刹那編004
【渉】「そんじゃ俺は駅前を探してみるわ」
【彰人】「俺はアーケード街を探してくる」
【渉】「じゃあな」
【彰人】「ああ」
 俺は彰人を分かれて駅前に向かうことにした。

※※※001

■■■b005 駅前(表示)〈リピート〉
●●●SE054 駅前(ざわめき)
 駅ビルの前まで来たけど、いつもどおりにしか見えない。平凡すぎる。
 ショッピングを楽しむ人々や往来するバスやタクシーに、炎上する車かぁ。
 なんら変わらない日常の風景だ。
 …………ん?
 今、非日常的な風景を見たような気がしたんだけど。
●●●SE007 ガ〜ン!(ガ〜ン!ショック。)
 あぁぁぁぁぁっっっ!!
 車が炎上してるし!
 しかも、近くにB刹那と桜井いるし!
 なんてこったい!!
 ダッシュで駆け寄らなければ!
■■■A000 明日香・制服(表示)
■■■A011 B刹那・制服(表示)〈明日香と並べて表示〉
【B刹那】「猫の救出に成功した」
【明日香】「それはいいけど……」
 桜井は横目ちらりと炎上する車体を見て、B刹那の抱いている仔猫に視線を向ける。
●●●SE016 猫の鳴き声(にゃ〜ん♪)
【明日香】「この子が助かったのはいいけど」
 難しい表情をして、顔を上げた桜井と俺の視線が合った。
【明日香】「あ、麻生」
【渉】「あ、じゃねえよ、なんで車が燃え上がっちゃってるんだよ?」
【明日香】「この刹那が車にひかれそうになったこの子を助けたら……」
 助けたら……で、なんで車が炎上すんだよ。
 だって、ちょっと待てよ、燃えてる車はビルとかに突っ込んでるわけでもなく、横断歩道のど真ん中で燃えてるぞ。
 フロントがひしゃげてるけど、なにぶつかって燃えたんだよ?
 俺は視線をゆっくりと仔猫を抱いているB刹那に向けた。
 ――んわけないな。
 荒唐無稽な発想をするところだった。
 いや、でも、こいつ……学校の4階から……あはは、まさか。
●●●SE016 猫の鳴き声(にゃ〜ん♪)
【明日香】「この猫、首輪付けてないから野良猫かな?」
【B刹那】「俺の分析によると、雑種ではなくロシアンブルーという種の猫のようだ」
 ブルーがかった毛色を持つ仔猫はどこか上品さを兼ね備えていたが、見た目はゲッソリと痩せてしまっていて、餓死寸前って感じだ。
【明日香】「ウチで飼ってあげたいけど、ウチのマンションペット禁制だから」
【B刹那】「俺も答えはノーだ。マスターが極度の猫アレルギーを持っている」
 明日香の瞳が俺のことを見つめた。
 ヤヴァイ、その瞳可愛すぎる……悩殺せれそうだ。これで何百回目の悩殺だろうか。
【明日香】「じゃあ、麻生が飼ってあげて」
【渉】「はっ、俺?」
【B刹那】「可愛がってあげるといい」
 B刹那から仔猫を渡され、反射的に俺は受け取ってしまった。くれるものはなんでも貰うという反射神経が働いてしまった。貧乏人の悪いクセだ。
●●●SE016 猫の鳴き声(にゃ〜ん♪)
【明日香】「その子も麻生のこと気に入ったみたい。よかったね」
【渉】「よか、ねーよ」
【明日香】「その子を見捨てる気? 麻生って血も涙もないサイテーな人なんだ」
【渉】「そーゆー問題じゃなくてだな、俺がどうして?」
【明日香】「どーしても、こーしてもじゃなくて、飼うの飼わないの?」
 上目遣いで桜井が俺に迫る。
 YESかNOか、その他の選択肢もあるような気がするが、桜井の気迫はたった一つの答えを言うように強要している。
【渉】「い、イエスです。飼わせて頂きます」
 ってなんで敬語で答えてるんだよ。
■■■G003 イベントCG明日香(無邪気な笑みを浮かべながら仔猫を撫でる明日香)
●●●SE008 トキメキ(ポワワワァン♪トキメキ)
【明日香】「よかったね」
 桜井が仔猫の頭を撫でてやると、
●●●SE016 猫の鳴き声(にゃ〜ん♪)
 にゃ〜んと鳴いた。
 そのとき俺の視線は無邪気に微笑む桜井に釘付けだった。
 なんだよ、こんな表情もできるのかよ。
 いつもクールな刺すような眼してると思ったら、ちゃんと笑うこともできるじゃん。
 この桜井の笑顔は俺の心のメモリーに深く刻まれた。
■■■b005 駅前(表示)
■■■A000 明日香・制服(表示)
■■■A011 B刹那・制服(表示)〈明日香と並べて表示〉
【渉】「ところでさ、桜井ってこのB刹那にさらわれたんじゃないのかよ?」
 今の二人を見ていると、犯人と人質って感じがしない。例えていうなら、デートしてるみたい……だ?
●●●SE001 決めポーズ(シャキーン!)
【渉】「許さんB刹那!!」
 俺は一人勝手にモーソーして先走りしてB刹那を怒鳴りつけた。
 B刹那はきょっとんとした表情をしている。
 桜井は異常者を見るような目つきで俺を見ている。
【明日香】「なに叫んでるの?」
【渉】「いや、発声練習」
 我ながら苦しいいい訳だ。
 しかし、危ないところだった。
 モーソーと現実がごっちゃになって、人間として危ないゾーンに足を踏み入れるとこだったぜ。もうちょっとでB刹那に殴りかかるところだったな。
●●●SE017 ヘリコプターの羽音(羽の回転音)〈リピート〉
【渉】「な、なんだ?」
 ヘリコプターの羽音だ。
 こんな駅前通に!?
▲▲▲BGM003(スタート)
■■■G502 その他(上空を飛ぶヘリコプター)
【明日香】「なんでヘリが?」
 ヘリが空を飛ぶこともあるだろう。ヘリが空を飛ぶのは当たり前だ。飛ばないヘリはただの鉄クズだ。
 でも、あのヘリは明らかにおかしい。
 上空を旋回しながら、地上の様子を伺っているように見える。
 それに低空飛行すぎる。今にも着陸してきそうだ。
【渉】「あ、ヘリからなんか落ちてくるぞ」
【B刹那】「上空に生体反応を確認した」
 ヘリから投下された物体Aは上空でパラシュートを開いた。
 あれは人か、人が降りてくるのか!?
 パラシュートがどんどんこちらに向かって落ちてくる。
 まるで俺たちのいる場所に……。
 あっ!?
 あいつは!?
▲▲▲BGM000(スタート)
■■■b005 駅前(表示)
■■■A010 刹那・制服(表示)
●●●SE010 着地(スタッ!人が着地する音)
【刹那】「あはは、道に迷って大変だったよォ」
 上空から降りてきたのは刹那だった。
【刹那】「明日香クン、麻生クン、こんなところで出会うなんて奇遇だね」
【渉】「おまえ、どうしてヘリから降りて来るんだよ」
【刹那】「う〜ん、それがね、そこの彼を追って学校の外に出たまではよかったんだけどォ。道に迷ってしまって、結局ボクんちの特殊班に頼んでここまで運んで来てもらったんだよ」
 特殊班ってなんだよ。
 いつも学校にリムジンで来てる刹那が大富豪の娘っていうのは知ってるけど、特殊班って、特殊班って言い方が気がかりだ。
【刹那】「え〜と、それで、ボクは……ここになにしに来たんだっけ?」
●●●SE018 オチ1(パフ!おもちゃのラッパがパフッって鳴るやつ)
【渉】「そんなこと忘れるなよ」
【刹那】「あはは、嘘に決まってるじゃないか、忘れてないよ。キミのスペックの低い脳とボクの脳を一緒にしないでよ」
【渉】「おまえなぁ〜」
【刹那】「怒らない怒らない、すぐ怒る人はねカルシウムが不足してるんだよ」
【渉】「…………」
 ここで怒ったら刹那の思う壺だ。我慢だ、我慢しろ俺。
【渉】「俺はぜんぜん怒ってないぞ。そうそう、それより、俺は桜井を探しに来たんだ」
【刹那】「奇遇だね、ボクもだよ」
【渉】「奇遇って、おまえなぁ〜」
【刹那】「そういうことで、そこのキミ、明日香クンを解放したまえ!」
 うおっ、唐突過ぎる話の運び方だ!
■■■A010 刹那・制服(消去)
■■■A011 B刹那・制服(表示)
【B刹那】「残念ながら、それはできないな」
■■■A000 明日香・制服(表示)〈B刹那と並べて表示〉
【明日香】「だってアタシたちデート中だから」
●●●SE007 ガ〜ン!(ガ〜ン!ショック。)
【渉】「マ、マジか桜井?」
【明日香】「うん」
●●●SE007 ガ〜ン!(ガ〜ン!ショック。)
 だめだ、ショックで立ち直れねぇ。
 真っ白に燃え尽きて放心状態の俺を残して、話はどんどん進んでいく。
■■■A011 B刹那・制服(消去)
■■■A000 明日香・制服(消去)
■■■A010 刹那・制服(表示)
【刹那】「ボクの許可なしに明日香クンとデートするなんて」
 おまえの許可は関係ないだろ。
【刹那】「よし、明日香クンを賭けて決闘しよう。キミに決闘を申し込む!」
●●●SE019 紙などを置く(バサッ!)
▲▲▲BGM004(スタート)
 刹那はどこからか白い手袋を取り出して、B刹那に投げつけた。
 おお、これは西洋の決闘の申し込み方だ!
■■■A011 B刹那・制服(表示)〈刹那と並べて表示〉
【B刹那】「その決闘、受けて立とうではないか」
 B刹那が決闘の申し込みを受けたぞ!
 つーか、刹那は普段から白い手袋持ち歩いてんのかよ。
 そんなことより、手袋投げつけた程度で命を懸けた決闘がはじまっていいのかよ。
 否!
 やっぱり、『命賭けてもこいつぶっコロス!』くらいの挑発をしてこそ、決闘の申し込みだろ。俺はそう思う。
 とか思ってる間に決闘はじまってるし!
■■■G500 その他(上段の回し蹴りを放つ刹那。それを肘上で受けるB刹那)
●●●SE010 移動1(サッ!人が瞬間的に場所移動)
●●●SE013 叩く2(強く殴る)
●●●SE012 叩く1(バシッ!叩いたのを受ける音)
●●●SE011 風を切る音(ビュン!回し蹴りや剣で風を切る)
●●●SE012 叩く1(バシッ!叩いたのを受ける音)
●●●SE010 着地(スタッ!人が着地する音)
 すげえ、アクション映画を見てるみたいだ。
 肉弾戦を繰り広げる二人を見ながら俺は圧巻した。
 つーか、刹那ってやっぱり運動神経いいんだな。
 体育の授業とか毎回見学してるみたいだけど、実は運動神経いいだな。
●●●SE011 風を切る音(ビュン!回し蹴りや剣で風を切る)
●●●SE012 叩く1(バシッ!叩いたのを受ける音)
 目の前で繰り広げられる戦いは運動神経がどうこうってレベルを超えてるけどさ。
 じゃあ、なんで刹那は毎回体育の授業見学してんだ?
 B刹那と間合いを取った刹那が急に動きを止めた。
【刹那】「……ダルい」
 それか!!
 それが理由か……体育を休む理由も。
【B刹那】「明日香は俺が貰う!」
●●●SE010 移動1(サッ!人が瞬間的に場所移動)
●●●SE013 叩く2(強く殴る)
 ああっ!
 B刹那の攻撃をもろに受けた刹那の身体が吹っ飛んだ。
 しかも、尋常な吹っ飛び方じゃない。
 10メートルは飛んだぞ!?
■■■b005 駅前(表示)
●●●SE020 フロントにぶつかる(ドングシャ!)
 吹き飛ばされた刹那は近くに止めてあった車のフロントガラスに衝突した。
 なんてこったい。
 死ぬぞ、あんなの。
【刹那】「イタタ、腰打っちゃったよ」
■■■A010 刹那・制服(表示)
 なんと、刹那は腰を擦りながら立ち上がったのだ。
 しかも、腰打っちゃったよって……そーゆー問題か?
【刹那】「ふむ、なかなかやるね」
■■■A011 B刹那・制服(表示)〈刹那と並べて表示〉
【B刹那】「ふっ、おまえもな」
 二人の刹那は向かい合って微笑した。
 もしや、これは!?
 敵同士が戦いによって相手の実力を認め、友情が芽生えちゃったりする展開か!?
【刹那】「でも、美しさはボクのほうが上だね、あはは」
【B刹那】「いや、オレのほうが上だ、ふっ」
 友情は芽生えそうにないな。
【刹那】&【B刹那】「――ん?」
 二人の刹那が息を合わせたように、ある方向に顔を向けた。
■■■A010 刹那・制服(消去)
■■■A011 B刹那・制服(消去)
▲▲▲BGM003(スタート)
●●●SE021 バイク1(ブゥゥゥン!バイクの走る音)
 一台の赤い大型バイクがこちらに向かって走ってくる。
 しかも、乗ってる人……白衣着てるし。
 白衣でバイク乗る人なんて、あの人しかいない。
●●●SE022 バイク2(キキィィィッ!バイクの止まる音)
【沙羅】「まだ、決着はついてないようね」
■■■A030 沙羅・白衣(表示)
 この場に姿を現したのはウチの担任――上條沙羅先生だった。
【沙羅】「さてと、どっちが勝つか賭けましょうか。渉と明日香はどっちに賭けるかしら?」
【渉】「はっ?」
 まだこの教師は賭け事をする気だったのか。そのためにここまで来たのかよ!
【沙羅】「あたくしは刹那に賭けるわよ」
【渉】「先生、そうじゃなくて、ここになにしに来たんですか?」
【沙羅】「おほほ、刹那と刹那のニセモノのどっちが勝つか賭けをするためよ」
【渉】「マジかよ」
【沙羅】「嘘よ」
【渉】「嘘かよ!」
【沙羅】「刹那とあのニセモノ、どちらが勝つか見定めるためよ。これはあいつとの勝負なの、負けるわけにはいかないわ」
 沙羅先生の瞳の奥で炎が燃え上がり、先生は拳を強く握り締めていた。
【渉】「あいつって誰っスか?」
【沙羅】「あいつはあいつよ」
■■■A011 B刹那・制服(表示)〈沙羅と並べて表示〉
【B刹那】「偉大なるマスターをあいつ呼ばわりしないでもらおう」
【沙羅】「ふん、あいつはあいつよ」
【渉】「だからあいつって誰?」
【B刹那】「そこにいる上條沙羅の妹であらせられるお方だ」
【渉】「マジか!?」
 この先生に妹なんているのか。きっと沙羅先生に似てトンデモ系の人なんだろうな。
■■■A011 B刹那・制服(消去)
■■■A030 沙羅・白衣(表示)〈B刹那を消して真ん中に表示〉
【沙羅】「あたくしと妹は世界の覇権を賭けて争っているのよ!」
【渉】「はぁ?」
 なんですとーっ?
【明日香】「やっぱりウチの担任、頭イカレてるんだ」
 明日香がボソッと毒を吐いた。けれど、沙羅先生は気にすることなく話を続ける。
【沙羅】「あたくしと妹の戦いの歴史が長いわ。ソ連とアメリカの宇宙開発競争を裏で糸を引いていたのも、あたくしたちよ」
 って、その話ってうん十年前の話じゃないですか?
 沙羅先生って歳いくつなんですか、って聞きたいとこだけど、レディーに歳を聞くのは止めておこう。つーか、その話題には触れないほうが身のためのような気がする。
【明日香】「つまり、この騒ぎは姉妹喧嘩が発端ってことね」
 このとき初めて俺は気がついた。
 周り人いないじゃん……みたいな。
 この辺り一帯に人の気配はなく、あったとしても建物の中で、遥か遠くでは交通規制が行われているようだった。
 つまり?
【渉】「つまりどういうことよ?」
【沙羅】「刹那、思う存分戦いなさい。そして、そのニセモノを完膚なきまでにスクラップにしてあげなさい!」
【刹那】「イエス・マスター!」
■■■G500 その他(上段の回し蹴りを放つ刹那。それを肘上で受けるB刹那)
●●●SE010 移動1(サッ!人が瞬間的に場所移動)
●●●SE013 叩く2(強く殴る)
●●●SE012 叩く1(バシッ!叩いたのを受ける音)
●●●SE011 風を切る音(ビュン!回し蹴りや剣で風を切る)
●●●SE012 叩く1(バシッ!叩いたのを受ける音)
●●●SE049 叩く(パンチ!)
 また戦いがはじまちゃったよ。しかも、さっきより心なしか激しいし。
 二人の刹那の戦いは五分五分のようにも見えるけど、気のせいかもしれないけど、刹那のほうが押されてるような気がする。
【沙羅】「カスタムしてない通常モードでは、やはり刹那は不利だわ」
 カスタムとか通常モードとか、なんですかそれ?
【沙羅】「刹那、100万馬力よ!」
 そこっ!! 意味わかんない応援しない!
 交わされる拳と拳。男らしい戦いだ。って刹那って女だった。てか、あっちのB刹那もやっぱ女なのか?
●●●SE011 風を切る音(ビュン!回し蹴りや剣で風を切る)
 刹那に向かって踏み込んだB刹那がバク宙をしながら蹴りを放った――ムーンサルトキックだ!!
●●●SE013 叩く2(強く殴る)
 ムーンサルトキックをくらって足を地面から浮かせた刹那の足首をB刹那が掴んだ。
 そして、そのまま状態を捻りながら刹那の身体を横にぶん投げた!!
 再び宙を舞う刹那の身体。
■■■b005 駅前(表示)
●●●SE013 地面に落ちる(ドスッ!刹那が地面に叩きつけられる)
 背中からアスファルトに衝突したぞ。痛そうだ。
 つーか、この戦いって、どっちを応援するべきなんだ?
 元はと言えば、桜井をめぐってはじまった戦いだけど、どうやら本当は沙羅先生と妹の戦いらしい。
 ここはやっぱり知り合いである刹那を応援したほうがいいのか?
【渉】「刹那立つんだ!」
【明日香】「ふ〜ん、麻生は刹那に勝って欲しいんだ」
 皮肉のこもったような言い方されたぞ。
【渉】「なんだよ、桜井はあっちの刹那に勝ってほしいのかよ?」
【明日香】「そういうわけじゃないけど」
 意味不明だ。
【沙羅】「刹那、しっかりしなさい!」
 地面に横たわる刹那に沙羅先生が駆け寄った。
●●●SE047 走る2(ハイヒール)
【沙羅】「しっかりするのよ、あなたはあたくしの最高傑作なのよ」
 最高傑作ってなんだよ!
【沙羅】「防護スーツを着ていたのに、こんなダメージを受けるなんて……」
 防護スーツって、もしかしてその白い学ラン?
 その学ランって防護スーツだったの?
 つーか、なんでそんなもん着てるわけ?
【渉】「あの、沙羅先生に質問が……」
【沙羅】「うるさい黙ってなさい! パーツを取り替えて防御力及び攻撃の力の強化……回転数も上げて……」
 考え深げな表情をしている沙羅先生は、なにかを思いついたように手を叩いて、刹那の身体を軽かると担ぎ上げて走り去って行った。
【渉】「あ、沙羅先生!」
【明日香】「……疑問点がいくつかあるんだけど、麻生わかる?」
【渉】「俺に聞くな」
 そう、謎は謎のままの方がいいってこともあるのさ。
 つーか、刹那が気を失って沙羅先生が持ち去ったってことは、B刹那の勝利ってことかよ?
●●●SE027 ゴング終了(カンカンカンカン!)
 Winner、2Pブラック刹那!!
●●●SE037 拍手喝さい(パチパチ、ワァー!)
▲▲▲BGM005(スタート)
■■■A011 B刹那・制服(表示)
【B刹那】「俺の勝ちのようだな、マスターもさぞお喜びになるだろう」
 ちょっと待てよ、刹那が敗れたってことは……?
【B刹那】「明日香はオレのものだな」
 B刹那の腕が伸び、明日香の腕をガッシリ掴んだ。
■■■A000 明日香・制服(表示)〈B刹那に少しかぶさるように表示〉
【明日香】「離してよ」
 強引に明日香の身体は引き寄せられた。
【B刹那】「もうキミのことは死んでも離さないよ」
【明日香】「イヤだってば!」
 逃げようと明日香はするが、B刹那の力は強く、相手の手を振り払うことができない。
 怒った表情をしてB刹那の手を振り払おうとしている明日香の顔が俺に向けられた。
 もしかして俺に助けを求めてるのか?
 だとしたら、早く助けねば、男として名が廃る!!
【渉】「おい、桜井のこと離せよ!」
【B刹那】「なんだい?」
【渉】「桜井嫌がってるだろ、離してやれよ」
【B刹那】「それはできないな。これからオレ達は海の見える丘に建つ教会で式を挙げるんだ」
【渉】「なにぃ〜〜〜っ!?」
 なんか、スゴイとこまで人生設計が進んでるぞ。
 ヤバイ、このままじゃ本当に桜井を持っていかれそうだ。
【B刹那】「オレに決闘を申し込むかい、明日香を賭けて?」
【渉】「…………」
 桜井が俺のことを真剣な眼差しで見てる。
 決闘をして勝たなければ桜井が……。
 でもさ、よく考えろよ俺。
 さっきの戦いを見てたとおり、あんなすげえ戦いをする奴に、果たして俺は勝てるのか?
 いや、勝てない。
 絶対無理。
 命いくらあっても無理。
 つーか、無理。
 でも、やらなきゃ……。
 俺は歯を食いしばりながら、ぎゅっと拳を握った。
【B刹那】「さあ、やるのかやらないのか?」
【渉】「…………くっ」
 桜井が俺のことを見てる。
【B刹那】「やるなら白い手袋をオレに投げるんだ」
【渉】「投げるのかよ!」
 白い手袋投げないと決闘の申し込みできないのかよ。
 つーか普通、白い手袋なんて持ち歩いてないだろ!
 俺が今持ってるものっていったら?
●●●SE016 猫の鳴き声(にゃ〜ん♪)
 この猫ぐらいだな。
 俺の腕に抱かれて気持ちよさそうだな。
 この猫見てると、気持ちが安らぐよな。
 って、そんなこと考えてる場合じゃなかった。
【B刹那】「オレに決闘を申し込む勇気もないのか?」
【渉】「ちげーよ、白い手袋なんて持ち歩いてねぇんだよ!」
【明日香】「手袋なら、そこに落ちてるじゃん」
【渉】「あっ」
 さっき刹那が決闘を申し込んだときに投げた手袋が地面に落ちていた。
 よし、あれを拾って……。
 いや、やっぱり決闘を申し込んだところで俺の敗北は決まってるようなもんじゃないか。
 でも、でも、桜井をあきらめろっていうのかよ。
 俺の桜井に対する気持ちってそんなもんかよ。
 違う、俺は桜井のためなら!
 決心した俺は手袋を拾おうと手を伸ばした――その瞬間!?
■■■A000 明日香・制服(消去)
■■■A011 B刹那・制服(消去)
●●●SE024 爆発音(ドカーン!車が爆発)
 俺に抱かれていた仔猫が驚いて逃げ出してしまった。
【渉】「なんだ!?」
 俺はすぐさま爆発音がした方向に目をやった。
 近くで炎上し続けていた車がついに爆発を起こしたのだ。
【明日香】「だめ!」
 なにが?
 爆発した車から飛ばされたタイヤのホイールが、俺の腕から逃げ出した仔猫に向かって放物線を描いている。
【渉】「逃げろ!」
 なにもできないでいる俺を差し置いて、B刹那が地面を蹴り上げた。
●●●SE010 移動1(サッ!人が瞬間的に場所移動)
 B刹那が仔猫を助けようと走り出したのだ。
▲▲▲BGM005(ストップ)
●●●SE043 飛来衝突(ヒュ〜ン、ドン!アニメ風)
●●●SE013 人が倒れる(バタっ!)
(ミニキャラでアニメーション、B刹那の頭にホールクラッシュ)
【渉】「あ゛っ」
▲▲▲BGM001(スタート)
 タイヤのホールは見事B刹那頭をクラッシュした!
【渉】「大丈夫か、死んだか?」
【明日香】「……まさかぁ」
 俺と桜井はすぐさま倒れるB刹那のもとに駆け寄った。
●●●SE014 走る1(タタタタッ!走る)
【渉】「大丈夫か?」
【B刹那】「…………」
 返事がない、ただの屍のようだ。
 マジか!
 マジで死んだか!?
 桜井はすぐ近くにいた仔猫を抱き上げた。
【明日香】「この子は無事だったけど」
【渉】「尊い犠牲でその猫は助かったんだ。大事にしてやらないとな……じゃないだろ!」
 とりあえず、脈があるか調べないと!
 俺はすぐさまB刹那の服の袖を捲り上げて脈を取った。
 大丈夫だ、脈はあるらしい。
 呼吸も調べたが、こっちも大丈夫だ。
 なのに目を覚ます気配がない。
【明日香】「麻生、人工呼吸してみたら?」
【渉】「できねーよ、んなこと」
【明日香】「アタシだってできない。女の子同士でキスするような趣味ないもん」
■■■G101 イベントCG刹那(気を失うB刹那の唇が呼んでいる)
 目をつぶり、意識を失っているB刹那の唇がそこにある。
●●●SE028 心臓の鼓動(ドキドキ)
 こうやってまじまじ刹那の顔を見ると、やっぱ刹那って美形だよなって再確認する。こいつはB刹那だけど、顔はまったく同じだからな。
 ずっと見てるとキスしたくなる。
 ダメだ、やめるんだ俺!
 たしかに、たしかにさ、俺は桜井以外の女にも手を出したことはあるさ……モーソーの中で。でもよ、リアルでは桜井一筋で、行かなきゃダメだろ!
 でも……B刹那の唇が俺を呼んでいる。
●●●SE028 心臓の鼓動(ドキドキ)
 俺は生唾をゴクリと呑み込んだ。
【渉】「人命救助のためだ!」
▲▲▲BGM001(ストップ)
●●●SE029 キス1(ブチュ〜♪食らいつくようなキス)
 一気に俺はB刹那の唇に飛び込んだ、つーか、半ば食らいついた。
 B刹那の肺の中に空気を入れ、俺は唇を離した。
 と、ここで桜井の一言。
【明日香】「その刹那、男の人だよ」
●●●SE007 ガ〜ン!(ガ〜ン!ショック。)
【渉】「なんですとーっ!?」
【明日香】「さっき聞いたんだけど、彼、男だって」
【渉】「桜井、謀ったな桜井!」
 今ならガ○ダムでシ○アに謀られたガ○マの気持ちがわかるかもしれない。
 でも、この顔だったら、キスしても悔いは残らないような気がする。って、危ない危ない、そっちの趣味に目覚めることだった。
■■■b005 駅前(背景CG)
●●●SE030 まばたき(パチパチ♪目を覚まして目をパチパチ)
【B刹那】「……ううっ」
【渉】「気がついたか」
【B刹那】「……ふふふっ」
【渉】「ん?」
 なんか様子が変だぞ?
▲▲▲BGM001(スタート)
■■■A011 B刹那・制服(表示)
【B刹那】「あはははは、あ〜ははははっ!」
 突然立ち上がったB刹那が高笑いをはじめた。
 頭ぶつけて壊れたか?
【B刹那】「俺様は神だ!」
●●●SE001 決めポーズ(シャキーン!)
 ……ヤヴァイ、この感じは、あれだ。
 俺は知っている、これは本家刹那特異発作〈暴走〉に似ている。
 ま、まさか、こいつも〈暴走〉するのかよ!?
 逃げないと巻き込まれる!
【渉】「桜井逃げるぞ!」
【明日香】「えっ?」
【渉】「刹那の〈暴走〉だ!」
【明日香】「えぇ〜っ!」
 〈暴走〉と聞いてすぐに理解したらしい。俺と桜井は急いでトンズラした。
 すると、俺たちに向かって一台のバイクが近づいてくる。
●●●SE021 バイク1(ブゥゥゥン!バイクの走る音)
【渉】「あれは!」
 白衣でバイクに跨る女性と二台に跨る美形。あれはまさしく沙羅先生と刹那だ。しかも二人ともノーヘルだし。
●●●SE022 バイク2(キキィィィッ!バイクの止まる音)
●●●SE010 着地(スタッ!人が着地する音)
■■■A030 沙羅・白衣(表示)
●●●SE010 着地(スタッ!人が着地する音)
■■■A010 刹那・制服(表示)〈沙羅と少し時間差で並べて表示〉
【沙羅】「待たせたわね」
 いや、別に待ってたわけじゃないけど、来てくれて助かったかも。
【沙羅】「チューンアップした刹那の力を見せてあげなさい」
【刹那】「イエス・マスター!」
 ってチューンアップってなんだよ。
 人ってそんなに短期間で強くなれるものなのか?
【渉】「あのB刹那、〈暴走〉モードなんですけど、勝てるんスか?」
【沙羅】「刹那には有りとあらゆる戦闘術を叩き込んで置いたわ」
■■■A010 刹那・制服(消去)
■■■A030 沙羅・白衣(消去)
■■■A011 B刹那・制服(表示)
【B刹那】「あははは!」
●●●SE050 ガラスが割れる1(ガシャン!)
●●●SE051 ガラスが割れる2(ガシャン!)
●●●SE052 ガラスが割れる3(ガシャン!)
 辺りの窓ガラスが突如割れはじめた。
 本家刹那も〈暴走〉すると超能力みたいの発揮して窓ガラスを割ったりすることがある。きっと、B刹那も同じ力を有している違いない。
 そして、あの力もきっと持ってるハズだ。
【渉】「ヤバイ、桜井逃げろ!」
 俺は桜井を抱きかかえてダッシュした。
●●●SE024 爆発音(ドカーン!)
【明日香】「ごほっごほっ……」
【渉】「大丈夫か桜井?」
 後ろを振り返ると、地面にフロントから突っ込んだ車が炎上していた。今、空中をぶっ飛んできた車だ。
 そう、〈暴走〉時の刹那の能力には、念動力――つまり物を動かす力もあるのだ。
【B刹那】「あははは、人類よ、神の力を思い知るがいい」
●●●SE050 ガラスが割れる1(ガシャン!)
●●●SE051 ガラスが割れる2(ガシャン!)
●●●SE052 ガラスが割れる3(ガシャン!)
 ヤバイぞ、本格的にヤバイ。
【沙羅】「刹那、殺るのよ!」
【刹那】「イエス・マスター!」
 刹那が地面を駆ける。そのスピードはオリンピック選手顔負けのスピードで、足にジェットエンジンでも積んでるんじゃないかと疑うほどだ。
■■■G500 イベントCGその他(上段の回し蹴りを放つ刹那。それを肘上で受けるB刹那)
●●●SE011 風を切る音(ビュン!回し蹴りや剣で風を切る)
●●●SE046 叩く5(ボディブロー)
 刹那の蹴りが決まった!
●●●SE013 重い物体が地面に落ちる(ドスッ!)
 だが、すぐにB刹那は立ち上がり、速攻でパンチを放つ。
●●●SE012 叩く1(バシッ!叩いたのを受ける音)
●●●SE013 叩く2(強く殴る)
●●●SE012 叩く1(バシッ!叩いたのを受ける音)
●●●SE011 風を切る音(ビュン!回し蹴りや剣で風を切る)
●●●SE013 叩く2(強く殴る)
●●●SE010 移動1(サッ!人が瞬間的に場所移動)
 スゴイ、ズゴイぞ、〈暴走〉B刹那を刹那が押してる。これなら勝てるかもしれない!
●●●SE031 携帯の着信1(沙羅先生の携帯)
 ん?
 誰かのケータイか?
【沙羅】「もしもし――」
 沙羅先生のケータイか。
【沙羅】「え?」
 ケータイで話している沙羅先生の顔が見る見る蒼ざめていく。
【沙羅】「…………」
 ケータイを切った沙羅先生は無言のまま立ち尽くしている。いったい、どんな内容の電話だったんだ?
【渉】「沙羅先生、どうしたんスか?」
【沙羅】「中東の国からミサイルが発射されたそうよ」
【渉】「へぇ……で?」
【沙羅】「あと数分でここに落ちるそうよ」
【渉】「ふ〜ん」
 ミサイルが発射されて、ここに落ちるのかぁ……。
【渉】「マジでーっ!?」
【沙羅】「マジよ」
【渉】「なんでミサイルなんかが飛んでくるんスか?」
【沙羅】「あのニセモノが呼び寄せたんじゃないかしら?」
【B刹那】「あはは、神の裁きを受けるがいい!」
 B刹那の頭は完全にイッちゃってるみたいだ。
【沙羅】「早く逃げたいところだけど、爆発の範囲内から抜け出せそうにないわ♪」
 笑顔でサラッとかつ、グサッと言ったよ、この人。
【沙羅】「まあ、苦しまずに死ねるだけラッキーかしらね」
【明日香】「あ〜あ、くだらないジンセーだった」
【渉】「おいおい、桜井まで」
【明日香】「死ぬのなんて、ここだろうと、何時だろうと同じことなんだから」
●●●SE016 猫の鳴き声(にゃ〜ん♪)
 桜井の腕の中で仔猫が鳴いた。
【渉】「俺もこの猫もまだ死ねねえよ」
【明日香】「だからって麻生になにができるってわけじゃないでしょ」
【渉】「……うっ」
 痛いところつくなよ。胸にグサッと来たぜ。
【沙羅】「でも、打つ手がないわけじゃないわ」
 やっぱり手があるのかよ。だから、この人こんなに落ち着いてたんだな。
 沙羅先生はどこからともなくある物を取り出した。
●●●SE032 アイテム登場(ジャ〜ン!とか、ドラえもんがアイテム出すときの音でも可)
■■■G503 イベントCGその他(テフロン加工のフライパン)
【沙羅】「これよ!」
【渉】「は?」
 俺は自分の目を疑った。明日から眼鏡をかけたほうがいいかもしれない。マジでそう思った。
【沙羅】「テフロン加工でサビにも強いわ」
【渉】「それって、パンはパンでも食べれないパンですよね?」
【沙羅】「そうよ、3980円のフライパンよ」
 沙羅先生から手渡されたフライパンを俺はまじまじ見つめた。いたって普通のフライパンにしか見えない。だが、もしかしたら、それはカモフラージュで、このフライパンには最新鋭の技術が組み込まれているのかもしれない。
【渉】「このフライパンで俺になにを?」
【沙羅】「あのニセモノの頭をぶっ叩いて正気に戻すのよ」
【渉】「what?」
【沙羅】「そうね、叩くときのコツは後頭部を躊躇わずに一発で仕留めるのよ」
 最新鋭どころかアナログだ。
【沙羅】「飛んでくるミサイルの軌道を念力で変えるのには、あの二人の力が必要なのよ。わかったら、さっさと行きなさい!」
●●●SE049 蹴り(バシ!)
■■■b005 駅前(背景CG)
【渉】「うっ!」
 ヒールの踵で背中蹴られた。
 つーか行くのいいけど、本当にこんなアナログな方法で正気に戻るのか?
■■■G500 イベントCGその他(上段の回し蹴りを放つ刹那。それを肘上で受けるB刹那)
●●●SE010 移動1(サッ!人が瞬間的に場所移動)
●●●SE011 風を切る音(ビュン!回し蹴りや剣で風を切る)
●●●SE012 叩く1(バシッ!叩いたのを受ける音)
●●●SE013 叩く2(強く殴る)
●●●SE014 走る1(タタタタッ!走る)
●●●SE015 着地(スタッ!人が着地する音)
■■■b005 駅前(背景CG)
 ……近づけねぇよ!!
 激しさを増している二人の戦いの渦中に飛び込むのは無謀と言えた。飛び込んだらマジ死ぬ。
【沙羅】「早くしないと辺り一帯火の海よ♪」
【渉】「行きますよ、行きますってば、逝けばいいんでしょ」
 だが、飛び込もうにもチャンスがない。
【明日香】「あっ?」
【渉】「なに?」
●●●SE016 猫の鳴き声(にゃ〜ん♪)
 明日香に抱かれていた仔猫が逃げ出した。
【明日香】「どこ行くの?」
 仔猫はアスファルトの地面を駆け、戦いの渦中の中に!?
【渉】「行くな、危ない!」
■■■A011 B刹那・制服(表示)
【B刹那】「……ん?」
●●●SE016 猫の鳴き声(にゃ〜ん♪)
 足元に近づいてきた仔猫を見てB刹那の動きが止まったぞ?
【沙羅】「今よ、チャンスよ!!」
【渉】「えっ?」
 俺はフライパンを構えてB刹那に向かって走った。
 大丈夫だ、B刹那が動きを止めている今ならいける!!


1.躊躇わず後頭部に渾身の一発だ!!――※005へ
2.迷わず顔面に渾身の一発だ!!――※006へ


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