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第1章005 |
【明日香】「なんで一緒に帰んなきゃいけないの?」 【渉】「まあ、いいじゃん途中まで」 【明日香】「途中までだかんね」 ちょっと前までだったら、絶対途中まででも駄目とか言われそうだな。 なんか、俺と桜井っていい関係になりつつあるのか? もしかしたら、いい関係なのか!? 【渉】「あのさ、デートごっこはもう終わっちゃったわけ?」 急に桜井は足を止めて俺の顔を見た。 【明日香】「まだごっこ遊びしたいの?」 なんだか桜井の表情は怒ってるようだった。 どこだ、どこで俺は桜井の地雷原に足を踏み入れた? ぜんぜん思い当たる節がないんだけど……? もしかして……もうテメェとなんか遊んでられねぇよ、所詮はテメェなんかアタシの遊び道具なんだよ!! ってことなのか? 【渉】「もしかして怒ってる?」 【明日香】「……別に」 【渉】「俺がなんか気に触ることしたか?」 【明日香】「……別に」 うわっ、絶対機嫌悪いよ。 絶対なんかで怒ってるよ。 【渉】「俺のせいで怒ってるのかよ?」 【明日香】「存在自体がウザイ」 ……撃沈。 なぜだ、なぜなんだーっ!! だってさ、祭りの時さ、手まで繋いでさ、花火見てさ、桜井だって楽しそうだったじゃん? 何度目だ、いったいこれで何度目なんだ……いい関係になれたと思ったら、突き放される永遠リピート状態。 毎回毎回いい感じになれたと思ったら、桜井の方から突き放してきてさ。 【渉】「ホントおまえの気持ちわかんねぇよ」 【明日香】「別にわかってくれなくてもいい」 【渉】「俺のこと弄んでるのかよ?」 【明日香】「別にそうじゃないけど……」 【渉】「祭りの時だってさ、俺と手繋いで楽しそうにしてただろ?」 【明日香】「あれはごっこ遊び」 【渉】「俺はごっこ遊びだろうと、桜井と手繋げて恋人同士みたいで楽しかったよ」 【明日香】「じゃあ、ごっこ遊び続ける? 延長料金取るけど?」 鋭い目つきで桜井が俺のことを睨みつけた。 ……俺は挑発されてるのか、誘惑されてるのか? ごっこ遊びでもいいから俺としては桜井と恋人気分に浸りたいけど、今のシチエーション的に断った方がいいような気がする。 だってさ、桜井の機嫌明らかに悪そうだしさ。 だけど、誘惑が……。 【渉】「えっと……あのさ……」 【明日香】「ごっこ遊び続けるならウチ寄ってもいいよ」 【渉】「行きます!」 ……あはは、俺ってサイテーかも。 俺は桜井に負けた。 人として、男として桜井という女に負けた。 【明日香】「じゃ行こ、今日はあたしの部屋に入れてあげる」 そう言って桜井は俺の腕に抱きついて来た。 桜井の表情はもう怒ってない。 つーか、わかんねぇ! さっきまで怒ってて、今はもうケロッとしてやがる。 突き放されては引っ張られ、魔性の女だ!? つーか、仔悪魔だ! そんなことじゃなくって、根本的に桜井の考えてることがわかんねぇ。 桜井が突き放しては引っ張っててのは、別に俺のことを弄んでるとかそういうんじゃなくって、なんか引っかかる感じがするんだよな。 ……だからそれを魔性の女っていうんじゃ? ってわけでもないんだな。 つーか、桜井が男を弄ぶ女じゃないって思いたいだけかもしんないけど。 桜井宅へ2度目の侵入成功! しかも、桜井の部屋にも進入! つ、ついに俺は桜井のプライベートルームに侵入してしまったのだ!! 部屋の色合いは柔らかい感じで女の子の部屋のような気がするけど、部屋が広いせいかもしんないけど、殺伐としてる感じもあるな。 つーか、そんなことよりも、あのベッドで桜井は寝てるのかぁ。 俺もベッドになりてぇ!! とモーソーはここらへんで留めて置かないと大変なことになるな。 そんなわけで現実に戻ったところで、さっきから気になっていたことがひとつ。 【渉】「あのさ、ひとつ聞いてもいいか?」 【明日香】「なに?」 【渉】「この音なに?」 さっきから部屋中に流れているBGMはなに? アップテンポなハードな曲がガンガンにかかってるんだけど。 【明日香】「たぶん奈央が音楽でも聴いてるんでしょ」 【渉】「奈央って誰だよ?」 【明日香】「あたしの兄」 【渉】「女みたいな名前だな」 【明日香】「ホントは女の子が欲しかったんだって。だから兄に女の子の名前つけたらしい」 桜井の兄貴で名前は奈央……どんな野郎か気になる。 つーか、桜井と同じ屋根の下で暮らしてるなんて、将来のお兄様だとしても許せん。 【渉】「桜井の兄貴に会ってみたいんだけど?」 【明日香】「ダメ、絶対にダメ」 【渉】「どうして?」 【明日香】「あんまり家族とかに会わせたくない」 【渉】「写真とかないの?」 【明日香】「写真?」 【渉】「とにかく顔見てみたいんだけど」 【明日香】「……しょーがないなぁ」 部屋の引き出しを開けてガサゴソやりはじめた桜井は、しばらくして一冊のアルバムらしきものを取り出した。 【明日香】「この中にあると思う」 【渉】「どれどれ」 桜井から受け取ったアルバムの1ページ目を開いた。 するとそこには今より少し若い制服姿の桜井が写っていた。 【渉】「これって中学ん時の写真だよな?」 【明日香】「うん」 【渉】「あ、ここに桜井と写ってるの雪乃だろ。見た目も髪型もぜんぜん変わってねぇなあいつは」 俺の知らない頃の桜井を見れるのが楽しくて、俺はどんどんページを捲っていった。 【渉】「これって修学旅行っぽいな?」 【明日香】「うん、修学旅行で京都・奈良に行った時の写真」 【渉】「俺んとこも京都・奈良だっただぜ」 【明日香】「そうなんだ」 【渉】「でさ、奈良で鹿をからかったら鹿の群れに襲われちゃって大変だったんだよ」 【明日香】「ばかじゃないの」 【渉】「どーせ俺は生まれつきバカだよ」 【明日香】「知ってる」 と言って桜井が笑って、俺も桜井につられて笑った。 この雰囲気はいい感じだぞ、頑張れ俺。 【渉】「つーかさ、雪乃と写ってる写真多いよな」 【明日香】「友達って言えるの雪乃くらいしかいなかったから」 ……地雷を踏んだ。 しまった、いい雰囲気を壊すようなことを言ってしまった。 俺のバカバカバカーっ。 【渉】「ほら、こっちに雪乃とかと写ってる写真あるけど、この二人って友達だろ?」 【明日香】「雪乃は結構友達多かった。でも、あたしはこの人たち、別に友達とは思ってなかった」 ……地雷爆発。 俺のバカバカバカーっ。 どうして過ちの二度塗りをするんだよ。 でもさ、普通、同じ写真に楽しそうに写ってたら友達だと思うだろ。 つーか、雪乃の友達なら桜井の友達でもあるだろ普通。 【渉】「でもさ、高校じゃ雪乃以外にも刹那とか真央ちゃんとか、男友達では彰人とか、あと……俺とかさ。まさかこいつらのことは友達じゃないって言わないよな? 一緒に旅行まで行って友達じゃないとは言わないよな?」 【明日香】「たぶん友達。あたし友達ってよくわかんない」 【渉】「は?」 【明日香】「どうしたら友達って呼べるのかわかんない」 【渉】「雪乃は友達だろ?」 【明日香】「友達っていうよりはとっても大切な人。親友って言ったらいいのかもしれないけど、そういうのってなんか恥ずかしいから」 少し顔を赤くした桜井は、はにかんだ顔をして顔を伏せた。 めっちゃ今の桜井って可愛いぞ。 俺に理性という鎖がなかったら押し倒してたところだ。 【渉】「あのさ、桜井にとって俺って友達なのか?」 柄にもなくちょっと真剣な顔をして聞いて見た。 別に桜井に“友達”って言って欲しいわけじゃない。 桜井にとって俺っていったいなんなのか知りたかった。 【明日香】「さあ?」 悪戯な笑みを浮かべて桜井はそう一言だけ言った。 完全にはぐらかされた。 ま、いいか。 友達とか言われたらそれはそれでショックだっただろうし。 それよりもアルバムの続き見よっと。 どんどんページを捲っていくと、若干今までと雰囲気の違うページに行き着いてしまった。 【渉】「……なにこの人たち。つーか、雪乃の格好も変だぞ」 そこに写っていたのは奇々怪々な俺には理解できい人たち。 【渉】「えっと、こういう人たちってゴスロリっていうんだっけ?」 【明日香】「うん」 【渉】「……雪乃の黒しドレス姿……異様に似合ってるっていうか、悪女だ。つーか、そんなことよりも、桜井だけ普通の格好なんだな」 みんながゴスロリしてる中で桜井だけは普通の服で浮きに浮きまくっていた。 【明日香】「こんな格好恥ずかしくってできるわけないじゃん」 一瞬、俺の頭に過ぎる桜井のメイド姿……可愛い。 【渉】「じゃさ、なんでこんなところに桜井がいるわけ? 雪乃に誘われとか?」 つーか、雪乃にこんな趣味があったとは……。 【明日香】「雪乃はこういうの好きには好きなんだけど、あたしがここにいるのは奈央に来いって言われたから」 【渉】「桜井の兄貴に?」 【明日香】「こっちの写真見て、ここに写ってるバンドのメンバーの中にいるのがあたしの兄」 雪乃と桜井と写ってるカッコイイ男たち。 その中で桜井の指を差している人物……これが桜井の兄貴か!! 【渉】「……カッコイイな」 いや、この写真を見る限り、若干化粧をしていると思われる。 つーか、こういうバンドの人たちって厚い薄いいろいろあるけどメイクしてるからな。 そう、実はブサイクってこともあり得る! 桜井がアルバムの次のページを捲った。 【明日香】「ライブのあとに奈央のバンドのメンバーとファミレスに食事に行った時の写真。これが普段の奈央ね」 桜井の指差したとこにいる男。 【渉】「やっぱカッコイイな」 ……なんか男として負けた感じだ。 確かに桜井がこれだけ美形なら兄貴だって美形だよな。 ってことは桜井の両親も美形ってことだよね。 でも、両親の話は触れない方がいいっぽいな。 【渉】「桜井の兄貴ってカッコイイんだな」 【明日香】「そんなでもない。性格ちょー最悪だし」 【渉】「つーかさ、雪乃が常に桜井の兄貴の横をキープして写ってんだけど」 【明日香】「奈央のこと好きみたい」 【渉】「雪乃ってこういうのがタイプなのか……」 【明日香】「観賞用には持ってこいって言ってた」 だんだん俺の中で雪乃ってやつが謎の女になっていく……。 【明日香】「なんだか喉渇いた。渉もジュース飲む?」 【渉】「ああ、もらう」 今日は意地悪されずに飲み物を出してもらえそうだ。 なんか進展って感じ。 【明日香】「ちょっと待ってて……」 部屋を出て行こうとしてドアノブに手を掛けた桜井が急に振り返る。 【明日香】「勝手に部屋いじったら殺すから」 そう言い残して桜井は部屋を出て行った。 ……でも、そんなことを言われると逆に部屋を漁りたくなる。 この部屋のどこかに桜井の下着があると思うだけで、俺の心はトキメク。 でも、さすがに下着を探したりするのはマズイよな。 つーか、そもそも部屋を漁るのはよくない。 人としていけない行為だ……けど、いろんな引き出し開けてみてぇ! でもダメだ。 でも気になる。 でもダメだ。 でも手が勝手にタンスに伸びていくぅ……。 ガチャ! 部屋を開けて入って来た桜井と視線が合う。 ちなみに俺の手はタンスの取っ手にかかっている。 この状況で言い逃れをしようっていうのが無理な話だ。 【渉】「いや、その、ちょっと身体を伸ばしてただけ……」 俺の無理な言い訳を聞いた桜井は、すぐにツカツカと歩いて俺のまん前まで来た。 ヤヴァイ、蹴られる! 【明日香】「はい、ジュース」 あれ、怒られない。 桜井は少し機嫌悪そうな顔をしてるものの、普通に俺にジュースを手渡した。 【渉】「あ、ありがと」 桜井のこの対応が逆に怖かったりして、ジュースを受け取った手がブルブル震える。 【明日香】「男の子だもんね。今回は特別に許したげる。でも、次に不審な行動したら絶交だから」 【渉】「はい、わかりました」 よかった、命の危機はどうにか去ってくれたようだ。 それから俺と桜井は雑談を交わし、どうにか関係は徐々に近づいたように思える。 桜井との会話の最中、俺の視線はあっちこっちを忙しなく動き回り、桜井の部屋を片っ端からチェックしていた。 【明日香】「あたしの話聞いてる?」 なんてことを言われたのもしばしば。 【渉】「ああ、うん、聞いてる聞いてる」 【明日香】「ウソばっか」 【渉】「それよりもさ、浴衣着替えないの?」 【明日香】「あ、忘れてた」 祭りから帰って来てからも桜井はずっと浴衣姿のままだった。 まあ、着替えるヒマがなかったと言えば、俺とずっといたからなかったんだけど。 【明日香】「着替えるから部屋出てて」 【渉】「あ、うん、すぐ出る」 桜井の浴衣姿ともこれでお別れか……着替えないのなんて聞くんじゃなかったかも。 うなじ最高だったんだけどな。 俺は心残りを感じながら桜井に背中を押されて部屋を出された。 廊下の方がやっぱし桜井の兄貴の部屋からガンガンに音漏れしてんな。 つーか、こんなに音出てたら隣の部屋とか上下の階の部屋にも聞こえてるよな。 すんげえ近所迷惑。 廊下に座り込んでしばらく待っていると、桜井の部屋のドアが開いて、桜井が顔だけ出して俺に声を掛けた。 【明日香】「もう入っていいよ」 部屋に入ると当然だけど、桜井はすでに着替えを済ませていた。 しかも、パジャマ姿! ……ヤバイ、いろんなモーソーが頭を駆け巡る。 桜井から目線を外さないと血圧が上がりそうだ。 急いで桜井から目線を逸らした俺の目に飛び込んできたのは、綺麗にたたまれて部屋の隅に置いてる脱ぎたての浴衣だった。 しかも、その浴衣の上にはなにやら他の物体も乗っている? 【明日香】「あ、見ちゃダメ! 隠すの忘れてた!!」 浴衣の上に置いてあったのは桜井の脱ぎたてブラだった。 俺を目にしかと桜井のブラジャーを焼き付けた。 あのブラの映像は決して忘れない。 ブラジャーをすぐさま隠した桜井は少し顔を赤くして恥ずかしそうな表情をした。 【明日香】「渉のえっち」 【渉】「あんな見えるとこに置いとくのが悪いんだろ」 【明日香】「だって……」 って待てよ。 ……ブラがあそこに置いてあったってことは、ノーブラか!! ヤバイ、今なら透視ができそうな気がする(モーソー)。 ああ、桜井の小さな膨らみが……。 【明日香】「さっきからどこ見てんの?」 【渉】「……桜井のこと好きなんだよ」 【明日香】「は?」 我慢の限界だった。 今までだって何度も我慢した。 全部モーソーの中だけで留めてた。 でも、二人っきりのこの部屋で我慢できなかった。 【明日香】「えっ!?」 桜井が目を丸くした次の瞬間、俺の腕は桜井の小さな身体を包み込んでいた。 やっと桜井を俺の胸の中に抱きしめられた。 大きな夢が叶った瞬間だった。 【明日香】「……渉?」 耳元で囁くような桜井の小さな声が胸に突き刺さる。 桜井に殴られたり蹴られたりするかと思ったけど、そんなことはなかった。 桜井は俺の腕の中でじっとしていた。 鼓動が高まり、抱きしめてるのは自分なのに、息が詰まって死にそうだった。 もうここからは歯止めが利かなかった。 頭よりも本能が先走って、身体が勝手に動いちまって、気づいた時には桜井をベッドの上に押し倒していた。 桜井と目が合った……。 そして、桜井の唇に吸い込まれるようにして、俺の顔が桜井の顔と重なる瞬間! ドゴッ!! マックス状態だった股間への膝蹴り……ぐぐっ……ううっ……。 あまりの衝撃の俺は声すら出せずに、股間を押えて床の上に寝転んで動きを止めた。 【明日香】「…………」 すぐ横に立って俺を見下す桜井の表情は怒りではなかった。 桜井は哀しそうな顔をして俺を見ていた。 けれどそんな桜井の表情もすぐに怒りへと変わって怒鳴り声を上げられた。 【明日香】「出てって……早く出てってよ!」 部屋のドアを指差す桜井。 俺は命じられるままにドアの外に出るしかなかった。 桜井の部屋を走って出て、さよならも言わずにマンションの部屋を後にした。 祭りの後だってのに、とても静かな夜を走って俺は家に帰った……。 あの祭りのあった夜以来、俺の気分は沈みっぱなしで夏休みだっていうのに、ずっと部屋に引きこもっていた。 なんであんなことしちまったんだろうと思っても、後悔先に立たずとはよく言ったもんだと思う。 どこで俺は選択肢を間違えたのか? 桜井はごっこ遊びとか言ってたけど、祭りはいい感じだった。 花火見てる時もいつの間にか手を握ってていい感じだった。 問題は帰り道からか? いや、桜井の部屋に入ってからか? そう言えば、帰り道の時点で桜井の機嫌が悪かったような……。 でも、そのあとすぐに機嫌なおったよな……なんで? よ〜し、回想モードに突入して、あの帰り道の時のことを思い出すんだ自分。 【渉】「あのさ、デートごっこはもう終わっちゃったわけ?」 ってところから桜井の機嫌が悪くなったような気がする。 【明日香】「まだごっこ遊びしたいの?」 【渉】「もしかして怒ってる?」 【明日香】「……別に」 【渉】「俺がなんか気に触ることしたか?」 【明日香】「……別に」 ここで桜井の表情って怒ってたような気もしたけど、うつむいてなにかを考えるような素振りも見せてたよな。 【渉】「俺のせいで怒ってるのかよ?」 【明日香】「存在自体がウザイ」 ここで桜井キレモードで俺が撃沈したわけで……。 【渉】「ホントおまえの気持ちわかんねぇよ」 【明日香】「別にわかってくれなくてもいい」 今になって思うと、関係が深くなりそうになると桜井って自分の周りに壁を造るんだよな。 ある一定のラインに到達すると相手を突き放す態度取ってさ。 【渉】「俺のこと弄んでるのかよ?」 【明日香】「別にそうじゃないけど……」 【渉】「祭りの時だってさ、俺と手繋いで楽しそうにしてただろ?」 【明日香】「あれはごっこ遊び」 【渉】「俺はごっこ遊びだろうと、桜井と手繋げて恋人同士みたいで楽しかったよ」 【明日香】「じゃあ、ごっこ遊び続ける? 延長料金取るけど?」 ここで桜井が俺のこと睨み付けたんだよな。 【渉】「えっと……あのさ……」 【明日香】「ごっこ遊び続けるならウチ寄ってもいいよ」 【渉】「行きます!」 ここか!! ここの選択肢が間違ってたのか!? いや、でもここからいきなり桜井の態度がケロッとした態度になって、怒ってた桜井なんてどこ行ったんだよって感じだったよな。 【明日香】「じゃ行こ、今日はあたしの部屋に入れてあげる」 そう言って桜井は俺の腕に抱きついて来て……。 ……やっぱわかんねぇ!! これと同じ回想を何度したことか……。 それでもやっぱわかんねぇ! よし、次の回想に行くぞ。 桜井の部屋でアルバム見たり、雑談したりしてた時は和やかな感じでよかったと思う。 でも、やっぱあそこだよな。 【明日香】「さっきからどこ見てんの?」 【渉】「……桜井のこと好きなんだよ」 この時点で俺の頭ん中は桜井のカラダのことだけだったかもしれない。 【明日香】「は?」 とにかく桜井を自分のモノにしたくて、気づいたら桜井のこと抱きしめてて……。 【明日香】「えっ!?」 すごく心地よかった。 【明日香】「……渉?」 ……ここで桜井の声質って驚いた声だったのかもしれない。 でも、あの時は耳元で囁かれて、下半身が押えられなくて、好きな女とエッチしたいってことばっかりで、理性なんて吹っ飛んで……。 で、キスを迫って股間蹴られた。 あとになってみれば、とんでもないことしたと思う。 だってさ、よく考えるまでもなく俺たちって付き合ってたわけでもないし、桜井の気持ちを直接聞いたわけじゃなかった。 順序が間違ってたよな。 互いが好きだってこと確認して、付き合って、キスしてエッチして……。 ってその最終目標がエッチしてってのがそもそも間違いなのかも。 桜井のカラダばっかり求めて、カラダの繋がりを求めようとしてたのがダメだったのかな。 でも、結局のとこは俺の頭ん中だけのシミュレーションだけで、桜井の意見なんてぜんぜん聞いてないもんな。 もう、わかんねぇよ!! ……はぁ、ダメだ。 なんど回想しても答えがでない。 つーか、やっぱ桜井に会って話した方がいいのか……? チャンスは今日なんだよな。 学校で実行委員の集まりがあるんだけど、桜井が来るのか来ないのか? 俺と顔合わせたくないよな普通は。 来ないよな、普通は来ないよ。 ベッドに横になって天井を見上げた。 この繰り返しが何度続けば終わるんだろう。 ふと、枕元に置いてあったケータイに目が行く。 実は桜井の番号だけ聞けてない。 彰人の番号は知ってて当然だし、雪乃は雪乃から教えてもらったし、真央の番号は俺から聞いて、嬢王様は担任だから知ってるし、刹那はもともとケータイ持ってない。 ……桜井だけ知らないだよな。 こういう時ケータイがあれば連絡付くし、メールって手もあるし。 でも、やっぱメールとかよりも直接会って話した方がいいんだろうな。 雪乃にヘルプを出すって手もあるけど、そういう姑息な手段で桜井に嫌われるって可能性もあるしな。 いくら考えてもダメな時は行動あるのみ!! って気力も今はもうない。 ケータイの着信音が鳴った。 ディスプレーを見ると神楽雪乃って表示してあって、すぐに俺は電話に出た。 【雪乃】《ちゃんと起きてたかしら?》 【渉】「ちゃんと起きてたよ」 【雪乃】《夏休みだからって昼過ぎまで寝てるかなって思ったんだけど。でも、それにしては眠そうな声してるけど?》 眠いんじゃなくって沈んでるんだよ。 【渉】「ちょっと疲れてるだけ」 【雪乃】《夜更かししてたんでしょ? 夜更かしなんてよくないわよ》 だから違うって。 【渉】「そんなこと別にどうでもいいだろ。つーか、なんで電話かけてきたんだよ?」 【雪乃】《今日、実行委員の集まりがあるの覚えてる?》 【渉】「そんなこと覚えてるよ」 【雪乃】《覚えてなかったら教えてあげないといけないし、寝たたら起こしてあげないといけないから》 【渉】「それだけの用かよ」 【雪乃】《いちよう私がみんなの連絡役だから。じゃあ、今日は遅刻しないで来るのよ》 【渉】「ちょっと待った、聞きたいことがある」 聞きたいことっていうのはもちろん桜井のことだ。 俺と桜井を繋ぐものとして雪乃の存在は大きい。 【雪乃】《なにかしら?》 【渉】「桜井のことなんだけど」 【雪乃】「明日香のこと?」 【渉】「俺のことなんか言ってなかったか?」 【雪乃】「別になにも聞いていないけど、明日香となにかあったの?」 【渉】「いや、いいんだなにも聞いてなかったら」 【雪乃】《明日香となにかあったのね。昨日明日香と会ったけど、いつもと変わらないような気がしたけど……あの子は演技をすれば演技も上手いから》 【渉】「いいんだよ別に……。今日は遅刻しないで行くから、じゃあな」 【雪乃】《私はいつでも麻生君の味方よ。じゃあ、遅刻しないで来るのよ》 通話を切ってケータイをベッドの上に放り投げる。 ケータイがベッドの上で一回ジャンプして床に落ちた。 ……落ちやがった。 ついてない感じだな。 【渉】「よし!」 俺はベッドから跳ね起きてケータイを拾った。 まあとにかく着替えて学校行くとすっか。 電車に揺られながら学校に向かう。 気分はかなりウツ。 桜井と顔を合わせたくないのは俺の方かもしれない。 つーか、どんな面下げて桜井に会えばいんだよ。 窓の外を眺めてもちっとも気分は晴れない。 しかも、追い討ちをかけるように曇りだし。 途中の駅で電車が停車しようとする。 【渉】「……あっ!」 思わず口に出してしまった。 ホームに立ってるの桜井じゃんか!! ヤバイ、実にヤバイ。 電車が止まり、桜井は俺の乗ってる一つ前の車両に乗った。 危なかった、同じ車両に乗り合わせたらヤバかったよな。 平日のこんな時間じゃ車内ガラガラで絶対顔合わせるもんな。 ここで俺は選択をしなければならない、桜井の乗ってる車両にわざわざ行くか、それともこのまま知らん振りするか……。 行くべきか行かざるべきか。 ここで桜井のとこ行ったらある意味二人っきりで気まずいよな。 周りに彰人とか雪乃とかいてくれれば少しは状況が楽なんだが……。 よし、決めた! 1.やっぱ行けねぇ!――※005_1へ 2.桜井のところに行く――※005_2へ |
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