変態
 深夜の公園。
 彼氏に連れられてやってきた翠(みどり)。
「ねえ、ほんとにヤルの?」
「ここまで付いてきて今さらなんだよ」
「だってぇ」
 ――強引に誘ったクセに。
 彼氏に言われたらNOと言えない。そんなところが翠にはあった。
 しんと静まり返った公園には、二人以外の気配がない。
 公園を囲うように埋められた木々が目隠しになって、外と内の世界は隔離されている。
 二人は外灯が照らすベンチまでやって来た。
 ベンチに座らされた翠。
 彼氏は目の前でしゃがみ込んだ。
「股開けよ」
「え~」
 翠は顔を赤らめてスカートの上から股を押さえた。
 彼氏はスカートの中を覗き込んでくる。
「ほら開けよ、もう濡れてんだろ?」
「…………」
 恥ずかしそうに顔を背けた翠は、ゆっくりと太股と開きはじめた。
 なんと翠はノーパンだった!
 しかも、毛が綺麗に剃られている。
 スカートの中は、まさに丸見えだった。
 ぷっくらとした肉まんじゅう。
 それとも2枚重ねのパンケーキだろうか。蕩ける甘い蜜と合わせて食べたら、さぞ美味しいことだろう。
 スカートの中に彼氏の頭が有無を言わさず突っ込んで来た。
 翠は彼氏の頭を押さえつけるが、ホンキじゃない。
「いや、ちょっと……やめてよ」
 言葉だって口だけだ。
 彼氏の舌に割れ目をなぞられ、翠は身体をビクッとさせた。
「あっ」
「いつもより濡れてるな。やっぱおまえ変態の素質あるよ」
「そんなこと……あぅ」
 声も蜜も甘く溢れてしまう。
 遠くから車の走る音が聞こえてきた。
 再び翠は身体をビクッとさせた。今度は驚きと恐怖だ。
「こんなとこで……ひと来ちゃうってば」
「心配すんなよ、来ねぇーよ」
「でも……マンションから丸見えだし」
「もうみんな寝てるから問題ない」
「でもでも、明かり付いてる部屋あるよ?」
「気にしすぎだぞ、これでも付けとけよ」
 そう言って彼氏はポケットから目隠しの太いヒモを取り出した。
 驚く翠。
「えっ、なにそれ?」
「わかってるクセに。こういうのしてみたかったんだろ?」
 視界が奪われる。
 野外でえっちなマネをしているだけでもビクビクしてしまうのに、目隠しなんかされたらさらに恐怖感が高まる。
 だが、翠はそれ以上に興奮が高まっていた。
 視界を閉ざされた分、ほかの感覚が鋭くなる。
 どこから彼氏がやってくるのか?
「ひゃっ」
 翠は短く悲鳴をあげた。
 冷たい!
 腕に冷たいものが触れたのだ。
 翠は戸惑った。
 鎖がぶつかり合う小さな音。
「うそ……でしょ?」
 目隠しをされていても、それが手錠だとわかった。
 両手首にはめられた手錠。両手の自由を奪われただけではない。手錠はベンチと翠を繋いでいたのだ。
 逃げることもできない。
 目隠しを自分で取ることすらも叶わない。
 犯されれば、されるがまま。
 彼氏に腰を掴まれた翠は、両足を少し開いてケツを突き出した体勢にされた。
 スカートがまくられ、夜風に尻が晒される。
 パチン!
「ひゃっん!」
 ケツを叩かれた。
 静かな夜には、声がよく響き渡る。
「だれか来ちゃうってば」
 彼氏からの返事はなかった。
 どこかに行った様子はないのに、気配がない。
「ひとりにしないでよ? ひっ」
 尻をなぞられて翠はつま先立ちをした。
 ガチャガチャと音がして、チャックを下ろす音が聞こえた。
 翠の尻の肉を押してくる硬い棒状のモノ。
 熱い。
 熱せられた鉄の棒のように熱い。
 熱くて硬いモノが、尻の肉を押したりなぞったりしてくる。
 無毛の割れ目からとろりと糸を引きながら蜜が垂れた。
 硬いモノが割れ目に宛がわれた。
 蜜壺の入り口や勃起した肉芽が棒の先端で擦られる。
「んっ……んっ……」
 翠は必死になって声を押し殺した。
 男の角張った手が服の中に入ってきて、胸をわしづかみにされた。パンツだけでなく、ブラもしていなかった。
 Tシャツを押し上げるピンと勃った乳首。
 その胸を服の下で揉みくちゃにされた。
 背中で翠は彼氏の鼓動を感じた。覆い被さって密着しているのがよくわかる。汗ばんでいるのはどちらだろうか。
 半開きになった翠の口から垂れそうになった涎れ。唇と共に吸われた。
 激しいキス。
 食らいつくように唇を奪われ、口に溜まった唾液をすべて吸われた。
 口の涎れは垂れなかったが、下の涎れはもう留まる事を知らず垂れっぱなしだ。
「いれ……て」
 恥ずかしそうに翠は小声で囁いた。
 次の瞬間!
「ああっ!」
 一気に深くまで刺された。
 熱い熱い、そして硬いモノが中に侵入してきた。
 いとも簡単に、ぬるりと奥まで挿入(はい)ってしまった。
 ズン、ズン!
 奥まで激しく突かれ、腰が浮いてしまう。
「あンっ……激しい……もっと優しく……してっ」
 聞こえていないわけがない。目で見ることができなくても、彼氏はそこに感じている。なのに聞く耳をもってもらえない。
 一方的に犯されている。
 いや、本当にそうなのか?
 目隠しの下で瞳はきっと蕩けてしまっている。目の部分は見えなくても、口元が恍惚を浮かべているのがわかる。
 こんな状況で感じている。
 ――やっぱおまえ変態の素質あるよ。
 彼氏の言葉が翠の脳裏にリフレインする。
 変態の自分に酔う。
 気持ちの昂揚が、肉体の快感をより高めてくれる。
「あっ、ああっ……イっちゃいそう……イク……イ……」
 だんだんと声が消え入った翠が、身体を強ばらせて動きを止めた。
 きゅぅっとした。
 中に入った硬いモノを強く締め付ける。
 イってしまった。
 ぐったりとする翠のケツが叩かれた。
「ひっ」
 イったばかりだというのに、ここで肉棒のラッシュ。
 激しいピストン運動で突進してくる。
 彼氏の下腹部と翠の尻肉がぶつかり合いながら、小気味よいリズムを刻む。
 パン! パン!
 翠は自分の中でさらに膨れ上がった男の欲望を感じた。
 ビクッ、ビクッ!
 ぬぽっ!
 中から肉棒が抜かれた瞬間、噴き上げた雄汁が翠のケツにぶちまけられた。
 ドビュっ、ズビュビュっ!
 白く穢された紅潮した柔らかい尻。
 スカートにまでかかってしまっている。
 翠は全身で息をした。
「はぁ、はぁ……」
 ぐったりとして力が入らない。
 そんな翠に思わぬ声がかけられた。
「ちょっとトイレ行ってくる」
「えっ、ウソでしょ!?」
 焦りと驚きで翠は快感の余韻など吹っ飛んでしまった。
 彼氏の気配が遠ざかっていく。
 こんな姿のまま放置された。
 恐怖が湧いてくる。
 翠は耳を研ぎさませた。
 見知らぬひとが来ないだろうか?
 だれかに見られていないだろうか?
 マンションからやっぱり見られてるんじゃないだろうか?
 目隠しをされていて、だれかに遠くから覗かれていてもわからない。
 ――早く帰ってきて。
 願いが届いたのか、ひとの気配がこちらに近付いてきた。
 しかし、翠はすぐに気づいて身を強ばらせた。
 歩いてくる足音が1つではない。
 二人組?
「おい、マジかよ。なんだこの女?」
 知らない男の声。
 あまりの恐怖とパニックで翠はなにも言えなかった。
 見て見ぬふりをして通り過ぎるなら、そんなセリフは言わないだろう。
 とろっとしたものが、翠の股間から零れ落ちた。
 熱い視線を感じるような気がした。
「どう見ても肉便器だろこれ」
「見ろよ、もう使用済みだぜ。俺らも使ってやろうぜ」
 ――なに言ってるの、このひとたち?
 いきなり指が穴の中に入ってきた。
「やめ……!?」
 叫ぼうとした翠の唇が奪われた。
 酒臭い。
 こいつら酔っている。
 チャックを下ろす音がした。
 まさか本当に……。
 グギギギギギィ。
 締まっていた中を無理矢理こじ開けながら、硬く熱い雄のモノが奥へ奥へと挿入ってくる。
 知らない男たちに犯されている。
 身体を中をまさぐられている。
 彼氏がいるのに、知らない男たちに、野外で犯されるなんて……。
 恐怖で翠は抵抗できなかった。
 手錠のせいで逃げることもできない。相手の顔だってわからない。相手は酔った二人組の男。
 下手に抵抗したら、なにをされるかわからない。
 助けを求めて叫んだら、だれか来てくれるだろうか?
 また見知らぬひとに、こんな格好を見られたら。
 ――もう生きていけない。
「あうっ……あン……」
 ――なのにどうして感じているの?
 喘ぎ声が漏れてしまう。
 翠の鼻先にイカ臭さが漂った。
 涎れが垂れる。
 舌を伸ばすとぬるりとした先端に触れた。少ししょっぱい。
 翠は自らしゃぶりついた。
 ――やっぱおまえ変態の素質あるよ。
 涎れを垂らしながら美味しそうに肉棒を頬張る。
 首を上下に振って、さらに腰も尻を振るわせるように動かした。
 野外乱交に翠は酔った。
 いつの間にか服は剥ぎ取られ、野外で全裸を晒されてした。
 見られてしまう。
 隠すものがなにもない。見知らぬひとに全部見られてしまう。
 翠の頭が押さえられ、激しく上下に動かされた。
 口の中に広がる苦い味。
「うっ……顔にかけるぞ!」
 肉棒が口から抜かれ白い液を噴き出した。
 ドビュ、ボビュ!
 顔が熱い。
 きつい臭いが鼻一杯に広がる。
 上唇に垂れてきた汁を翠は舐め取った。
 後ろの穴もラストスパートに入っていた。
「出すぞ、中に出しちまっていいよな」
「やっ……あう……だめ……なかに出さない……ああっ!」
 ズビュビュビュビュビュ!
 中に出されている。
 ドクドクと脈打ちながら肉棒が中で膨張と収縮を小刻みに繰り返している。
 ぬぷっ。
 肉棒が中から抜かれると、蜜の代わりに白い汁がどっぷりと溢れ出てきた。
 どぷっ、どぷっ。
 穴の中から吐き出される穢れた汁。
 割れ目を伝って地面に落ちる。
「俺しょんべんしたくなってきた」
 そう言って男は翠の頬を摘むように掴んだ。
 まさか!?
 翠の開かれた口の中に黄金色の小水が!
 ジョボボボジョボ。
 口の中に溜まりきらなかった小水が、唇の端から溢れる。
 放心状態の翠。
 現実が酷く遠のいている。
 快楽に身を任せ、落ちるところまで墜ちてしまった。
 足音がする。
 また誰かがこっちにやって来る。
 知らない男に犯される。
 あと何人の見知らぬ男に犯されるのだろうか。
 ごぼっ。
 翠の穴から白い汁がまた垂れた。
 手錠が外され、目隠しも外された。
 自由を得ても逃げる気力もない。もう逃げる気もない。
 虚ろな目で翠は目の前にある顔を見た。
 知らない顔は2つ。
 そして、ニヤニヤとする彼氏の顔。
「知らない野郎に犯される気分はどうだった? 感じまくってたんだろ、変態だもんな」
 翠は言葉をすぐに理解できなかった。
 見知らぬ男たち。翠にとってはそうだった。けれど、彼氏にとっては?
「こいつら二人おれの友達なんだ。おまえを犯してくれって頼んだんだよ。そういうプレイしてみたかったんだろ?」
「…………」
 急に翠の身体が熱くなった。その熱は脳天までに達し、ついに爆発した。
「最低! 彼女をなんだと思ってんの!!」
 翠の拳は彼氏の鼻をへし折っていた。
 鼻血を拭いて地面にうずくまる彼氏を置いて、翠はその場から駆け出した。
 ――もうあんな彼とヤッていけない。
 深夜の街中を全裸で駆け抜ける翠。
 前からコンビニの袋を持った若者がやって来た。
 翠は慌てて身体を隠したが、腕と手だけでは隠しきれない。
 驚いた顔をする若者は目を伏せながら、なにも見なかったふりをして小走りで翠の横を通り過ぎていった。
 見知らぬひとに、こんな恥ずかしい姿を見られてしまった。
 ――もう生きていけない。
 しかし、翠の股間からは糸を引きながらとろっとした蜜が零れ落ちたのだった。

 おわり


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