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空を覆い尽くす曇天。
獲物を追ってビルの屋上に現れた女子校生。
街を歩くには異様な風貌。
真紅のマスカレードマスクで素顔を隠し、手には床でとぐろを巻く鞭を握っていた。
「追いかけっこは終わりにしようぜ、イカ男さんよッ!」
男らしい口調で怒鳴った彼女の視線の先には男の姿。
「クソッ、ローゼンマスク。組織の裏切り者、失敗作のキサマにオレが負けるハズなどない!」
男の白衣の下で何かが蠢く。それは無数の白い触手だった。
魔導結社M∴R∴(マジカル・ロジカル)が創り出したエクセレント・キメラ・ウェポン、通称EXキメラの〈クラーケン〉。
イカのような吸盤の付いた触手で獲物を絞め殺す人型モンスターだ。
マスクの下で形の良い唇が嘲笑を浮かべた。
「俺様が失敗作だと? 笑わせるな雑魚がッ、俺様がこの手で何匹の怪人を殺戮してきたか、貴様も知らないわけがないだろう?」
「オレを雑魚どもと同じにするな!」
「同じだろう。俺様に殺される運命には変わりない。そう、全ては復讐の為、俺様を化け物に改造したM∴R∴への復讐だ!」
ローゼンマスクはコンクリの床を蹴り上げた。
手に握るは薔薇の鞭――ローズウィップ。
迎え撃つ〈クラーケン〉の両手は無数の触手、まるで鞭だ。
変幻自在の動きで触手が襲い掛かる。
数が多過ぎて逃げ場はない。
否、逃げる必要などない。
薔薇の花びらを舞い散らせながら、ローズウィップが乱舞する。
次々と斬り落とされた触手が異臭を放つ。
〈クラーケン〉は悲痛な叫びをあげてよろめいた。
ローゼンマスクは床でのたうち廻っている〈クラーケン〉に、最期の一撃を喰らわそうとした。
が、その瞬間、大粒の雨がローゼンマスクの頬で四散した。
急に降り出した土砂降りの雨。
放ったローズウィップは〈クラーケン〉の首を落とす筈であった。
「何っ!」
マスクの下で眼を剥くローゼンマスク。
床に落ちていた触手の残骸が意思を持ってローゼンマスクに襲い掛かってきたのだ。
腕に巻き付き、足を拘束し、首をも絞めんとする。
転倒したローゼンマスクを見下す〈クラーケン〉の姿。すでに斬られた触手は再生していた。
「どうやらツキはオレに向いているようだ。残念だったな、雨の中ではオレが最強だ」
「クッ!」
口に巻き付く触手を噛み切ろうとローゼンマスクは歯を立てた。
だが、弾力と硬度を備えた触手は人間の顎では到底、噛み切ることなど不可能だった。
それでも尚、足掻くローゼンマスクの顔面を、触手の強烈な一発が抉るようにぶっ叩いた。
口の中を切り血を吐いたローゼンマスクは、そのまま床に強く後頭部を打ち付けた。
気を失ったのか、ローゼンマスクは身動き一つしない。
動かぬ雌人形の躰を這う触手。
粘液が太腿をべっとりと汚し、そのまま触手はショーツに隠された秘所へと伸びた。
マスクの下で眼がカッと見開かれた。
「やめて!」
悲痛な乙女の叫び。先ほどまでの強気の口調など見る影もない。それは今、犯されようとしている女の叫び。
演技ではない怯える口元。それを見た〈クラーケン〉は陰険に笑った。
「噂には聞いていたが……お前が咲希だな?」
「やめてください、お願いだから……助けて」
「女はそうでなくては楽しくない。ローゼンマスクは気が荒くて困る。それに比べてお前の恐怖は甘美そのもの、たっぷりと可愛がってやるよ」
「イヤーッ!」
触手によってマスクが弾き飛ばされた。晒された美少女の素顔。怯える瞳は曇天の空を見つめていた。
触手は皮膚を包む粘液とは別に、亀頭に似た先端からも粘液を噴き出していた。
まるで大勢の男に犯された後のように、白濁液が咲希の全身にぶちまけられ、雨でも拭い去れない強烈な異臭を放つ。
まだまだこれから、これから咲希は犯されるのだ。
焼けるように熱い触手がショーツの中に潜り込んでくる。
「やめて、そこはダメ!」
叫びなど無意味。
陰唇を舐めるように動く触手。
ぬちゃぬちゃと下品な音が鳴り響く。
紅潮する咲希の肌。興奮からは抗えない。
「ダメ、ダメ、ダメぇン!」
足首に巻き付いた触手が持ち上げられ、咲希の躰が宙に浮いた。
逆さまで宙吊りにされ、両足を広げられてしまった。こんな恥ずかしい格好耐えられない。
ショーツを破る触手。
開かれた股に尖った触手が突き刺さる!
「ヒャッ!」
苦痛のあまり一瞬白目を剥いた。
ドリルのように触手が膣口を押し広げ、ギチギチと膣道にねじ込まれる。
子宮から脳天まで電撃が走ったように咲希は痙攣した。
このまま気を失おうと陵辱は終わらない。
乳を搾るように触手で締め上げられ、尖って三角に変形する乳房。勃起した乳首には亀頭そっくりの触手の先端が押し付けられる。
触手は耳の穴にまで侵入しようとする。鼻の穴とて容赦ない。
だが、口だけは犯されずにいた。
「痛い、痛いから抜いてください!」
咲希の叫び。そうだ、その悲痛な叫びを聴くために口は犯さずにいるのだ。
「イヤッ! もう殺して!」
「飽きたら殺してやるよ」
まだ犯されていない穴が口の他にもあった。
尻の割れ目をナメクジのように這う触手。その先にはヒクつく菊門。
膣道を無理矢理拡張された比ではない。
「ヒィィィヒギィィッ!」
白目を剥いた目尻から雨粒が流れ落ちた。
触手の肉傘が直腸の肉壁を苛烈に擦りながら奥へ奥へと突き進む。
宙吊りにされ、機械的に出し挿れされる二本の触手。
前と後ろを同時に犯され、腹の奥でそれがぶつかり合っているのがわかる。
おぞましい。
「ああっ! ひゃめて……あぁン……おかひくなっちゃうよぉぉぉ!」
すでに気は狂っていた。
「ンぐっ、ひっ、ひぃぃぃ……乱暴に……なのに感じちゃう!」
脳内がシェイクされたように揺れる。
姿形がいくら少女に似ていようと、その躰は人間では決してあり得ないのだった。
肉体を壊すほどの強姦。
無数の触手に嬲られながらも感じてしまう躰。
「イク……イっちゃう……イキたくないのイっちゃう!」
宙吊りにされたまま咲希の躰が跳ねた。
膣から触手が抜かれた瞬間、ジェット噴射のように潮が天高く噴き上がった。
さらに抜かれた触手は、まるで手を放したホースのように暴れ狂い、ザーメンスプリンクラーと化した。
痙攣したまま正気に戻れない咲希の直腸が膨れあがった。
ブジュ、ブジョジョジョッ!
直腸にたっぷりと注ぎ込まれたイカ臭いホワイトソース。
触手が抜かれた菊門は、緩みきって開いたまま閉じようとしない。穴の中を覗くとゴボゴボと白濁液が泡を立てている。
さらに壊れた少女を犯そうと触手が秘所に近づいた時!
「よくも俺様の大事な女に手ぇ出してくれたなッ!」
咲希ではない口調。
ローゼンマスクの手の中に生えたローズウィップ。
刹那にして触手は八つ裂きにされ、血の雨が降り注いだ。
触手から逃れたローゼンマスクは墜ちていたマスクを拾い上げて素顔を隠した。
「じゃあな、イカ男」
すでに手足を切断され、胴体で這っていた〈クラーケン〉の首が飛んだ。
宙に舞う生首を掴んだローゼンマスクは、そのまま首を屋上から投げ捨てた。
地面に激突した頭はまるで割れたスイカのように……。
最期を見届けてローゼンマスクは顔を上げた。
「雨……止みそうもないな」
汚れた街を眺めながらローゼンマスクは呟いた。
殺戮の日々は終わらない。
おわり