セイラ服(仮称)
 彼はいつ自らの間違えに気づいたのだろうか?

 晴良(はるよし)の自室に戻る途中、ふと足を止めた。
 そこは姉の部屋の前。
 その扉の先に何があるか知らない。興味がなかったわけではない。考えないようにしていただけ。
 今、その秘密の扉は、少し、ほんの少しだけ開かれていた。
 近づかなければ中が覗けないほど、通り過ぎてしまえば何も起きなかった……。
 1度は通り過ぎようとしたのだ。でも、できなかった。
 ほんの少し開かれた扉は、晴良に背徳な想像をさせるに十分だったのだ。
 引き返してきた晴良は手に汗を掻きながら、静かに扉を覗いた。
 姉はいない。知っていた、そうでなければ覗かなかった。
 部屋の中から香る甘い匂い。
 住む者によって、こんなにも匂いに違いがあるのか。女が一人で住む部屋の匂いとは、こんなにも甘いものなのか。
 花の蜜に誘われる蝶と同じ、抗える筈もなく、晴良は姉の部屋に足を踏み入れていた。
 すぐに扉を閉めた。
 躰が震えていた。心臓が震えていた。世界が震えて見える。
 晴良は立ちつくした。
 何がしたいのかわからない。なぜ姉の部屋に入ってしまったのだろう?
 欲望か?
 気持ちばかりが高ぶり、いざ行動となると、自分が何をしたいのかよくわからない。
 ベッドが目に映る。
 迷わず晴良は枕に顔を埋め、鼻いっぱいに匂いを吸い込んだ。
 シャンプーの香、姉が横を通り過ぎるときと同じ香。
 いつも見るのは姉の後ろ姿。正面からはあまり見たことがない。
 晴良の目に壁に掛けていったある物が映った。
 あれは――セーラー服。
 自分でも気づかないうちに、晴良はセーラー服を奪い、その匂いを嗅いだ。
 甘酸っぱい。
 もうこの思いは抑えられない。
 もっと姉と、そう1つになりたい。
 晴良は投げるように服を脱ぎはじめ、姉のセーラー服の袖に腕を通しはじめた。
 肩周りが少し小さく感じたが、着られないこともない。
 スカートをはくか、少し戸惑いを覚えつつも、やはり興奮と欲望は抑えられなかった。
 ウェストはだいぶきつい。元々細身の晴良だが、姉はそれ以上にスタイルがいい。
 あのシルエットに少しでも近づくことができたならば……。
 部屋には姿見があった。
 着替えを済ませた晴良は眼を瞑りながら姿見の前に立った。
 ため息が漏れた。
 姉とは似ても似つかない現実。
 憧れは遠く、手の届かないところにある。
 それでも、嗚呼、それでも少しでも、そう少しでも近づけならば。
 いつも見つめていた姉の後ろ姿。
 何度も抱きつきたいと思った。
 イケナイことだとわかっていても、それでも姉が――好きだった。
 晴良は自分の体を抱きかかえた。
 股間を突き上げる衝動。
 晴良はベッドに飛び込んだ。
 トランクスを脱ぎ捨て、膨れあがった欲望を握る。
 熱い、肉棒がいつもよりも熱い。
 スカートの下にこんな卑猥なモノを生やしている自分に酔った。
 女性のような胸などないのに、まるであるように胸を激しくまさぐる。
 亀頭の先から噴き出すカウパー線液。
 背中を仰け反らせながら晴良は肉棒を激しくシコった。

 ガチャ!

 突然の物音に晴良は血の気が引いた。
 あまりの驚きに、こんな恥ずかしい姿を隠すこともできず、凍り付いて動けなくなってしまった。
 ドアの前で目を丸くしている――姉の姿。
 晴良は慌ててスカートで股間を隠した。
 布に滲むカウパー線液。
 恥ずかしさなんて感じている場合ではなかった。
 すべて終わった。
 今まで築き上げてきた人生が音を立てて崩壊した。
 死にたかった。
 姉は何も言わず近づいてくる。あの匂いを漂わせながら。
 なにもかも見られている。姉は晴良の体を舐めるように見ている。
 股間の肉棒は萎縮しているどころか、なぜか強烈に勃起してしまっていた。
 こんな状況なのに、どうして興奮してしまっているのか、晴良にはわからなかった。
 理性の糸が切れた。
 もうここまで来たら怖いものなどない。
 人生は終わったのだ。
 晴良は姉に襲いかかろうとした。
 だが、晴良は驚いて目を丸くすることになった。
 自分が襲いかかる前に、なんと姉に押し倒されたのだ。
 さらに姉の手が晴良の股間に……。
「いつもこんなことしてたんだ?」
 淫靡な姉の声。
 急に晴良は寒気を感じて冷静になり、震えるように首を横に振った。
「違う……こんなこと……」
「はじめてだって言うの? 嘘でしょう、いつもあたしの服を着て、このベッドでオナってたんでしょう?」
 含み笑いをする姉は魔性そのものだった。
 燃えるように熱い肉棒を握り、ゆっくりと姉の手が動き出す。
 晴良の呼吸が乱れる。
 まるで蜘蛛の巣に囚われたように、逃れられない晴良。手も足も、動けない。されるがまま、姉に襲われている。
 そう、これは姉に犯されているのだ。
 姉の熱い舌が晴良の首筋に這った。
 耳の穴を舐められ、鼻の頭を舐められ、頬や顎を舌が這う。
 姉の息を顔全体で感じる。唇がそこにあるのに、お預けをくらっている。
 奪おうと思えば今すぐにでも姉の唇にしゃぶりつける。だが、心がそれをさせない。これは屈服だ。
 晴良を押し倒して上に乗っている姉は女帝なのだ。
 逆らうことは決して許されない。
 もうすでに晴良は限界だった。噴いてしまう。
 女装をしながら肉棒をシゴかれ、こんな痴態を晒しながら、姉に犯されている。
 そして、無様にも噴いてしまうのだ。
「出る、姉さん……もう……うっ!」
 勢いよく噴き出した白濁液が放物線を描きながら遠くまで迸った。
 それを満足げな瞳で見つめる姉。その艶やかな唇。
 小刻みに震えながら、鈴口からまだ白濁液が噴き出ている。
 ベッドも床のカーペットにも、自分の太腿も穢れてしまった。
 姉が晴良の髪の毛を鷲づかみして、そのままベッドと目と鼻の距離に押しつけた。
 イカ臭い。
 晴良の目の前には自らが放出させた牡汁。たとえ自分のものだとしても、間近で見たいものではなかった。
 姉が笑いながら命令した。
「綺麗にして」
 その言葉を理解するのに時間を要した。
 言葉そのものは理解できた。ただ、そんなありえないことができるはずもなく、なにかの聞き間違いだと無理にでも思おうとした。
 しかし、姉は再び続けるのだ。
「あんたが出したんでしょ。汚いから早く綺麗にして、舌で全部舐めるのよ」
 さすがに躊躇を覚えた。
 だが、姉がそれを許すはずもなく、無理矢理に晴良の顔が白濁液に押しつけられた。
 白濁液は抗う晴良のすぐ口元にへばりついた。
 奴隷が主人に逆らう行為。
 しかし、姉はそれを楽しんだ。
 反抗されても、それを屈服させることができる自身。それがあるからこそ、姉は反抗する晴良を艶やかな瞳で見ているのだ。
「ほら、残らず綺麗にするのよ」
 後頭部を掴まれベッドに顔を押しつけられる。ねじ込むように頭を埋められるのだ。もはや舐めるどうこうの問題ではない。そんなことなど、実際はどうでもよいことなのだ。
 髪を引っ張られたまま晴良の顔が持ち上げられた。
 顔には白濁液がこびり付いている。姉はそれに指先を伸ばし、爪で引っかけるように掬った。
 そして、その穢れた指を晴良の口の中に突っ込んだのだ。
 少し苦く薄塩味。
 この塩味は自らのモノではなく、姉のモノなのかもしれない。
 舌の上を転がる指先。
 晴良はいつの間にか指に貪りついていた。
 指先を舐めるだけでは欲望は満たされず、根本まで口の中に含み、さらに甲に唇と舌を這わせて、腕まで唾液でベトベトにした。
 姉はその間、ペットを見るような目つきで、楽しんでいた。
 おもむろに服を脱ぎはじめる姉。
 ブラ姿に晴良は目を釘付けにされた。
 溢れるような乳房。そこに近づきたい。でも、まだ……。
 晴良の舌は姉の腋を貪った。汗の臭いを鼻いっぱいに吸い込んだあと、ついに胸に移動した。
 顔が埋まった。
 姉は晴良の頭を抱き、強く自分の胸に押しつけた。
 窒息しそうだった。
 それでもいいと思った。
 晴良の頭が潰されるように押し下げられ、鼻先は火照ったショーツの臭いを嗅がされた。
 布1枚を挟んで、姉の秘密がそこにある。
 嗚呼、濡れている。
 ショーツにできた染み。
 晴良は懇願するように上目遣いで姉を見上げた。
 しかし、姉の発した言葉は、
「欲しいの? ふっ、誰があんたなんかと」
 そう言いながらも姉はショーツを脱ぎはじめた。
 目を釘付けにされる。
 瞬きもせず、呼吸もせず、姉の隠された花園を凝視した。
 姉のあそこは綺麗に剃られていた。すべて毛を剃ってしまっているのだ。
 隠されていない。
 今、まだ隠されている。
 肉厚のある恥丘は閉じられているのだ。
 いきり勃つ肉棒が残っていた白濁液を吐き出す。
 姉が眉を寄せて怪訝な表情した。だが、その口は笑っている。
「まさか挿れたいなんて思ってないでしょうね? あんたはこれで十分」
 手に持っていたショーツを晴良の口に突っ込んだ。
 女の臭い。
 肉棒が破裂しそうだ。
 今すぐ出したい。
 姉は晴良を見下した。
「自分ですれば?」
 恥辱の言葉だ。
 しかし、墜ちてしまってもよかった。
 それが自らが求める快楽だと晴良は知っていた。
 肉棒を握りしめ、激しく手を上下させた。
 まるで狂ったように肉棒をシゴく。
 口に姉のショーツを突っ込みながら、無様な姿を見られていることに強烈な興奮を覚えた。
 見ているのは姉だ。
 そう、あの姉に見られている。
 目で犯されているのだ。
 早すぎる……もう出そうだ。
「姉さん! 姉さんイク!」
 マグマが噴き上げた。
 1度出したというのに、その量は尋常ではなかった。
 白濁液は自らの腹に、髪に、顔にまでかかった。
 姉はバスタオルを体に巻いて部屋の外に出ようとしていた。
「シャワーから出てくる前に、全部綺麗にするのよ。でないと殺すから」
 笑いながら姉は部屋を出て行った。
 晴良は急に冷静になってゾッとした。
 立ちこめる牡の臭い。
 萎縮した包茎ペニスの先から、ドロリと白濁液が垂れ流れた。

 おわり


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