「ねぇお兄ちゃんったらぁ?」
目の前にやって来た妹から、おれはけだるそうに視線を逸らせた。つもりでも、視線はどうしても見てしまう。
発育のいい胸がTシャツを押し上げ、ツンと浮き出た突起から、ノーブラなのは明らかだ。汗ばんでいるせいで、シャツが肌にくっつき、ラインを強調させている。
まだまだおれの前では子供っぽく振る舞う妹だが、その体は立派な大人になりつつある。
体だけじゃない。匂いも違う。
夏で汗をかきやすくなっているせいもあるかもしれない。このごろ匂いが変わったことを強く感じてしまう。
目のやり場に困り目を逸らしても、近くにいれば匂いがする。
おれは妹から顔を逸らしながら、視線は濡れた腋を見てしまっていた。
Tシャツに染みこんだ腋汗。
――嗅いでみたい。
きっとおれは変態なんだ。そんなこと思うなんて。しかも相手は妹だぞ。
妹に欲情してしまうなんて、人間として終わってる。絶対にそうだ。もしも周りに知られたら、妹に知られたら生きていけない。
「なに見てんの?」
妹がおれの顔を覗き込んだ。
やばい、じろじろ見てしまったのがバレた。
「おまえ腋汗かいてんぞ」
おれはすぐに誤魔化した。
「やだぁ、見ないでよ。暑いんだからしかたないじゃん」
「冷蔵庫にまだアイスあったろ、食ってろよ」
「探してみる」
妹がキッチンに消えたのを見計らって、おれはすばやくリビングを飛び出し自分の部屋に逃げ込んだ。
部屋のドアを閉めて、そのまま背中をもたれ掛かった。
限界だった。
あれ以上、妹と同じ空気を吸える場所にいるのは限界だった。
大量に流れた汗が背中を冷やす。
胸が苦しく鼓動が痛い。
おれの頭の中から妹が出ていかない。
キッチンに小走りで向かう妹。そのお尻をおれは横目で追い続けてしまっていた。ミニスカから覗く生足に顔から飛びつく衝動に駆られてしまった。スカートとまくれてパンツが見えないかと期待してしまった。
おれは末期だ。
でも妹には知られちゃいけない。
その一線だけは、その一線だけは越えちゃいけないんだ。
治まらない。
気持ちが治まらない。
一線を越えるまで、この気持ちは治まらなかったらどうしよう。この気持ちが風化せずに、どんどん大きくなっていったらどうすればいいんだ。
もう限界なのは自分でわかってるんだ。
きっと一線はもう越えてしまってる。それを認めたくないから、もっと先に新たな線を引いたんだ。
おととい、おれは妹のパンツを盗んだ。
洗濯物のカゴに入っていた脱いだあとのパンツを、おれは盗んでしまったんだ。
妹のパンツがなくなった。そんな話を家族から聞いていない。おれが聞いていないだけかもしれない。それともまだ妹が気づいてないのかもしれない。
身が強ばった。
唾を呑んで呼吸をした。
考えただけで絶望的になった。
妹は気づいているけどだれにも言っていない。その可能性を考え、なぜだれにも言わないのかって考えたとき、もしかしたらおれの盗んだのを知っているのかもしれないと考えてしまった。
きっと大丈夫。
悪いことをしたせいで、考え方が悪い方向に向かってるだけだ。
そうだ、タンスの奥に戻しておこう。
バレる前に……もしも無くなってる事に気づいていたとしても、じつはタンスの奥にあって、無くなったって勘違いしただけで済まされるかもしれない。
おれは自分のタンスの中に隠していた妹のパンツを取り出した。
手の中にあるクシュクシュになった妹のパンツ。
一気に鼻に押し当て匂いを嗅いだ。
我慢できなかった。
手放したくない。
もうちょっとだけ楽しみたい。
……だめだ、早く洗って乾かして返さなきゃだめだ。
でも少しだけなら……。
パンツはすでにおれに臭いがこびりついていた。その中に妹の匂いが残ってる。
とくに黄色い染みはまだ強く匂う。
これが最後だと思い、おれはパンツを口に入れて、唾液を含ませた布を音を立てながら吸った。
妹の味がする。
匂いと味。
もっと妹を感じたい。
まだ鮮明に残る妹の後ろ姿。
最後に見た妹の姿。
脚だ。
おれはあの脚が欲しい。
すぐさまズボンごとトランクスを脱ぎ捨てた。
おれの臭いがする。股間からツンと臭ってくる。
ビンビンに勃った先っぽから透明の液が垂れている。すぐにでも手で擦りたかった。一気に出してしまいたかった。
早く気持ちよくなりたい。
それを我慢して、痛いほどに勃起したこれには一切手を触れず、おれは妹のパンツに足を通した。
片足を入れて、もう片足を入れようとした時点で、すごく窮屈に感じられた。
小さいころはいてたブリーフとはぜんぜん違う。ゆとりがない感じで、ピチっとしててはきづらい。おれのサイズに合ってないだけかもしれないが。
太股の辺りまではくと、かなりきつい。
でも本当にきついのは全部はいた時だった。
収まりきらなかった先端が飛び出て、棒がパンツのゴムにぎゅうぎゅう締め付けられてしまっている。玉もぜんぜん収まってない。毛なんてほとんどはみ出てる。
パンツに締め付けられて、もっと勃起した。
はいてるだけで気持ちいい。
興奮する。
自分の変態行為に興奮してしまう。
おれはパンツ以外の服を脱ぎ捨てた。
そして、大きな鏡の前に立って全身を映した。
妹のパンツから出るはずのモノが飛び出している。
じつは盗んだのはパンツだけじゃなかった。ブラもいっしょに盗んでいた。
パンツをはいたらブラも付けてみたくなった。
さっそく隠してあったブラを出してつけることにした。
肩紐に腕をお押し、背中に手を回してホックを掛けようとする。
なかなか掛けられない。
手汗が滲む。
ひとつホックが掛かったと思ったら、まだホックがある。
「……くっそ」
ゴムに引っ張られてなかなか思うようにホックが動かない。
イライラして来たが、ここで気づいた。
ホックを胸に回して。そこで止めてから後ろに戻せばいいんだ。
一度肩紐から腕を抜いて、胸の前でホックを止めると簡単にできた。あとは180度回転させて、腕を肩紐に通すだけだ。
できた。
カップはぜんぜん余裕なのに、背中や腋がかなり締め付けられる。男のほうがガッチリしてて胸囲があるせいだろうな。
鏡に映った自分の姿を見て恥ずかしいとは思わなかった。
とにかく興奮した。
自分の気持ちにおれは気づいた。
はじめは妹の下着に興奮して、妹の下着を犯す気持ちで身につけることに興奮した。
それがだんだんと、女物の下着を身につけること自体に興奮してきた。
男のおれが女物の下着を身につけているという変態行為に興奮してきたのだ。
パンツから飛び出している先端に手を被せた。それだけで気持ちいい。まだ擦ってもいないのに、触っただけで気持ちいい。
今まで感じたことのないほど興奮してる。
擦ったらすぐに出そうだ。
それがもったいなくて、手のひらのくぼみで先端をグリグリと押して刺激した。
腹と手のひらの間で押しつぶされ、こねくり回され、硬くて……熱い。
我慢できない。
出したい出したい。
思いっきりシコりたい。
慌ててティッシュを探したが見つからない。
ベッドの上に転がっていたティッシュ箱に手を伸ばしたとき、部屋がノックされた。
一気に全身が凍り付く。
こっちが返事をしていないのに、ノックの次の瞬間にはドアが開いていた。
妹と目が合った。
お互い固まってしまった。
眼を丸くしたまま妹はなにも言わない。けど眼を離そうともしない。妹は俺の股間をじっと見ている。
すごく長かった。
本当は短い時間だったかもしれない。
とにかく頭が真っ白だった。
にも関わらず、おれは痛いほど勃起したままだった。
そして、口が開かれた――妹から。
「言わないであげる」
他言された身の破滅だ。
けど、妹に見られた時点で死んだも同じ。
動けないおれに妹が近づいてくる。
「パンツ盗んだのやっぱりお兄ちゃんだったんだ」
バレていた。
もう心臓が止まりそうだった。
見られた時点で死んだと思ったのに、死んでもダメージを食らう。
腰が抜けて立っていられなくなり、尻餅をついてしまった。
無様にM字開脚してしまっているおれの股間に、あろうことか妹が生足を伸ばしてきた。
信じられなかった。
足の親指と人指し指の間に、おれの……おれのモノが挟まれた!
「うっ」
自然と変な声が出た。
妹の視線はおれを見下して、口元は軽く笑みを浮かべている。
「変態」
ひどく嫌悪のこもった声で言われた。でも、どこか楽しんでいるようにも聞こえる。
足で踏まれた先端がグリグリと腹に押しつけられる。
妹の足で踏まれている。
いつも眺めるだけだったあの足が、おれのモノを踏んでいる。
おれの汚いモノを踏みつける綺麗な足。
細く伸びる脛はやがてむちむちとした太股になり、さらにそこから視線を先に向けると、丸見えのになかったスカートの中で、白いパンツがこんもりとして足の動きに合わせて動いていた。
妹の大事な部分を隠していたパンツが、今じゃおれにはかれている。
そして、隠しきれないおれのモノは、妹によって甚振られ弄ばれている。
しかも足で。
「イク」
足でイカされてしまう。
妹の足でイカされてしまう。
ドビュッ!
自分の腹と胸にぶちまけられた。
ドクッドクッ……
脈打ちながらまだ先端から溢れている。
その白濁液は妹の足をいやらしく穢した。
「綺麗にして」
妹はおれのモノから足を離すと、なんとその足をおれの顔に向けたのだ。
生足から臭い立ってくる。
おれは変態だった。
ゆっくりと口を開け、たっぷりとホワイトソースの乗った妹の足が……。
おわり