エピローグ

《1》

「それでは生徒会会議をはじめよう」
 いつものように舞桜の言葉ではじまった生徒会会議。
「私は重大なことを見落としていたらしい。この学園には校則がないのだ!」
 今さらーっ!?
 まあ、いつものことなのでほかのメンバーは特に驚きもしない。
 夏希が『は〜い』と手を挙げた。
「別になくてもだいじょぶだと思うけど?」
 立てた人差し指を『ノンノン』と雪弥が横に降った
「今はいいかもしれないけど、時間が経つと風紀が乱れるから必用だと思うね。いつでに風紀委員も作ったらいいんじゃないかな。な、魅神?」
「え……うん。貴方が必用だと思うなら」
 この二人の関係もあの事件以降に、気まずい方向に進むことはなかった。
 ちょっとした余談だが、夏希が菊乃に『舞桜ちゃんが男の子だって知ってた?』と尋ねると、あっさり知ってたと答えられてしまったらしい。おそるべし魅神菊乃。
 つい菊乃には話してしまったが、舞桜が男の子ということは周りにはヒミツだったりする。
 そうそう、そう言えば、今日の昼休み夏希は裏庭に呼び出された。誰かに袋だたきにされると思ってビクビクしていたが、その場に現れたのはピンク色をしたウサギのきぐるみだった。
 そのウサギはこんな話をした。
「これからも私のことは絶対に他言無用だからな。それと、舞桜様は自分が男だということを知らない。本人がそう思っているのだから、絶対に無駄なことを言って本人に悟られるなよ」
 そんなことだけ言ってささっと消えてしまった。
 生徒会の話が進む中で、そんな昼間の出来事をぼーっと考えていると、舞桜が自分の顔を見つめていることに気付いて夏希はハッとした。
「わっ!」
「どうしたのだ夏希?」
「え……別に(男の子だって意識するとドキドキする)」
「顔が赤いぞ?」
「げほげほっ、ちょ、ちょっと風邪気味で」
「それはいかん。今すぐ私に移すのだ、さあ接吻をしよう!」
 いきなり飛びかかってきた舞桜の顔面を夏希ちゃんビンタ!
「キスはダメ!」
「……今日の夏希は元気が有り余っているな」
 叩かれたというのに、精神的ダメージゼロの舞桜。たぶんなんで叩かれたのかも理解してない。相変わらず世界は舞桜を中心に廻っている。
 気を取り直して舞桜はもう一人の生徒会メンバーに目を向けた。
「話を戻して、君は校則について意見があるかい、ゴリ子さん?」
 ゴリ子さん生徒会に復帰!
 でも、今日もバナナを食べることで忙しいらしい。
 突然、生徒会室に通信が入った。テレビ画面に映る爆乳のアップ。
《舞桜ちゃんそこにいる? さっき仕入れたネタなんだけど、ついにムーンの裏側からスペース艦隊がアースに向かって飛び立ったらしいわよぉん》
「なにっ、いつに光の勇者が攻めてきたかっ!」
 まだこんなことを言っている。
 ほかにも『自分は魔王』発言とかも未だにしているが、あの事件で自分が〈魔王〉になってしまったときの記憶はバッサリないらしい。周りも空気を読んで舞桜がいるときには、その話は一切しない暗黙のルールがある。
 ちなみにあの一連の事件では負傷者は出たが、死傷者は出なかったらしい。ミラクルだ!
 舞桜は席を立ち上がって部屋の外に出ようと走った。
「急用ができた、すまんがあとは任せた!」
 と、言って部屋を出ようとした瞬間、ミイラ男が部屋に飛び込んできた。
「オレ様が生徒会メンバーからハズされ――」
 ゴツン!
 おでことおでこがごっつんこ♪
 舞桜とミイラ男は出会い頭にヘッドバッド。
「いってー!」
 床に転がって悶えるミイラ男。
 舞桜はそのまま気を失って……倒れてしまった。
 慌てて夏希が駆け寄った。
「だいじょぶ舞桜ちゃん!?」
 すると舞桜がムクッと状態を起こして、
「愛しているぞ貴姉!」
 ぶちゅ〜♪
 いきなりのキス攻撃を夏希は受けてしまった。
 夏希はバッと舞桜から体を離して眼を丸くした。
「ま、〈魔王〉!?」
 そこにいたのは女ったらしでご近所さんでも有名な歌舞伎メイクの悪の帝王。
 えっ……魔王復活?
 とか思った瞬間、ピンクの影がどこからともなく現れ、ハリセンで〈魔王〉の後頭部をぶん殴った。
 バチコーン!
 クリティカルヒットを喰らった〈魔王〉はそのまま気を失い。何事もなかったようにムクッと起き上がった。
「ふむ、朝か」
 呟いたのは紛れもない舞桜だった。
 だが、悲劇は再び起きた。
 ミイラ男が持っていた松葉杖を大きく振りかぶった!
「てめぇよくもオレ様に頭突きしてくれたな!」
 ドーン!
 松葉杖が寝起きの舞桜の頭にクリティカルヒット!
 再び気を失う舞桜。
 そして、ムクッと上がって
「ふははははっ、私は何度もでも甦るのだ!」
 再びハリセンがバチコーン!
 気を失った〈魔王〉が舞桜に戻って起き上がった。
「なんだか知らんが頭痛がする」
 このエンドレスを見ていた夏希も頭が頭痛で痛くなってきた。
「もしかしてこれからもずっとこの入れ替わり生活が続くの?」
 まだ学園生活はじまったばかり。
 なのにこの濃密すぎる苦難の連続。
 無事に卒業できるだろうかと思うと夏希はやっぱり不安だった。
 でも、ふと周りを見渡すと。
 そこには菊乃がいた、雪弥がいた、姿は見えないけどピンクさんもいる。
 そして……ゴリ子さんもいるではないか!
 なんだか急に夏希は笑顔になった。
「ねえ、舞桜ちゃん?」
「ん、なんだ夏希?」
「ううん、やっぱりなんでもない」
 そう言って夏希は太陽の笑顔を見せたのだった。
 これからもいろいろなことがあるだろうけど、みんないてくれればきっと大丈夫。
 すっかり夏希は一人のこと忘れてるけどなっ!(笑)

 おしまい


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