第8話「二人の煌めく獅子が交わるとき」
 ズゴォォォォォォォォン!!
 突如、星空から落下して来た帚星が砂浜に激突し、砂塵が噴火したように天高く舞い上がった。
 砂嵐はやがて潮風によって流され、クレーターの中心にある謎の楕円状の物体が姿を見せた。
 楕円状の物体は貝が口を開くように、ゆっくりと天井部を稼働させる。
 その中から人影が立ち上がった。
 月光を浴びて輝く白銀の軽鎧(けいがい)。
 風に靡く白銀の髪の上で小刻みに動く獣の耳。
 自らの長く伸びた尻尾を手元で弄びながら、瑞々しい唇で艶笑を浮かべた。
「薄汚れた空気……まさかこんな辺境の地に〈聖杯〉があるとはな」
 玲瓏な声音がさざ波の音と共に響き渡った。

 休日の朝、女装プラス白銀の髪とネコミミを隠すニットキャップ姿のミケは、とある部屋の前に立っていた。
 ドアが開き玄関から出てきたのは、笑顔のペン子だった。
「おはようございます綾織さん」
「おは、おはよう……(なに慌ててるんだよオレ)」
「なにかご用ですか?」
「いや……そのさ……今日ヒマ?」
 明らかにミケは動揺しているそぶりだった。
 不思議な顔をしてペン子は首を傾げる。
「ひまですけど?」
「あのさ、親父から水族館のタダ券二枚もらったんだけど」
「行きます!」
 即答だった。
 この会話を物陰から聞いていたポチとパン子。
「なぬーッ! あれは明らかに許せん抜け駆けだ」
「ミケ様が、アタシのミケ様が……ペンギンとデートなんて!」
 ポチとパン子は互いに顔を見合わせ、深く頷いて示し合わせた。
 さっそく水族館に出かける二人を追って、地獄の果てまでストーカーしてやる!
 水族館は家族連れやカップルでごった返していた。
 しかもペン子は写メを撮ろうとする人々に囲まれてしまう。ペン子は快く写メに応じるが、その間ミケは不機嫌そうな顔をしていた。
 そして、パン子も人に囲まれていた。
 ポチはというと、今は変装で目立たない格好をしており、耳もニット帽を被って隠している。
「これではペンギンを見失ってしまうではないか」
「下手するとペン子とはぐれそうだな」
「「え?」」
 ニット帽とニットキャップの二人が顔を見合わせた。
 ミケが声を荒げる。
「なんでポチがいんだよ!」
「たまたまだ、たまたまに決まってるだろう!(貴様とペンギンの尾行しているなど言えるか)」
「聞こえてるぞ」
「卑怯だぞその能力!」
「オレだって聴きたくて聞いてるんじゃねーよ!」
 二人が言い合っていると、やっと解放されたペン子がやってきて、遅れてパン子もやってきた。
 ここでペン子とパン子が鉢合わせ。
「おはようございますポチさんと山田さん」
「お、おはよう……(最悪)」
 ばつが悪そうにパン子はあいさつを返した。
 明らかに三人はこの状況を痛いほど把握しているが、のほほ〜んとしたペン子はわかっているのだろうか?
「お二人も水族館に遊びにきたのですか?」
「そうです!」
 ポチ即答。
 ペン子はポチとパン子を見つめて、にっこり微笑んだ。
「ではポチさんと山田さんはデートなのですね」
 このセリフは死の呪文級の攻撃力だった。
 思わずフリーズするポチとパン子。
 数秒してパン子が解凍した。
「勘違いしないで誰がこんなヤツとデートなんか! そっちこそアタシを差し置いてミケ様とデートなんてしないで!」
「う〜ん、言われて見ればデートに見えますねヒナと綾織さん」
 ここでミケがムキになって、
「別にデートなんかじゃねーよ、親父からタダ券もらったから、誰でもよくって」
「だったらアタシを誘ってくださいよー!」
 パン子はミケの肩を持ってブンブン揺さぶった。
 こっちも解凍したポチは、
「(ペンギンと二人っきりにさせんぞエロリック)では、せっかくだから四人で水族館を回ろう」
「それがいいですね」
 笑顔でペン子は同意した。
 仕方がなく四人で水族館を回ることになった。
 いろいろな水槽を見て回っているうちに、いつの間にかミケの横にパン子、ポチの横にペン子という配列になっていた。
「(ふふっ、勝ったなエロリック!)」
 その声を聴いたミケは振り向いて思いっきりポチを睨んでやった。
 やがて四人はペンギンの水槽の前まできた。パン子は軽くスルーしようとしたが、ミケの腕を引っ張っても動かない。仕方がなくペンギンを眺めることにした。
 ペン子はあまり楽しそうな顔をしていなかった。穏やかな表情ではあるが、どこか哀しげな。
「本当は一年に一回しかここにこないのです。特別なその日にだけ、悲しかったり、辛かったり、嬉しかったり、たくさんあったその日の思い出がここにはあるから」
 ペン子の横顔を見つめていたミケは目を伏せた。
「ごめん、誘ったりして」
「いいのです、ぺんぎんさんを見られるのは嬉しいですから」
 二人の間に流れる空気に断ち割って入るパン子。
「ミケ様イルカショーがはじまるらしいですよ。行きましょ行きましょ」
 強引にミケの腕をグイグイ引っ張ってパン子行ってしまった。
 ショースタジアムに続く渡り廊下は橋のように下が空洞になっている。
 パン子は途中で立ち止まって、海のほうを指差した。
「あ、赤い風船が飛んでるー」
 同じ方向を見たミケは殺気のようなものを感じた。 
 シュォーーーーーン!
 衝撃波の音がした刹那、崩れ落ちる渡り廊下。悲鳴があげなら人々が落ちていく。
 ミケはパン子を抱きかかえどうにか無事に着地した。ペン子とポチも無事のようだ。
 しかしほかの人々は瓦礫の下敷きになったり、落ちた衝撃で負傷した者がほとんどだった。
「オレが狙いなのか?」
 ミケはポチに顔を向けた。
「俺はそんな連絡受けていないぞ(通信拒否していたが)」
 不甲斐ないポチには任せておけず、新たな刺客がミケを狙いに来たのかもしれない。
 突如、轟音を立てながら床が割れた。衝撃波が通った道だ。その道はペン子に続いていた。
「きゃっ!」
 ペン子の身体が何十メートルも後方に飛ばされ、道路を走っていた車にぶつかって、さらにそれでも勢いは治まらず、車ごと近くの店に突っ込んだ。
 事故の煽りを受けた車が次々とクラッシュして、辺りは大惨事となった。
 白銀に輝く小柄な影を見たポチは驚愕せずにはいられなかった。
「獅子煌帝(ししこうてい)アレック、どうして貴様がこの星にいるのだッ!」
 煌帝と呼ばれた者はまだ幼い子供だった。
「ほう、暗黒公子ポチではないか。戦線を離脱したと聞いていたが、こんなところで会おうとはな。目的は余と同じか?」
「(同じ目的だと? 奴の目的はいったいなんだ?)」
「違うのか、ではなぜここにいる?」
 ポチがなにかを考える前に、アレックの〈サトリ〉で聞こえてしまったのは、
「(皇帝ということは……まさか、オレと関わりがあるのか)」
 ミケの心の声だった。
 見る見るうちにアレックの表情が増悪に染まり、全身の震えを押さえられずにいた。
「ありえん。そんな偶然が許されてたまるか。そこにいるのは女……いや、まさか、そのアルビノ特有の白い肌と髪、そしてよく見れば緋色の瞳。馬鹿なッ!」
 刹那にしてアレックはミケの懐に入り、そのままミケを押し倒して馬乗りになった。
「この亡霊めッ!」
 叫びながらアレックはミケの帽子を剥ぎ取った。そして、眼を剥いて嗤った。
「クッ、クハハハハハハッ、兄上か、貴様が兄上か、なぜこんなところにいる? 今頃現れて何になるというのだッ!」
 アレックはそのままミケの首を締め上げた。
「くっ……(オレは同族にまで命を狙われてるのかよ)」
 しかしミケを救おうとしたのはワンコ族であった。
 薙がれた大剣を躱すためにアレックがミケを残して飛び退いた。
「ほう、それが噂の狂剣ウルファングか。余の獅子王剣とどちらが強く残酷か試してみるか?」
 アレックが鞘から長剣を抜いたと同時に衝撃波が趨った。
 間合いを詰めることはおろか、躱すことすらできずにポチの胸は血を噴いていた。
 膝から崩れ落ちるポチを見てアレックは嗤った。
「弱すぎる、弱すぎるぞ暗黒公子。だが余の一撃を喰らっても躰が断絶されぬとは、肉体だけは強靱と見える」
「肉体ではない、心が強靱なのだ。俺の本来の目的はエロリックの抹殺だったが、俺がエロリックに憎しみを覚えることはなかった。しかし貴様は違うぞアレック!」
 傷口が開くのも顧みずポチはアレックに斬りかかった。
「貴様はニャー帝国を具現化した悪そのもの、絶対に殺さねばならないのだッ!」
 地球にやって来てからというもの、いつしか平和な飽和状態の中にポチは浸りきっていた。だが、アレックの出現はポチの中に眠っていた憎悪を蘇らせた。
 ポチの渾身の一撃が振り下ろされた。
 ぶつかり合う金属が吼えた。
 刃を交え、その先で視線を合わせる二人。アレックの躰が押されている。
 押しているポチの躰が見る見るうちに変わりつつある。
 しかし、アレックが一気に力を込めて剣ごとポチを押し返した。
「暗黒公子ともあろうものが、下品な戦いをするのだな……超獣化するつもりかッ!」
 ポチの着ていた服が弾け飛び、躰が膨れ上がると共に骨格が変形していく。黒く長い毛が全身を覆い流れ、四つ足の大狼が吠えた。
 ウォォォォォォォン!!
 大狼の巨大さは象ほどもあり、それよりも遙かに俊敏で獰猛だった。
 巨大な鉄球のような大狼の前足がアレックに襲いかかる!
 アレックは突きの構えで迫ってくる足を迎え撃った。
「ぐわッ!」
 強烈な一撃を喰らって弾き飛ばされたアレックだが、その刃は前足を貫通していた。
 首を大きく振りながら吠える大狼。暴れ狂いながら刺さった剣を口に咥えて抜き捨て、さらにその口から地獄の業火を吐いた。
 刹那にして辺りは火の海に沈んだ。
 その海の中から長剣を構えたアレックが飛び出した。
「死ねーッなにぃ!?」
 勢いづいていたアレックの目と鼻の先に現れたミケ。強烈なパンチがアレックの頬を抉った。
 しかし、殴られバランスを崩しながらも、アレックの刃は大狼の肉を深く突き破った。
 剣が刺さったまま大狼がのたうち回る。
 アレックの顔が憎悪に彩られる。
「おのれーッ、心臓を外したではないかッ!」
 だが、心臓に近い位置に剣を突き立てられた大狼は苦しみ藻掻き、やがては床の上で痙攣して躰の自由が利かなくなってしまった。
 アレックは髪の毛を掻き毟った。
「過去の亡霊が今更なぜ黄泉返ったのだ。貴様のせいで、貴様のせいで、余の人生は破滅だーッ!」
「オレがてめぇの人生になにしたってんだよ!」
 互いに素手で殴り合い、腕が交差したと同時に二人揃って頬が抉られた。
 衝撃により後方に飛ばされたアレックは床に手を付き、ミケは躰の側面から床に落ちて転がった。
 ゆっくりと立ち上がったミケは両手を膝について息を切らせている。対照的にアレックは息一つ切らせず嘲り嗤っていた。
「クククッもう体力の限界か? まさか指環(リング)をなくしたのではあるまいな?」
「(リング……オレが親父に拾われたときに持ってた指環(ゆびわ)か)」
「そうだ、そのリングだ。〈サトリ〉の能力を制御し、アルビノである我らに力を与える。なるほどリングを持たぬから貴様の心の声が聞こえたのか」
「そっちからは聞こえて、こっちからは聞こえないわけか。こっちの立場になってわかったけど、最低だなこの能力」
 今までと立場が逆転したミケ。あまり心地の良いものではなかった。
 素早く動いたアレックは離れた場所に落ちていたウルファングを拾い上げた。
「白獅子の血統は余だけで十分!」
 斬りかかってくるアレックをミケは躱そうとするも、思うように脚が動かずもつれてしまった。このままでは斬られてしまうというとき、両手を広げたパン子がアレックの前に立ちはだかった。
「ミケ様は殺させない!」
「どけ女ッ!」
 アレックは重い大剣を両手から片手に持ち替えて、手のひらでパン子の頬を叩き飛ばした。吹っ飛ばされたパン子が道を開け、アレックはそのまま大剣を薙いでミケを斬ろうとした。
 だが、そこにミケの姿はない!?
「もうやめてください」
 ミケを抱きかかえそこに立っていたのはペン子だった。
 ペンギンスーツは汚れ、衝撃波を喰らった背中には小さな亀裂が走り、そこから火花が散っている。
 アレックは正直驚いたようだった。
「生きていたのか〈聖杯〉の宿主」
「ヒナが〈聖杯〉の宿主?」
「知らんのか、貴様の内に封印されているという〈パンドラの箱〉と、その中にあるという〈聖杯〉を? それとも惚けているのか?」
「それはいったいなんなのですか?」
 ペン子の表情を見る限り本当に知らないらしい。それにはアレックも納得したようだ。
「封印のせいか声が聞こえん」
 ミケ同様にアレックにもペン子の心の声が聞こえないらしい。
 ならばとアレックは語りはじめる。
「余の目的は〈聖杯〉の探求。〈聖杯〉とは仮の名で、実際のところはそれがなにかわかってはおらぬ。宇宙法則を覆すほどの強大な力とされているらしいが、詳細は不明だ。
 余はそれを手に入れようと思ったが、封印の解き方がわからぬ。ならばそのような得たいの知れぬ力は人の手に渡る前に破壊するまでのこと。
 兄上、貴様に出会ったのは偶然だ。本当に腹の煮えくりかえる偶然だ」
 すでに床に降ろされていたミケは心の底から自分の運命を呪った。
「偶然のせいでオレは兄弟に命狙われるのか。生まれたときから本当に嫌な運命だな」
 それを聞いたアレックの顔に憎悪が浮かぶ。
「嫌な運命だと? 余の背負わされたモノに比べれば生ぬるい。このような平和呆けした世界で生きてきた貴様など、幸運すぎる」
「てめぇになにがわかるんだよ!」
「貴様こそ余のなにがわかるというのだ。余の苦しみは余にしかわからぬ。誰よりも余の苦しみは過酷なのだ!」
 ペン子が凜として言い放つ。
「苦しみは比べるものでも、比べられるものでもありません」
「貴様に余のなにがわかるのだ。女のくせに腹が立つ、今すぐ斬って捨ててくれる!」
 大剣を構えたアレックの懐にミケは忍び込んだ。
「させるかッ!」
 ミケのアッパーカットが決まった。
 しかし、アレックは狼狽えずに大剣を振るった。
 それをペンギンの羽翼(フリツパー)で受け止めたペン子。だが受けきれずにフリッパーは切断されてしまった。だがもう片方のフリッパーでアレックを叩き飛ばした。
「ごめんなさい!」
 すぐに謝るペン子だったが、彼女のほうが重傷に思われた。片腕が完全に消失していたのだ。
 言葉も出ないミケの視線を感じたペン子は笑った。
「だいじょうぶですよ、この通り」
 ペン子はきぐるみの中に引っ込めていた腕をひょいっと出した。どうやらフリッパーを切断される寸前に腕を引っ込めたらしい。
 しかし、なぜかペン子はすぐに出した腕をきぐるみの中にしまってしまった。
 フリッパーの一撃で何メートルも飛ばされていたアレックは、ゆっくりと立ち上あがると口から血の混ざった唾を吐き捨てた。
「互いに守り合う存在か……余は今、明確な目的を決めた。やはり〈聖杯〉は諦める」
 その言葉を聞いてペン子は表情をやわらかくして、なにか言おうと口を開いたが、さらにアレックは続けた。
「その女を殺すことが兄上を苦しめる方法だとわかったからだーッ!」
 斬りかかって来るアレック。ペン子はその場から逃げないつもりだ。残った腕を広げてアレックを受け止めようとした。
 ミケは体力がもう残っていなかったが、命を削る思いでアレックに飛びかかった。決死の突撃はアレックが躱す隙も与えず、二人はもつれ合いながら床の上を転がった。
 倒れた二人。
 上に乗っていたミケと下にいるアレックが睨み合う。
 が、ここでミケはある違和感を覚えた。
 アレックの軽鎧(けいがい)はニャース族の跳躍力や瞬発力を活かすために、軽く簡単な構造になっているらしく、下半身の装備は極端に少なく、薄い皮や綿などの素材が大部分を占めていた。
 ミケの手はアレックの股間の上に乗っていた。
「ちんこがねぇーーーーーッ!!」
 えっ、ええええええぇぇぇぇ〜〜〜〜ッッ!?
 嫌悪を顔にしたアレックの膝蹴りがミケの股間を直撃した。
「痛ァッ!」
 ミケは飛び上がって股間を押さえながらヨロヨロと後ずさった。
 そして、まだのその生暖かい感触が残る手をモミモミと動かした。
「お、女だったのか……オレの妹かッ!?」
「五月蠅い!」
 大剣を落としていたアレックは素手でミケの顔面を殴り倒し、今度はアレックがミケの上に馬乗りになって、そのまま何度も何度もミケの顔面を殴った。
 すぐにペン子が止めに入ろうとするが、それよりも早くアレックは輝く指環をした手のひらをミケの胸部に押しつけた。
「貴様の力、すべて奪い取ってくれる!」
 指環が目の眩む閃光を放出し、その一瞬、ミケは自分の躰の中に手が侵入してくるような不快感を覚えた。
 実際は手など入っていなかったが、なにかを抜き取られたことは確実だった。
 急激にミケは躰の重さを感じ、指も動かせぬほどの倦怠感と疲労、さらにはまるで肉体が枯れていく感覚がした。目に見える顔のやつれや、目の下に隈も現れていた。
 もう言葉を発することもままならないミケは口を開き、
「な…な……にを……」
「クハハハハハッ、もう貴様にはなにもない。躰を動かす力も、〈サトリ〉さえも失われたのだ。今の貴様にはなんの取り柄も残されていない。生きる価値などないのだ!」
「生きる価値はあります!」
 叫んだのはペン子だった。
 狂気を浮かべたアレックはペン子を睨む。
「あとは貴様だけだ。貴様を殺せば、それで本当に兄上にはなにもない!」
 アレックは大剣を拾い上げ、鬼気を纏いながら飛翔した。
「そうはさせぬぞ――壱・弐・参!」
 紅いマントが翻されアレックを呑み込むほどの光の玉――光氣弾(こうきだん)が放たれた。
 謎の一撃を受けたアレックを尻目にバロンが叫ぶ。
「ひとまず我が息子と逃げるのだッ!」
 ペン子はすぐにミケを抱きかかえたが、そこで戸惑った。
「みなさんを置いてはいけません!」
「あとは我が輩がどうにかする、行け未来ある少女よッ!」
 切迫した状況で、ペン子は心を決めて逃げ出した。
「逃がすかーーーッ!」
 アレックが再びペン子に襲いかかろうとしていた。
 だが、ここでバロンが!
「すまん、忘れ物だ!」
 バロンの手からペン子へ小さな輝きが投げられた。
 それは指環だった。
 ペン子はそれを取ろうとするが、ミケを抱えて逃げることに必死だったので、上手くキャッチできない!
 指環はペン子の頭上を越えて――
「金目の物だーッ!」
 叫んだパンダマンにキャッチされ、そのまま強奪された。
 逃走するパンダマンを追ってペン子もその場から逃げ出したのだった。


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