女装への誘い
 校門を出ようとしたところで、タクミはだれかに呼び止められた。
「先輩!」
 振り返ると、そこには後輩の女の子が立っていた。
 ぼーっとしているタクミの手には、いつの間にか手紙が……。
 そして、石けんの香りを残しながら、走り去っていく女の子の後ろ姿。
「…………」
 しばらくしてタクミは事の重大さに気づき、顔を真っ赤にしてその場から逃げるように駆け出した。
 息を切らせながら、周りにひと気がなくなったところで、ゆっくりと歩きながら手紙を開いた。
 手紙の内容は予想を裏切らなかった。
 ――ラブレター。
 腹の底からグッと嬉しさが込み上げてきて、自然と笑みが溢れてしまう。ニヤニヤと。
 後輩の子とは同じ水泳部だった。
 離れたところから眺めていた水着姿のその子は、胸も大きく、体も引き締まっていてスタイル抜群。部活のみんなとも仲が良さそうで、タクミにもよく話しかけてきていた。漏れ聞いた話だと、勉強も得意でまさに才色兼備。
 アイドルともいうべきそんな子が、ラブレターをくれた!
 一方のタクミは特にモテた記憶もなく、告白されたこともなく、告白をしたこともない。だからもちろん、女の子と付き合ったこともなかった。
「ついに俺の時代が来た!」
 今から周りの男子たちの嫉妬視線が目に浮かぶ。
 意気揚々とマンションに帰ってくると、隣の部屋の前にだれかが立っていた。
 同じ高校の制服。
「ニヤニヤして気持ち悪い。なにかいいことあったの?」
 タクミに気づいて声をかけたきたのはアヤカ。
 幼なじみの女の子。
 お隣さんで、高校も同じで、しかもクラスまで同じ。それでも年頃になると、自然と疎遠になって、学校ではお互いを避けていた。
「別になんにもねーよ」
 こうやって会話をするのも久しぶりだった。
「隠さないで言いなさいよ」
「なんだよ、聞きたいのかよ。しゃーねえなぁ」
 本当は言いたくて仕方なかったのだろう。
 なぜか不機嫌そうな顔をしているアヤカのことなど気にせず、溢れる笑顔でタクミは話しはじめた。
「部活の後輩の子に告られちゃってさー、あはは。ついに世間も俺の良さに気づきはじめたっていうの、今までモテモテじゃなかったのが不思議なくらいだよなぁ!」
「ふ~ん」
「その子すっげえカワイイし、お前なんかより巨乳だし、これから独り占めできると思うと……ブフォッ」
 抑えきれない笑いが漏れてしまった。
 アヤカはそっぽを向く。
「貧乳で悪かったですねー」
「気にすんなよ、世の中には貧乳好きもいるからさ。つか、まさかお前彼氏いないの? マジで?」
「今まであんただっていなかったクセに……。別に彼氏とか興味ないし」
「強がんなっ」
 始終笑顔だったタクミは自宅のドアを開けて中に入ろうとした。
 そして、別れを告げようと口を開いた瞬間――。
「引っ越すことになったから」
 アヤカの口から告げられた。
 一瞬、凍り付いたように固まったタクミ。
 唇をきつく縛りながらアヤカがこちらを見つめている。
 居た堪れない沈黙が続いた。
 やっとの思いでタクミは震える口を開けた。
「お前がいなくなってせいせいするよ!」
 タクミは急いで部屋の中に飛び込み、ドアは激しく閉められた。
 残されたアヤカは、もたれるようにドアにおでこを付ける。
 冷たいコンクリートの床を濡らした一滴の雫。

 逃げるように部屋に飛び込んだ。
 だれとも顔を合わせたくなかったが、運悪く掃除をしていた母親と目が合った。
「タッちゃんお帰りなさい」
「……うん」
「アヤちゃんのおうち引っ越すことになったんだって」
「知ってる」
 それ以上話したくなかった。
 タクミは自分の部屋に肩を落としながら入った。
 ドアを閉めると、その場を動けなかった。
 さっきまで彼女ができると有頂天になっていたのに、幼なじみが引っ越すと知って、なにがなんだかわからなくなった。
 気持ちが重く苦しい。
 どうしてこんな気持ちになっているのかも、わからない。
 今だってロクに話さない仲なのに、引っ越したって今の生活には、それほど変化がないはずなのに。
 なんでこんなに心に穴が開いたようで、痛いんだろう。
 彼女ができるって浮かれていたときには、幼なじみの顔なんて微塵も浮かばなかった。
 それが今になって、居なくなると知ってから……。
 タクミは首を横に何度も振って時間を動かした。
「彼女もできて、ハッピーライフが待ってるっていうのに……。あいつのことなんて、どーでもいいよな」
 笑顔をつくったタクミ。つくった笑顔はどこかぎこちない。
 それから着替えをさっさと済ませ、マンガを手に取り読み始め、ベッドに移動してマンガを読み、机に座ってマンガを読み、別のマンガを手に取るが、パラパラとめくってすぐに本棚に返した。
 落ち着かない。
 特に意味もなく部屋を出た。
 ちょうどそこでまた出くわしてしまった母親。
「あっ、タッちゃんちょうどよかったぁ。お醤油買ってきてくれない?」
「は?」
「お母さんめんつゆとお醤油買い間違っちゃって」
「あ、あぁ……」
 呆れた返事をするタクミの視線の先には、裏地が表になっているエプロンが……。
 母親はサイフから1000円札を出してタクミに渡した。
「夕飯の支度があるから早く買って来てね。今夜はホワイトシチューよ」
「醤油使わないんじゃ……じゃ、ちょっと行ってくるから」
 タクミは母親に背を向けて玄関を出た。
 ドアを閉めてから、なんだか溜息が出た。
 気を取り直して歩き出そうと辺りを見回すと、隣の部屋の玄関の前で座っているアヤカがいた。
 なぜかと疑問を覚えたが、さっきのさっきで気まずくて、タクミは見て見ぬ振りをして、その場から急いで逃げたのだった。

 コンビニで漫画雑誌を立ち読みして、たっぷり時間を潰してから醤油を買って帰った。
 自宅のフロアに付くと、遠目に人影が見えた。
 まだアヤカはその場所にいたのだ。
 アヤカはこちらを見ない。
 さすがに気が引けて、タクミは声をかけざるをえなかった。
「なにしてんだよ?」
「カギ忘れた」
「家のカギかよ?」
「悪い?」
「それでそこにずっといんかよ、バカじゃね?」
「うるさいっ、さっさと家ん中入りなさいよ!」
 急に立ち上がって怒鳴ったアヤカは、次の瞬間、頭をふらつかせて足下がもつれた。
 慌ててタクミはアヤカの肩を抱き支えた。
 間近で目が合った。
 顔を紅くしたアヤカはタクミの胸を突き飛ばす。
「きゃっ!」
「わっ!?」
 声を上げてタクミは尻餅をついた。
「いってー、なにすんだよ!」
「ごめん! 痛かった?」
「急に押すなよな」
「だって……」
 さらに顔を紅くしたアヤカは顔を背けた。
 タクミも急に顔を真っ赤にして、お互い顔を背ける結果になった。
 尻のホコリを払いながら立ち上がったタクミは、ドアノブに手をかけながら口を開いた。
「ウチで時間潰してくか?」
「いいの?」
「昔はいつも来てただろ」
「……うん」
 アヤカはうつむいたまま、小さくうなずいた。
 玄関をくぐってからタクミは後悔した。
 女子を家に上げるなんて――と、脳裏に浮かんだのは後輩の顔。告白はされたがまだ付き合ってはいない。それでも女子を家に上げたのがバレたら、気まずい。ましてや、自分の部屋などもってのほかだ。
「タッちゃんお醤油買って来てくれた? あら、アヤちゃん久しぶり」
「お久しぶりです、おばさん。おじゃまします」
 母親に軽く会釈をしたアヤカ。
 家に上げてしまったことを今さら後に退けず、廊下でまた独りにするのも、心苦しかった。
 なんだか母親が嬉しそうに笑っている。それを見たタクミは慌てて口を開いた。
「家のカギがないんだと。それでウチで時間潰せって言ったんだよ」
 醤油を受け取りながら母親は深く二度うなずいた。
「そうなの大変ねぇ。アヤカちゃん今日もお父さん遅いの?」
「はい、たぶん9時過ぎにならないと……」
 と、言ったアヤカの顔をタクミは驚いて見た。
「ずっと外で待ってる気だったのかよ?」
「べつにそういうわけじゃないけど……」
 なんだか気まずそうにアヤカはうつむいた。
 母親が満面の笑みをアヤカに向けた。
「今夜はクリームシチューだから、ウチで夕飯食べていってね。アヤカちゃんも好きだったわよね?」
「はい、ご迷惑でなければ」
「迷惑なんて。昔はしょっちゅうウチで食べてたじゃない」
「はい! おばさんの味がわたしにとってのお母さんの味みたいなものですから」
「あらっ、うれしいこと言ってくれるのね。おばさん張り切っちゃうから、夕飯まで二人で遊んでて」
 ――二人で遊んでて。
 昔なら別に気にもしなかった言葉だが、今は妙にくすぐったい感じで、タクミは思わずアヤカを見つめてしまった。
 すでにタクミの部屋に入ろうとしているアヤカ。
 ハッとしてタクミが口を開くよりも早く、アヤカは部屋に入ってベッドに転がっていた本を見つけてしまっていた。
 エロ本だった。
 タクミは慌てながらアヤカを押しのけて、ダッシュでエロ本を取ってベッドの下に投げ込んだ。
「か、勝手に入んなよ!」
 動揺するタクミにアヤカは意地悪そうな笑みを浮かべた。
「まっ、男の子だもんね。気にしなくてもいいよ」
「友達にもらったんだよ!」
「ふ~ん、そうですか」
「ホントだよ、信じてないだろ!」
「どっちでもいいよ、そんなこと」
 エロ本が部屋にあったこと、そのエロ本をアヤカに見られたことは変わらない。
「ベッド座っていい?」
 尋ねながらアヤカはもうベッドに腰を落としていた。
 タクミはカーペットにあぐらをかいた。
 チラッとタクミがアヤカに視線を向けると、そこには丸いふとももと、中身が見えてしまいそうなスカートの裾が目に飛び込んできた。
 思わずタクミは目を開いてじっと見つめてしまった。
 それに気づいたのか、気づいていないのか、自然な動作でアヤカは内腿に手を置くようにしてスカートを押さえた。
 ここで我に返ったタクミは、急に立ち上がって机に向かって座った。
 もうアヤカから視線を外したのに、胸のドキドキが止まらない。
 幼なじみを異性として意識してしまった。
「ねぇ、なんかしゃべってよ」
 声をかけられてタクミはイスから少し腰を浮かせてしまった。
「マンガとか勝手に読んでろよ」
「ふ~ん、じゃあ勝手にしま~す」
 アヤカに勝手にさせることにして、タクミは机で寝ることにした。
 腕をまくらにして目を閉じていると、物音が聞こえてくる。
 タクミはそっと目を開けてアヤカのほうを盗み見た。
 お尻に食い込みクシュっとした白いパンツ。
 ベッドの下に手を伸ばし、こっちにお尻を突き出しているアヤカの姿。
 一生懸命に手を伸ばしながら、アヤカは体をくねらせ、お尻を振っている。
 タクミは不覚にも勃起してしまった。
 何の言い訳もできない勃起。
 幼なじみのパンツを盗み見ているという罪悪感で、意識すればするほど、股間が痛いほどに膨れ上がってしまう。
 エロ本を取ったアヤカが立ち上がろうとしたとき、慌ててタクミは腕に顔を埋めて寝たふりをした。
 目を閉じると悶々とする。
 脳裏に焼き付いた幼なじみのお尻。
 勃起したチンコをオナニーして鎮めたい。
 そうしないと胸が苦しくて死んでしまいそうだった。
 腕の間からタクミはアヤカを盗み見た。
 少し顔を赤らめながら、アヤカはページをめくっている。
 すぐそこで異性がエロ本を読んでいるという状況に、タクミはついに我慢できず、バレないように股間をズボンの上から触りはじめた。
 少し触りはじめると、もっと激しくしたくなる。
 トントン!
 ドアがノックされて、アヤカとタクミは二人して飛び上がった。
「タッちゃん、ジュース持って来たわよ」
 外から母親が声をかけてきた。
「入っていいよ」
 タクミは勃起していて立ち上がることもできず、返事だけをした。
 コップが2つ乗ったトレイを持って入ってきた母親。
「ここ置くわね」
 アヤカは汗を垂らしながら笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます」
 そのお尻にはエロ本が敷かれている。
 トレイごとカーペットに置かれている飲み物。タクミは取りに行けない。
 アヤカがコップを持って来て、机に置いてくれた。
「はいどうぞ、あとこれ」
 と、ついでに置かれたのはエロ本だった。
「タッ君、こういうの好きなんだ。おっぱい大きいひとばっかり」
「なに読んでんだよ!」
 怒ってエロ本を取り上げたとき、コップが倒れた!
 中身がぶちまけられ、避けようと立ち上がったタクミの股間が濡れた。
 アヤカの視線があらぬ場所を見つめている。
 勃起した股間。
 それに気づいてタクミは股間を押さえた。
「見んなよ!」
「まさか……それって勃起?」
「口に出すなよ、バカじゃねーの!」
「ねぇ、なんで?」
 からかうようにではなく、アヤカは真剣な眼差しで尋ねてきた。
 それにタクミは戸惑ってしまった。
「なんでって……」
 言えるわけがない。
 そんな真剣な眼差しで見つめられても、本当のことを言ったら引かれるに決まってる。
「もしかして、さっきわたしのパンツ見てたことと関係ある?」
 ど真ん中に来た。
 タクミは心臓を抉られた思いだった。
「バ、バカ言ってんじゃねーよ」
「な~んだ、つまんないの」
 プイッとそっぽを向いたアヤカは、そのままベッドに戻りながら、小さくつぶやく。
「そうだったらよかったのに」
「え?」
 驚いて声を漏らしたが、返事はなかった。
 ベッドに腰掛けたアヤカはうつむいている。
 タクミは身を乗り出した。
「今なんて言った?」
「なにも言ってない」
 怒った口調が返ってきた。
「言ったろ、そうだったらなんとかかんとかって」
「言ってない」
「ウソつくなよ。なんでそうだったらいいんだよ」
「……だって……」
 口は動いているが小声で聞き取れない。
「なんだって?」
「だから、だってそうだったらわたしのこと異性として見てくれたってことでしょ!」
 怒りながらアヤカが立ち上がった。
 言葉の意味を瞬時に理解できたタクミは頭を真っ白にさせた。
 ベッドに顔を埋めたアヤカは肩を震わせていた。
 すすり泣く声が心を痛くする。
 タクミはゆっくりとアヤカに近づき、ベッドに腰掛けた。
「引っ越しするんだろ?」
「……うん」
 シーツでくぐもった声が返ってきた。
 もうすぐ会えなくなる。
「いつ引っ越すんだよ?」
「来月」
「そんな早いのかよ。なんで今までお前の気持ち教えてくれなかったんだよ」
「なんでって!」
 怒った表情でアヤカは涙を散らせながら顔を上げ、じっとタクミの瞳を見つめた。
 潤んだ瞳の中にタクミが映り込んでいる。
 思わずタクミは目を逸らした。
「ごめん、俺がもっと早く自分の気持ちに気づいて、お前に伝えてればよかったんだよな」
「今からでも……伝えて」
 目を逸らしていたタクミは、真剣な眼差しでアヤカを見つめ直した。
「アヤカのことが……好き……で悪いかよ」
 顔を真っ赤にして再び顔を背けてしまったタクミに、アヤカは満面の笑みを浮かべて抱きついた。
「わたしも好きだったの。ずっと、ずっと前から……気づいたらタッ君のこと、好きだったの!」
 今度の涙は嬉し涙。
 やっと思いが通じ合った。
 アヤカの手がタクミの太股に置かれた。
「タッ君がイヤじゃなかったら……お願い」
 さらに手は内腿に滑り込んできた。
 タクミはどうしていいのかわからなかった。
「……お願いって……」
「……女の子からそんなこと言ったら引くよね、キライになるよね。ごめん、なにもなかったことにして。あとおばさんに謝って――」
 逃げようと部屋を飛びだそうとしたアヤカの腕を、タクミはぎゅっとつかんで離さなかった。
 そして、タクミはそのまま腕を引っ張って、ベッドにアヤカを押し倒した。
 腕を立ててアヤカの上に乗るタクミ。
「本当にいいのかよ?」
「……うん」
 恥ずかしそうにアヤカは小さくうなずいた。
「本当に本当にいいんだよな?」
「何度も聞かないでよ。それよりタッ君こそ……カワイイ後輩に告白されたんでしょ?」
「まだ返事してないから断るよ。だって俺が好きなのアヤカだけだからな」
「……バカ」
 アヤカを首を横にして目をつぶった。
 待っているアヤカにタクミはなにをしていいかわからなかった。
 とりあえず震える手を伸ばす。
 目に付いた胸に触れると、アヤカは体をビクッとさせた。
「イヤだったか?」
「……イヤ……じゃないけど……いきなり胸だったから」
「ご、ごめん!」
「謝らないで。タッ君の好きなようにして。絶対にタッ君のこと忘れないように、体も全部タッ君の色の染めて欲しいの」
 その言葉を聞いて頬を染めたタクミは、もう自分が抑えられなかった。
 乱暴にアヤカの制服を脱がし、ブラジャーをズラして乳首にしゃぶりついた。
「あン……激しいよ……タッ……くぅン!」
 身悶えるアヤカ。
 タクミはますます欲望を加速させる。
 荒々しい息をするタクミはアヤカのパンツに手を掛けた。
 アヤカは腕で自分の目を隠した。
 構わずタクミはパンツを剥ぎ取った。
 露わになった割れ目はぴったりと閉じている。
 タクミは割れ目に鼻を近づけて、両手で左右に開いて匂いを嗅いだ。
 すでに少し濡れている。
 綺麗な桃色のアソコ。もっと奥は先はさらに鮮やかに淡く桃色をしていた。
 ひくつく入り口から愛液が少しずつ溢れてくる。
 ズボンとトランクスを脱ぎ捨てたタクミは、自らの若気の猛りを握り締め、まだ誰も知らない花園に先端を押し当てた。
「いくぞ?」
「…………」
 アヤカは自分の腕を甘噛みしながら小さくうなずいた。
 ズブッ! グヴッ!
 眉をハの字にしてアヤカは苦しそうだ。
 男根が締め付けられる。痛いくらいに締め付けくるが、温かく柔らかく心地良い。
「大丈夫か?」
「……タッ君」
「ん?」
「キスは?」
 タクミは言われてハッとした。まだキスもしてなかった。恥ずかしい。焦りすぎて気持ちが先に行ってしまっていた。
 タクミはアヤカの唇にそっと触れて、すぐに離した。
 笑顔を浮かべるアヤカ。
「ファーストキスもタッ君とだったよね。でも、幼いときのチューとはぜんぜん違う」
「子供のチューはノーカウントだろ。これがファーストでいいだろ、どっちにしてもアヤカとだけどさ」
 そう言ってタクミはアヤカの唇を奪った。
 今度は激しい。
 お互いの唇を甘噛みしながら、舌を絡ませ、激しい息づかいを相手に聞かれてしまうことも構わず、激しいキスをした。
 タクミはそれと同時にアヤカの胸を愛撫した。
 本人は小さいことを気にしているが、言うほど小さくなく、手にちょうど収まるくらいで持て余さない。張りと弾力があって、指で押すとすぐに押し返してくる。
 指が乳輪をなぞる。小さめの乳輪は薄い色をしていて、指で弾いた乳首は小指の先にも満たないくらい小さかった。
「んっ!」
 アヤカの鼻から漏れる熱い息。
 そのときタクミの手はなだらかなお腹を通り過ぎ、指先は割れ目に侵入していた。
 指先を濡らす愛液。
「ああっ」
 桃色の真珠を探し当てられたアヤカは背筋を伸ばした。
 愛液で優しく磨かれる真珠。硬く尖り、皮が剥かれ大きく膨れ上がる。
 まだ男根は痛いくらいに締め付けられてるが、限界も近かった。
「動くぞ?」
 動かないと、そのまま出てしまいそうだった。
「いいよ、いっぱい動いて。タッ君のこともっと感じたい」
 アヤカは両腕をタクミの背中に回して、できるだけたくさんの肌で温もりを感じようとした。
 ゆっくりとタクミは腰を動かす。
 少し動いただけで、タクミは腰が退けて腹に力を入れた。
「イキそうだ……抜くぞ!」
「ダメ!」
 アヤカは両足をタクミの腰に絡めた。
 男根が膨れ上がる。
「くっ」
 ドクッドクドク……
「ああっ……タッ君のビクビクしてる……いっぱい出て……あぅっ!」
 トントン!
 最悪のタイミングでドアがノックされた。
 アヤカは珠の汗をかいてぐったりとしている。
 慌てたタクミはアヤカを抱いて、いっしょに掛け布団の中に潜った。
 声を殺してやり過ごそうとしたが、お互いの乱れた呼吸が耳について気持ちを焦らす。
 トントン!
 またドアのすぐ外にいる。
「タッちゃん? アヤちゃんもいないのぉ?」
 ガチャ。
 ドアを開けて母親が部屋の中を覗いてきた。
 ベッドの上にある盛り上がった掛け布団。そこにひとが入っているのは明らかだった。
 タクミは終わったと思った。
「あらあら、二人とも寝ちゃったのね。本当に二人とも昔から仲好しさんね」
 優しい口調を残して、部屋のドアが閉められた。
 やっと母親の気配が消えた。
 掛け布団の中で顔を見合わせる二人。
 アヤカがタクミに軽くキスをした。
「危なかったね」
「アウトだろ」
「でもおばさん気づいてないんじゃない?」
「その可能性を信じたい。うちの母さん超鈍感だしな」
「まあ、バレてても親公認ってことで。出来ちゃうかもしれないし」
「…………」
 急にタクミは無言になった。
 慌ててアヤカは少し涙目になった。
「ごめん! 違うの、脅そうとしたんじゃなくて。どうしても中にして欲しかったの、だから気にしないでね、タッ君?」
 タクミは真剣な眼差しでアヤカの髪の毛を撫でた。
「ちょっと離ればなれになるけど、高校卒業したらすぐに追っかけるから!」
「……タッ君」
 お互いの指と指が絡み合い、固く手を繋ぎ結ばれた。
 そして、重なり合った唇が小さく音を鳴らし、アヤカは満面の笑みを浮かべて、大きくうなずいたのだった。

 おわり


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