のまま陵辱される。
 性行為という枠を飛び出し、まさにそれは責苦の光景であったが、華艶は感じてしまっていた。
 一欠片の理性もあと少しで壊れてしまいそうだ。
「ああっ……もう……やめて……あああっ!」
「嘘をつくな、もっと欲しいなら欲しいと言え」
「そんなこと……あああン!」
 尻の谷間を広げられ、丸見えにされたケツ穴を舐めるように呪符で摩られる。
 すぼみがヒクヒクと動く。
「こっちの穴にも欲しいのだろう?」
 水鏡が低い声で訊いてきた。
「ううっ……ああっ……欲しくなんか……あああぁン!」
「我慢はよくないぞ」
「ああっ……ああああっ!」
「どうした、欲しいのだろう?」
「ううっ……うううあああぁン!!」
「さあ、自白したまえ!」
「あああっ……欲しひぃぃぃぃぃッ!!」
 ズブズブズブズブ!!
「ヒギィィィィィーーーッ!!」
 白目を剥いた華艶。
 グチュ! ヌチュ! ズブブ!
 前から後ろから、中を掻き回される。
 穴の粘膜を余すとこなく呪符が舐めてくる。
 子宮を押し上げてくる。
 快感の波が何度も押し寄せ、頭が真っ白になって意識が遠のく。
「はぁ……はぁ……あァァァァァァンンン!!」
 こんな気持ちいいのに、なぜか満たされない。
 まるで不完全燃焼。
 きっと呪符で力が抑えられているせいだ。
 感じるほどに欲求が溜まっていく。
 気が狂いそうだ。
 躰の芯から込み上げてくるものが爆発しそうだ。
 外に、外に出さなくては頭が可笑しくなってしまう。
 熱い、躰が熱くて爆発しそうだ。
「ヒィィィ~!」
 白目を剥いて痙攣する華艶。
 もう限界だった。
 水鏡が鼻で笑った。
「頃合いか……」
 印が切られ、呪符が華艶の躰を解放した。
 業火が辺りを呑み込んだ。
「アアアアアアアアアァァァァァァッ!!」
 絶叫する華艶。
 一気に融解した氷が水蒸気爆発を起こす。
 蒸気が視界を奪い、辺りは乳白色に包まれた。
 どこからか聞こえてくる熱く激しい吐息。
 しかし、辺りの気温は夏とは思えぬほど、急激に下がりはじめていた。
 水蒸気が生き物のように集合する。それは雲となり、やがて巨大な〈氷の結晶〉となった。
 クリスタルのような〈氷の結晶〉は、宙に浮かびながらその場で回転して、まるで辺りの様子を窺っているようだ。
 爆発に巻き込まれて、ようやくその場から立ち上がった水鏡が、中に浮かぶ奇妙な結晶を見て、表情を硬くして口を開いた。
「あれがどこからから来て、池に棲み着いてしまったというわけか。おそらく地霊のようなもで、この場の魔力に引き寄せられたのだと思うが……」
 正体をあぶり出すことはできたが、これからどうするかが問題だ。業火によって〈氷の結晶〉は消滅せず、まだそこに存在している。おそらく意思の疎通もできないだろう。向こうの出方もわからない。
 回転し続けていた〈氷の結晶〉が止まった。
 仕掛けてくると思った水鏡が身構えたが、〈氷の結晶〉が向かったのはまだ涸れた池の底で息をあげている華艶だった。
 投石と化して襲い来る〈氷の結晶〉。
 華艶は気づいているが、疲れ切った躰が言う事を利かない。
 しかし、躰の奥底からは熱い力が漲ってくる。
「華艶鳳凰波!![カエンホウオウハ]」
 甲高い鳴き声をあげて、炎の鳳凰が火の粉を煌めかせながら舞った。
 絵画の世界から飛び出してきたような鳳凰は、威厳と華やかさを纏い艶やかに翼をはためかせる。
 炎の鳳凰と〈氷の結晶〉が激突する!
 一瞬にして水蒸気が世界を包み込んだ。そこに〈氷の結晶〉の姿は見えない。
 しかし、これで終わりとは思えない。
 同じだ。
 一気に温度が奪われ、水蒸気は雲となり、再び〈氷の結晶〉になってしまった。
 この〈氷の結晶〉に弱点はないのか!?
 大地に宿るエレメンツ――地霊は、世界そのものと言っても良い。世界を構成する物質の根源に近い存在を滅ぼすことが華艶にできるのか。
 巡り廻る水の旅。
 雲となり、雨となり、水が溜まりて、また空へと昇り雲となる。
 鼻水を拭いて立ち上がった華艶が身構える。
「焔龍昇華![エンリュウショウカ」」
 渦巻く炎の龍が華艶から放たれ、咆吼をあげながら巨大な口を開けて〈氷の結晶〉を呑み込んだ。
 刹那にして水蒸気と化した〈氷の結晶〉。
 いや、しかしまた〈氷の結晶〉は異様の動きを見せている。
「マジ……もう体力の限界なんだけど」
 切りがない、炎の力ではやはり太刀打ちできないのか!?
 華艶の周りの空気がキンと氷結した。
 驚き眼を剥く華艶。
 指が動かない、それだけではない足すらも動かない。躰が、躰の先から徐々に氷を覆っていく。
「そんなッ!?」
 絶叫した華艶。
 まさか炎術士――〈不死鳥〉の華艶が凍りづけにされようとは!

《6》

「マジ評判落ちて仕事来なくなるし!」
 死活問題だ!
 叫んだ華艶は闘志に火を付け、炎の力を呼び起こす。
 凍り付いていた氷が徐々に、巻き戻しのように溶けていく。
 全身から立ち昇る湯気。
 しかし、凍る力も負けていない。
「しまっ……ゴボッ!」
 華艶の口から吐き出された気泡の塊。
 なんと水の塊が華艶の躰を呑み込んでいたのだ。
「ゴボボボ(窒息)……ボボッ!(する!)」
 水を掻き出そうとするが、流動しながら纏わり付いて離れない。
「ゴボ(死ぬ)ゴボ(マジ)ゴボッ(死ぬ)……ゴボボボッ!(どーてー!)」
 水鏡の名(?)を叫ぶが、その姿はなかった。
 自力で華艶はどうにかするしかない。
 華艶の皮膚から小さな気泡が沸き立つ。やがてそれは大きな泡となり、水全体を沸騰させていく。
 もっと、もっと熱く!
 華艶は秘奥から漲る力を感じた。
 それこそが炎の源。
 決して男子が産まれぬ女系の一族。
 女の秘奥に炎は宿る。
 炎とは生命。
 世界を構成する1つのエレメンツ。
 華艶を覆っていた水が徐々に減っていく。
 だが、華艶は安堵どころか、逆に驚き眼を剥いた。
 水が股間を突き上げ、中に侵入して来たのだ。
 秘奥へ続く道に生命の水が流れ込んでくる。
 炎と水がぶつかり合う。
 激しい衝撃が腹の奥底から込み上げてきた。
「あふぅッ!」
 躰の内で2つの生命が衝突し、爆発して腹を押し上げてくる。
「苦しい……」
 地面に倒れた華艶が何度も何度も跳ね上がる。
「ヒィッ!」
 秘奥が揺さぶられる。
 熱い、躰が熱い。
 苦しさとは裏腹に、快感が全身を包み込む。
 火照った体から蒸気が昇る。
 強大な生命を華艶は内なる宇宙で感じていた。
 力が制御できない。このままでは躰が持たない。相対する力によって華艶の躰は引き裂かれる寸前だった。
「アァァァァァァァァァァァッ!!」
 絶叫が木霊した瞬間、華艶の坩堝から渦巻く炎が天に昇った。
 炎はその姿を不死鳥へと変え、太陽よりも燦然と激しく灼熱の輝きを放った。
 華艶の秘所が間欠泉のように噴水して飛沫をあげた。
 止まることなく噴き上げられる水が陽を浴びて煌めく。
 天に昇った不死鳥が急降下して、華艶の秘所に飛び込んだ。
「ヒャァァァァァァァァンンン!!」
 大きく跳ね上がった華艶の躰。
 力が漲ってくる。
 華艶は力強く立ち上がった。
 宙を見上げると、そこには雲が様子を窺うように蠢いていた。
「今ならイケる!」
 自信に満ちあふれた笑みを口元に浮かべ、華艶は秘奥から漲る力を制御しようとしていた。
 世界を構成するエレメンツを今、華艶は破壊しようとしていた。
 身構える華艶。
「喰らえ、究極の必殺――にゃぬーッ!?」
 あられもない声を上げた華艶。
 宙に浮いていた雲が何かに吸い込まれていく。
 華艶が振り返った先にいたのは水鏡。
 彼の足下に置かれた壺の中に雲が吸い込まれて行くではないか!?
 抵抗すら見せずに雲は小さな壺の中に収まってしまった。
 華艶は訳がわからなかった。
「は? 意味わかんない。もしもしてイイとこ取りされた!?」
「なにが良いとこ取りだ。君がグズグズしているから手を貸したまでだ」
 冷たく言い放つ水鏡。
 華艶はカチンと来た。
「今から華麗に美しく止め刺すとこだったのに!」
「君にそれができたとは思えんがな」
「このどーてー野郎!」
「まだわからんようだな」
 水鏡が印を結ぶと、どこからか現れた呪符が華艶の躰を拘束した。
 驚く華艶。
「えっ、もう仕事は終わったんじゃ……こんなのアリ!?」
「君が仕事を片付けたわけではない。私が片付けたのだ。だからまだ契約は解除されない、私が解放するまでな」
「ズッルーイ!」
 力さえ封じられていなければ丸焦げにしてやるところだ。
 水鏡は壺にふたをして、御札を貼り付け封をした。
「しかし、君の功労は認めよう。起訴はしないであげよう」
「報酬は?」
「先ほども言ったが、仕事を最終的に片付けたのはこの私だ」
「この悪徳検事! 訴えてやる絶対に訴えてやる、てかそのツボ割ってやる!」
 水鏡に飛び掛かる華艶。
 だが、印が結ばれた瞬間、全身をきつく締め上げられ、その場で芋虫のようにされてしまった。
 躰をモジモジさせながら華艶が喚く。
「絶対にそのツボ割ってやる!」
「そんなことさせると思うか?」
「絶対に割ってやる、家中のツボもまとめて割ってやる!」
「……バカか君は?」
 あきれたようすの水鏡。
 華艶は魚のように飛び跳ねながらまだ喚いている。
「ウキーッ! なんなのそのツボ! ツボツボツボーッ、ツボのバカーッ!」
 怒りすぎてもう何を言っているか意味がわからなかった。
 理解できないといったふうに水鏡は溜息を吐いて首を横に振った。
「バカは君のほうだろう。この壺は代々我が家に伝わる魔導具だ。強大な魔力を秘めた物なので、もしやと思って持ってきたら、ごらんの通り地霊は魔力に引き寄せられて壺の中へ」
 さきほど水鏡の推察では、魔力のある池に惹かれ、地霊が棲み着いたとした。つまり、その読み通り、地霊は強い魔力に引き寄せられる特性を持っていたのだ。華艶の秘奥に向かったのも同じ理由だ。
 しかし、華艶にはそんなことどーでもいいことだった。
「この変態早漏童貞野郎! 早く封印解きなさいよ!!」
「……まったく、君は学習能力がなくて困る」
 水鏡は印を結んだ。
 秘奥からの力で高まっている華艶は、躰も敏感になっていた。
「すぐイッっちゃうぅぅぅ!!」
 さらに高まる華艶の鼓動が共鳴を起こした。
 水鏡の持っていた壺が激しく揺れた。
「なにっ!?」
 驚きを隠せない水鏡。
 封じたはずの地霊が暴れている。
 もう腕で抱えても押さえきれない。
 刹那、壺が炸裂した。
「ぐわッ!!」
 大きく吹き飛ばされた水鏡は、そのまま転倒して後頭部を打ち気絶してしまった。
 これによって呪符の緊縛は解かれたが、華艶の前には強敵の〈氷の結晶〉が再び姿を見せた。
「割るって言ったのはちょっとしたジョーダンみたいなもので、お願いだからどこかに消えて欲しいなぁとか……思ったりして」
 たじろぎながら華艶は言った。
 華艶は汗ばんだ拳を握り締めた。
 素早く華艶が構えた。
「炎翔破!」
 ――華艶の声がただ木霊しただけだった。
 炎が出ない!
「マジ……だって童貞検事は気を失って……」
 水鏡の操る緊縛は解かれたが、呪符自体の封印は解かれていなかったのだ。つまり封印を解くには、水鏡検事が意識的に印を切らなくてはいけない。
 その事実に気づいた華艶が叫びながら水鏡に駆け寄る。
「ちょっと起きてよ!」
 水鏡の躰を抱きかかえて揺さぶるが反応がない。
 見る見るうちに華艶の顔が青ざめていく。
「……マジで?」
 ここにいるのはただの女子高生。
 〈氷の結晶〉は静かに宙に浮いて回転している。
 この静けさが逆に危機感を煽る。
 炎の力は使えないが、緊縛は解かれ、それを操る水鏡も気を失っている。
 この状態で最善の作戦は1つ。
「あたし知~らない!」
 逃げ出す華艶!
 沈黙を破る〈氷の結晶〉!
「えっ!?」
 なんと〈氷の結晶〉は液体化して華艶に襲い掛かってきたのだ。
「なんで!?」
 氷の塊を喰らったらひとたまりもないが、だからと言って液体ではまた窒息だ。
 逃げ切れるか華艶!
 〈水〉はまるで蛇のようにうねりながら、華艶の手足を目掛けて飛んできた。
「ひゃっ!」
 〈水〉の触手が華艶の尻を撫でた。
「ヤバイ!」
 華艶の手首を絡め取った〈水〉。ただの水ではないのは百も承知だが、藻掻いても藻掻いても手首から外れない。
 手首に気を取られている間に、足首までも絡め取られてしまった。
「なんなの、あうっ……くすぐったい……あぁン……」
 触手が体中を這う。まるでそれは愛撫するかのようだ。
「あっ……やっ……まさか……ああっ……犯す気!?」
 はじめの戦いでは華艶の息の根を止めようとしていた。だが、今は明らかに弄んでいる。
 敵の狙いはいったい?
 ジュルルルルル!
 触手が乳房をまさぐる。
「だめっ……あっ……くふっ……」
 少しひんやりとした触手に舐められた乳首がピンと勃つ。
 ジュルジュル……ジュルル……
 冷たくやわらかい舌で全身を舐められる感覚。それも何本も何本も、長い舌で舐め回されている。
「ゾクゾクしちゃう……いやっ……気持ちいい!」
 ビクッ、ビクッと躰が震える。
 徐々に躰が火照ってきた。
 奥底が疼き、熱い。
 ビシャァァァァァァーーーッ!
「ひゃあああっ!」
 〈水〉が噴水になって股間目掛けて飛んできた。
「あふっ……あああっ……ひぃぃぃ……お尻と……オマ○コがぁぁぁぁぁ!」
 さらに触手は二つの穴の中に侵入してきた。
「いやっ……お尻まで……苦しい……ああっン!」
 直腸を逆流する〈水〉。
 徐々に下腹部が膨れていく。
「もう……ムリ……ムリだってば!」
 懇願する華艶の口目掛けて触手が襲い掛かってきた。
「うぐっ!?」
 口を塞がれた。
 さらに触手はのどの奥へと強制的に流れ込んでくる。
「ううっ……うぐぐ……ごふっ!」
 限界まで腹は膨れ上がっていた。
 便意と尿意が襲ってくる。
「ごぼぼぼっ……ごふっ……うごごごごごごご!!」
 ジュボボボボボボボボッ!!
 華艶の穴が一斉に〈水〉を噴き出した。
 口からの噴出は止まったが、股間の穴が止まらない。
「ひぃぃぃぃっ……激しい……イギィ……止まって……スゴイよぉぉぉぉぉ!」
 ビシャーーーーーッ!!
 排泄の快感。
 噴射が終わり、躰の中を洗われぐったりと横たわる華艶。
「はぁ……はぁ……ひぃふぅ……全部……出ちゃった」
 〈水〉が再び動き出した。
 渦を巻いた触手が蜜壺の中へと吸いこまれるように挿入っていく。
「うううっ……もう……あああっ……あああン!」
 水流が蜜壺の中で回転している。
「あああああああっ!」
 粘膜を滅茶苦茶に舐め回される。
「すごひぃぃぃ!」
 尻も叩くようにジェット噴射で水流が襲う。
「お尻も気持ひぃぃぃ!」
 渦を巻く触手は吸引力を持ち、乳首を肉芽を吸い上げる。
「あひぃぃぃぃぃぃ!!」
 何本ものミミズにも似た小さな触手が体中を這い回る。
 全身が性感帯と化した。
「キャヒィィィィィ!!」
 このままでは躰が壊されてしまう。
 それでも華艶はされるがまま抗えない。
 〈水〉の一部が〈氷〉と化した。
「ひゃっ!」
 冷たい刺激が乳首を痺れさせた。
「ひぃっ!」
 次は背筋を撫でるように冷たさが伝わった。
 ゾクゾクと身震いする。
 それは冷たさによる震えではなく、快楽の震えだった。
 冷たく硬いそれは背筋を降りると尻の谷間を滑り落ちた。
「まさか……ああっ……だめ……ああン!」
 ぶっとい〈氷〉の棒がケツに突っ込まれた。
「ヒィィィィィッ!」
 冷たい異物をその穴に突っ込まれたのははじめてだった。
 躰の芯から凍りそうになる。
 だが、花芯が熱い。
 もう1本の氷柱が華艶の目の前に現れた。
「太い……そんなの……はひらめぇーーーッ!」
 ズブッ!
 ひと突きにされた。
 そこから何度も何度もピストン運動をはじめる。
 二つの穴を同時に氷柱で犯される。
「ひぃ……ひっ……あああっ、あっ……うひっ……」
 華艶は極太の氷柱を掴んで抜こうとしたが、氷柱を持った手ごと動かされてしまう。
 まるで巨大な男根にしがみついているような格好。
 それは氷の男根。
 本物は熱く膣内を燃やすが、この氷の男根は身を凍らせる。
「死んじゃう……ああっ……もう……あああっ……」
 躰の中から凍っていく。
 全身が凍り付くのも時間の問題だった。
 だが、ただ一カ所、秘奥だけが業火のように熱を帯びていた。
 氷の男根が子宮を突き上げる。
「ううっ、あっ、あっ……ああああっ!」
 熱くて冷たい。
 再び激突する二つのエレメンツ。
 力は力に惹かれ合う。
 華艶の躰に巻かれていた呪符が焦げはじめた。
 そして、ボッと音を立てながら灰と化す。
 刹那、水の竜巻が天高く昇った。
「ヒャアァァァァァァァァァァァッ!!」
 魂の絶叫。
 竜巻だと思っていたものは水龍だった。
 さらにその頂点には先ほど現れたものよりも巨大な翼を持った不死鳥――その姿、命そのもの。
 空を彩る火花。
 雪のように舞い散る炎の花びら。
 不死鳥とは永遠の象徴。
 それは巡り廻るもの。
 水もまた同じ。
 炎も水も命。
 燦然と輝く不死鳥の真下で、華艶は冷たく……息絶えていた。
 水龍と不死鳥が女の宇宙へと飛び込む。
 相反するエレメンツが渦となって華艶の内へと流れ込む。
「あぁぁぁぁぁぁーーーーッ!!」
 魂が再び叫びを上げた。
 震える心臓の鼓動。
 カッと瞳を開いた華艶。
「…………」
 静寂。
「……げほげほっ! 呼吸、呼吸するの忘れてた!!」
 勢いよく立ち上がった華艶は辺りを見回した。
「……どゆこと?」
 すべては治まったあとだった。
 華艶の記憶は完全に抜け落ちていた。
 地霊の姿は跡形もない。
 そして、地面の上でまだ気絶している水鏡。
 華艶は考える。
「逃げるべきか、逃げないべきか……それともヤッちゃう?」
 そーっと華艶は水鏡に近付いた。
「悪徳鬼畜童貞検事にはヒドイ目に遭わされたし」
 だが逃げてもヤッても罪が重くなるだけだ。
 しかし、逃げ切ればいい!
「ここは一端に逃げ通して……お姉ちゃんに助けを求めるって手も。でもお姉ちゃんどこでなにしてるのかわかんないし」
 そうこう考えているうちに水鏡が意識を取り戻しはじめた。
「ううっ、ううう……」
 ぼやける水鏡の視界に移る庭石を持った華艶の姿。
 何事もなかったように華艶は庭石を遠くに放り投げた。
「あはは、元気? 事件は万事解決したから……えっとそういうことで、あたし帰るね」
「……ううっ……帰らせるか……君にはまだ話がある」
 水鏡は印を結んだ。
 しかし、すでに呪符は消失していた。
「クッ、呪符をいつの間に!?」
「もういいじゃん、事件解決したんだし、あたしも晴れて無罪放免。賠償金はしょうがないけど払うから、逮捕歴は付かないってことで、バイバーイ!」
 背を向けて逃げ出そうとした華艶に水鏡が叫ぶ。
「ならば現行犯で逮捕だ」
「は?」
 思わず驚いた華艶は足を止めて振り返ってしまった。
「何の罪で?」
「公然猥褻罪だ。君が全裸であることは疑いようのない事実だ」
「警察でもないのに逮捕だなんて、できるわけないじゃん!」
「残念だが現行犯であれば、警察または検事に直ちに引き渡すことを条件に、逮捕権がない一般人でも行使できる権利なのだよ。さらに付け加えるなら、検察も警察同様、逮捕権や調査権を持っている」
「うっそーっ!」
「残念だったな、再び呪符によって拘束させてもらうぞ!」
 水鏡は新たな呪符を取り出した。
 追い詰められた華艶は咄嗟に叫ぶ。
「訴えてやる、弁護士はお姉ちゃんで!!」
「うっ!」
 水鏡は青い顔をして胸を押さえた。
 かなりグサッと来たらしい。
 動けなくなった水鏡を尻目に華艶が走り出す。
「追っかけて来たらお姉ちゃんに言い付けてやる!!」
 どうにかこの場を逃げ切った華艶。
 ――だがこの数分後、巡回中の警察官に追い回されるハメになったのだった。
 もちろん公然猥褻罪で。

 バーニング少女(完)

▽ あとがく ▽
 多くの諸事情から、EX第2弾はこの作品となりました。
 楽しんでいただけましたでしょうか?

 もう書きたくないです。
 前回のあとがきでも書きましたが、エロって体力使いますよね。
 体力というか命削ってる感じです。

 エロを書いていて「ウォォォォォッ!! 気持ちが高ぶるぜ!!」
 みたいなことはなく、本当に、本当に疲弊していくのです。
 サキュバスのように、作品に吸われていく感じで。

 書いてる真っ最中もエロい気持ちなんてものはなくて、とにかく必死なんです。
 でもこれじゃあ良いエロは書けませんよね。
 やっぱり書いてるときもエロに心を躍らせないと。
 というか今回の作品はエロいのだろうか?

 みなさんにヌイてもらえるように頑張ります。
 ヌイてヌイて、みなさんも精を吸われてしまえばいいと思います。
 作者だけ疲弊するのではなく、みなさんも道連れです。
 エロによる遠隔殺人。

 はぁ、疲れた。

 とにかく疲れたけど、みなさんに楽しんで頂ければ幸いです。
 次回EXもがんばります。


華艶乱舞専用掲示板【別窓】
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