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第3話 レイディスコーピオンだよプリティミュー! |
冬だ、海だ、常夏だ!? 「これは収録された映像ではありません、生放送です!」 と、ズラ疑惑のあるアナウンサーは熱弁して、自分の腕をバックの海に向けた。 白い砂浜と青い海、サンサンと輝く太陽。 ビーチで日光浴をする人たち、海に腰まで浸かってはしゃぐ恋人たち、小さな子供が砂でお城まで作っている――冬なのに。もちろんみんな水着だ。 「決してこれは極寒の中で我慢比べをしているのではありません!」 夏以上に暑苦しいアナウンサーはスタッフからカキ氷を受け取って、ひとり早食い競争をはじめて1秒03のタイムで完食した。世界記録は及ばない。 「このとおり、カギ氷も美味しく食べることが……」 ぎゅるるるぅ〜。 お腹が悲鳴をあげて、急にアナウンサーの顔が真っ青に。その映像をテレビで見ていたアインが叫ぶ。 「きっとシロップがブルーハワイだったから顔が青くなったんだ!」 「そんなわけないにゃ〜」 呆れ声のワトソン君のツッコミ。 アインは指を横に振って、チッチッと舌を鳴らした。 「わかってないねワトソン君。ミカンを食べると手を黄色くなるのと同じ原理さ」 「それとこれは違うにゃ」 「どう違うか科学的に説明して欲しいものだね」 「だってブルーハワイを飲んでも顔は青くならないにゃ」 「わかってないね、今からボクが科学的に証明……っ!?」 テレビのスピーカーから悲鳴が聴こえて、アインは瞳孔を開いて画面に釘付けになった。 《た、大変です、海の中から巨大な影が!》 アナウンサーのドアップから映像がパーンして、逃げ惑う人々と波立つ海を映し出した。 巨大な波を従えて、三角頭の影が砂浜を覆った。 海の中から白くて長い吸盤付きの脚が何本も伸びる。この焼いたらとっても美味しそうな脚はまさか……。 イカだ! その映像を見たワトソン君はゴクンと生唾を飲んだ。 「美味しそうだにゃぁ」 アナウンサーは危険を顧みず、自ら巨大イカに突撃取材を試みた。 《海から突如巨大なイカが現れました! 果たしてこのイカはどこから来て、なんの目的で我々の前に現れたのでしょうかッ!》 巨大イカの大きさは胴体だけでもアナウンサーの2倍以上ある。脚まで入れたらどのくらいあるか計り知れない。 アナウンサーは額の汗を拭いながらマイクを巨大イカに向けた。 《あなたはいったい何者なのですか!》 もちろん返事などなかった。 《どうやらこのイカはシャイなようです。他の質問をしてみましょう。恋人はいるんですか?》 その質問を浴びせた瞬間、長い脚がアナウンサーに襲い掛かってきた。 咄嗟にしゃがんだアナウンサーだったが、その頭から髪がなくなっていた。 しまったズラを取られた!! 巨大イカの吸盤に奪われたカツラ。しかも、そのカツラからお札がバラバラと舞ってくる。なんとアナウンサーはヅラの中にへそくりを隠していたのだ。 お茶の間にヅラまでバレて、へそくりの隠し場所までバレてしまった。 ズラが取れてしまったら開き直るしかない。アナウンサーは一皮向けてプロ根性を見せはじめた。 《なんと凶暴なイカなのでしょうか! 30万円した私のズラを奪うとは、盗人の才能もあるようです!》 なんかコメントが滅茶苦茶だった。 しかし、使えないアナウンサーを差し置いても、アインはテレビに釘付けにされた。 そして、さらなる衝撃がアインを襲う。 《なんですかあれは!》 アナウンサーが海に指を差した。 な、なんと海から砂浜に謎の爬虫類が上陸してくるではないか! しかも二足歩行の爬虫類だ! いや、爬虫類というニュアンスは少し違うかもしれない。あれはゴ○ラだ! 衝撃映像はまだまだ終わらなかった。 空から何かが砂浜に向かって飛んでくる。クルクル回転するあれは……カメだ。カメの甲羅が回転しながらやってくる。 しかもその甲羅の上に一眼レフのレンズを乗せている。これってまさか……? 「カメラだ!」 アインが歓喜の声をあげた。それはプリティミュー第1話に出てきた珍獣の名だった。 砂浜に次々と現れる怪獣たち。 怪獣大戦争がはじまるというのか! アインはメガネの奥で目をキラキラ輝かせた。 「今すぐ行くよ! ワトソン君、バイト君に電話だ!」 アインの目的はただひとつ、世界にひとつだけのフィギュアを集めるため。 そんな趣味のせいで、今日もミユは苦労をさせられるのだ。 真っ赤なオープンカーが海に向かってレッツゴー! 運転しているのは……なんとアインだった。正確にいうと、アインが背負っているランドセルからマジックハンドが伸びて、それがアインの代わりに運転している。 「アインって免許持ってるの?」 と、聞いたのはミユだ。 わけもわからず後部座席に乗せられ、どこに行くかも聞かされていなかった。半分拉致られた。 「免許なんか持ってるわけないじゃないか」 あっさりアインは言った。まあ運転しているのはマジックハンドだ。たぶん無免許運転にはならない、たぶん。 けれど、運転席にアインが座っていることには違いない。巡回中のサツに見つかったら、やっぱり尋問されそうな予感だ。だってアインの見た目はどう見ても小学生だ。 車に乗っているのは小学生と中学生と、ネコ。うん、問題ない♪ とにかくポリスに見つからなければいいのだ。良い子は決してマネしちゃいけません。 オープンカーは国道を南下し続け、ミユはどこに行くのか察しがついた。 「もしかして海に行くの……真冬なのに」 「アタリだにゃ」 ワトソン君が言った。当たっても賞品は出ない。 ミユは陰鬱な顔をした。 「なんで海なんか行くの……真冬なのに」 「今日は――」 ワトソン君が今日の趣旨を説明しようとした瞬間、アインのマジックハンドがワトソン君の頭を引っぱたいた。そして、アインがすぐさま口を開く。 「今日はただのレジャーだよ、あはは。日ごろの疲れを癒してもらおうと思ってね」 ミユが座席の間から身を乗り出して、じと〜っとした瞳でアインの横顔を見つめた。 「普段どれだけあたしのことをヒトと思って扱ってないと思ってるわけ? それを今日は疲れを癒せだって……絶対に裏があるんでしょう?」 無謀だと知りながら敵に突っ込ませるわ、身体を勝手に改造して爆弾まで仕掛けるわ。でも、改造されたおかげでバストサイズはBからDに豊胸した。 アインは基本的に利己主義だ。そんな人間の言葉を信じられるはずがない。 「裏なんてないさ」 絶対にアインは目線を合わせないで言った。 まあ、行けばわかるだろうと思ってミユは後部座席に背を付けた。 「レジャーねぇ。しかもなんで冬の海なの。どーせなら彼氏と行きたかった」 と愚痴を漏らすミユ。 車に乗ってるのはガキとネコ。 ここでワトソン君が訊いてきた。 「ミユは彼氏がいるにゃ?」 「……いるに決まってるじゃない!」 声をあげて息もあげるミユ。必死な感じが彼氏ナシと物語ってる。いたとしても妄想の王子さまだ。 ミユが墓穴を掘ったところで、海岸の風景が徐々に見え来た。 冬の海といえば、灰色がよく似合うような陰鬱なイメージがあるが、目に入って来たのは青い海と白い砂浜。そして、ミミズがアスファルトの上で干からびそうな照りつける太陽。 なにか様子がおかしいとミユが思いはじめたとき、怪獣か恐竜みたいな鳴き声が聴こえてきた。 「なにっ!?」 驚いて辺りを見回したミユの目に飛び込んできたのは! 「怪獣大戦争!?」 巨大亀とゴ○ラがケンカしていた。 ミユはドアを跨いで走っている車から飛び降りようとした。 「あたし帰る!」 ここまで来たらやらされることはわかってる。アレと戦ってフィギュアにしろとでもいいのだろう。無謀だ。スケールからして、ジョーカーの怪人よりデカすぎる。 マジックハンドがミユの首根っこを掴んだ。 「逃げてもいいけど起爆スイッチ押すよ」 伝家の宝刀『起爆スイッチ押すよ』。 ミユの体内に埋め込まれている爆弾は、アインの気分次第でドーンだ。逆らえるハズがなかった。 大人しくミユは座った。股を開かず手はお膝。 車は海岸脇の道路に止められた。 車を降りていやいや海岸に降りるミユ。 ちょっと先では怪獣大戦争が繰り広げられている。近くで見るとさらに大きい。 ミユは回れ右×2回をして元来た道を引き返そうとした。が、眼の前に立ちはだかる白衣のガキ。 「ボクはキミの雇い主だよ。ちゃんと高い給料も払ってるんだから、ちゃんと仕事してもらわないと困るよ」 「仕事しろっていわれても、あんなのと戦えるハズないでしょ!」 ミユはあんなのを指さして吠えた。 珍獣カメラが火を噴き、それに対抗してゴ○ラも口からビームみたいのを吐いた。完全に人智を超える戦いの領域に入っている。 アインはう〜んと考え、パッと上を向いたかと思うと指を一本立てた。 「これでどう?」 「これってなに?」 「1匹100万円」 「安いってば!」 ミユの月給は100万円である。それを今日は1匹100万円でどうかと言っているのだ。しかし、月給100万でも仕事の内容に比べたら、安いんじゃないかとミユは思いはじめていた。 ゴスロリ衣装を着せられて、時間と場所も構わずジョーカー怪人と戦い、ときには怪人以外の珍獣捕獲にも狩り出される。 中学2年生で月収100万は高いか安いか。ちなみに補足すると帝都では暗黙で中学生以下のバイトも認めている。 アインはピースサインをした。 「2本でどうだい?」 「それでも安すぎだってば!」 「キミ中学生の分際で200万が安いだって!」 「中学生がどうこうって問題じゃなくて、戦う相手が問題なんでしょ!」 暑い日差しが余計に2人を熱くさせる。暑い日はイライラしてしょうがない。しかも2人とも冬服。 ワトソン君がカキ氷を持って現れた。 「まあまあ、カキ氷でも食べて頭を冷やすにゃ」 ワトソン君が持ってきたのは、イチゴとブルーハワイ。あのブルーハワイだ! ミユはイチゴを取ろうとすると、もっと早くアインがイチゴを奪った。 仕方なくミユはブルーハワイを受け取り、一気に咽喉に流し込んだ。 すると!! 驚くべきことに顔が真っ青に! 青くなったミユの顔を指差してアインが勝ち誇った顔をした。 「ほらボクの言ったとおりじゃないか」 指を差されているミユはなんのことだかわからない。 「あたしの顔になにかついてるの?」 急にみんなミユと顔を合わせなくなった。 しかもアインは別の話題をはじめる。 「さて、今日の戦いは海だ。バイト君の変身機能には、実はアクアバージョンがあるんだ」 唐突な説明にミユは怪しんだ。 「そうじゃなくて、あたしの顔がどうかしたの?」 ミユはアインの顔を覗き込もうとするが、アインはクルッと回って決してミユと顔を合わせない。 「アクアバージョンの変身方法はいたって簡単だよ。いつもどおりケータイで777って打ったあとに『サイエンス・アクア・メイクアップ!』って叫ぶだけ」 「変身の方法はわかったから、なんであたしと顔合わせないわけ?」 「よし、バイト君、いざ出撃だ!」 ビシッとアインは怪獣たちを指さした。徹底的にミユと話を合わせない気だ。おまけに顔すら合わせない。 ミユは怒った顔をして、その場から動こうとしない。 仕方なくアインは見せることにした。 「ワトソン君、ボクのカキ氷を食べてみてくれたまえ」 「なんでにゃ?」 「いいから早く」 「わかったにゃー」 ワトソン君がカキ氷にがっついた。まさかワトソン君までもが……。 カキ氷を食べ終わったワトソン君の顔をアインが指差した。 「ほら、これでわかったろ」 ミユは首を横に振った。 「ぜんぜん?」 そういうのも無理もない。ワトソン君はなにも変わっていなかった。 アインは苛立つように髪の毛を掻いた。 「わかるだろ、顔色が赤くなってるじゃないか!」 と言っても、ワトソン君の顔は毛で覆われている。赤くなってるかどうかなんてわかんねーよ! そんな言い争いみたいなことをしているうちに、怪獣大戦争は決着を迎えてしまった。 なぜか和解して海に2匹で帰っていくカメラとゴ○ラ。 それを見てアインが絶叫する。 「あ〜っ! ボクのフィギュアが海に帰って行く!!」 アインは波打ち際に向かって走り出した。 「ボクのフィギュア!」 コテン! 砂浜でアインがコケた。 倒れたままアインは2匹の背中に手を伸ばす。 「ボクの……ボクの……フィギュ……ぐふっ」 力尽きたアインが砂浜に顔を埋めて動かなくなった。 「ボクのフィギュア!!」 なんて叫びながら、汗びっしょりでアインは目を覚ました。 目覚めたのは海の家の座敷。近くにはミユとワトソン君、そしてこの道60年の看板娘がいた。 この道60年の看板娘のストーリーを語り出すと、ぶっちゃけ連載枠に収まりきれなくなるので割愛させていただきます。 ワトソン君は器用にうちわでアインを扇いでいる。 「日射病だにゃ」 「ボクの脳は超高性能CPUを積んでるからね、熱にとっても弱いんだ」 汗を拭ったアインはそう言いながら白衣を脱いだ。その下にはまた白衣を着ていた。暑くて誰もそこにはつっこまない。 ミユがサイダーのビンをアインに手渡した。 「これ飲んで頭冷やして」 「バイト君、気が利くね。だからって給料アップはしないからね」 「……人の好意を素直に受けれないわけ?」 「ただより高い物はない。これは名言だと思うね」 とか言いながらサイダーをちゃっかり飲むアイン。 プハーっとまるでビールを一気飲みしたオッサンのごとく、アインはサイダーを飲み干すと、急に瞳を丸くした。 「そうだ、ボクのフィギュアは!」 そのクエスチョンにワトソン君がアンサーしてくれた。 「カメラもゴ○ラも海に帰ったにゃ」 「そんな……ボクのフィギュアが……」 肩をガックリ落とすアイン。 てゆーか、あの二大怪獣が海に帰ってしまうなんて、この話の冒頭の前フリ的展開はムダ? 怪獣大戦争も繰り広げられず、ミユVS怪獣軍団の戦いも行なわれず、なんのために怪獣が出てきたのみたいな……。 しかも、ミユVSカメラのリベンジマッチすらない。 壮大な前フリと見せかけて、壮大なフェイク。 冒頭のシーンが見事オール蛇足に終わってしまった。 しかし、アインはあることに気付いた! 「そうだよ、イカは? 大魔王イカはどうなったの?」 ちなみに命名はアイン。 「あれはこの海の守護神様じゃ!」 突然、看板娘が会話に乱入してきた。 「守護神様を怒らせると祟りが起きるぞ、恐ろしや恐ろしや」 両手のシワとシワを合わせて看板娘は念仏を唱え出してしまった。こんなババアは放置して、アインは海の家を飛び出した。 海岸は静かなものだった。怪獣騒ぎで行楽客はいなくなり、真っ赤な日差しが照りつける砂浜。 「大魔王イカまでいなくなるなんて……ボクのフィギュア帰って来〜い!」 海に青春を叫ぶみたいな状態。怪獣を取り逃がしたのがそーとーショックだったらしい。 ワトソン君がアインの脚に寄りかかるように手を乗せた。 「まっ、こういう日もあるにゃ。」 イチゴのカキ氷を食べながらミユも海の家を出てきた。顔色は青と赤が混ざって悲惨な色になっている。 「あたしは怪獣と戦わないで済んでよかったけど」 「よくないよ、ボクのフィギュアはどうなるんだ!」 「男の子なんだからグズグツ言わないの」 「ボクは男じゃないよ女だよ!」 「はっ?」 常夏のビーチでミユは一気に凍りついた。 そんな衝撃的な展開が繰り広げられようとした瞬間、なんか新展開が乱入してきた。 「おーほほほほっ、貴様がプリティミューとかいう小娘だな!」 赤いハイレグ水着を着た美女。手はハサミになっている。出たっ、今回のジョーカー怪人レイディスコーピオンだ! 突然の怪人出現にアインたちは驚くこともなく、ミユにいたってはそんなことより大事なことがあった。 「ちょっとアンタ黙ってて!」 レイディスコーピオンに言ってミユはアインの襟首に掴みかかった。 「今女の子って言った?」 これは目の前の怪人より重要な問題だ。 しかしレイディスコーピンにしてみれば、とんだ侮辱だ。 「オイッ、貴様! アタクシを放置する気か!!」 「だからアンタちょっと黙ってて、あたしはアインと大事な話があるの!」 「黙っててとは無礼千万な小娘だ。おい、お前たち構わないからやっちまいな!」 レイディスコーピオンの命令で、脇に従えていた全身黒タイツの戦闘員がミユたちに襲い掛かって来た。 そんな状況に陥ってもミユの眼中はアインだけ。 「女って言ったでしょ、女なの? 少年じゃなくて本当に女の子なの!?」 「バイト君、危ないよ」 「えっ?」 ガツン! っとミユは後頭部を殴られた。しかも鉄バット。 熱い砂に顔を埋めて倒れたミユ。 だが、こんなことじゃミユの頭はスイカ割りのようには割れない。だって改造人間だもん。 「いった〜い!」 後頭部を押さえながらミユは飛び上がった。痛みがあるのは仕様だ。 すでに海の家の中で日差しを避けて、ヤキソバを喰ってるアインからアドバイス。 「バイト君、アクアモードに変身だ!」 ぶっちゃけそんな機能のことミユはすっかり忘れていた。というか、あのときはそんな説明を聞いてる場合じゃなかった。 「アクアモードってなに!!」 ミユが叫ぶとワトソン君がさっと現れた。 「説明するにゃ。アクアモードとはプリティミューの変身形態のひとつで、海や水辺での戦いに優れた効果を発揮するにゃ」 そんな説明を受けている最中もミユは戦闘員たちに追い掛け回せれていた。 「えー? なに? 聴こえなかったもう一度お願い!」 だが、ワトソン君がもう一度説明することは二度となかった。 戦闘員に首根っこを掴まれたワトソン君が投げられた! しかもそっち海! 海の中に投げられたワトソン君をさらなる恐怖が襲う。高波だ! 高波がバッシャ〜ン! ワトソン君は高波に攫われて海の藻屑に……。さよなら、キミのことは一生忘れないからっ! はい、みんなで一分間、黙祷! ち〜ん。 ミユは故人のことをすでに忘れることにして、助けの眼差しをアインに向けた。 「助けてアイン!」 「ボクが助けたら、キミを雇ってる意味がないじゃないか」 あっさりと見捨てられた。 こうなったらミユは自力でなんとかするしかない! ミユはケータイを取り出して叫ぶ。 「サイエンス・パワー・メイクアップ!」 光に包まれたミユが一瞬にしてプリティミューに変身した。通常変身なので色はそうでもないけど、着てみると暑苦しい白ロリだ。白だけどぜんぜん爽快じゃない! しかも砂浜には適さない厚底ブーツ。 それでもミユは奮闘した。 マジカルハンマーを構えるミユ。 えい、やーっ、とぉー! てな感じでザコ戦闘員を倒していく。戦闘員は倒されるために出てくる存在なのだ。 しかし、戦闘員はゴキブリのように湧いてくる。 しかも!! ここで突然、邪魔が入った! 「プリティミューさんこっち向いてください!」 テレビカメラの中継だった。それも1台2台じゃない、怪獣騒ぎで駆けつけた民間及び国営がわんさかわんさか。こうやって今日もミユは白日の下にさらされるのだ。 しかも!! 報道陣に混ざって一般カメラマンまで。 しかも!! カメラマンの中には――。 「センパイ!」 追っかけメガネッ娘、ミユの後輩のメグだった。 その姿を発見してしまったミューはそっちに目を取られて、後ろから飛び掛る戦闘員を避け切れなかった。 「キー!」 飛びついてきた戦闘員の手が……ミユの乳を鷲掴みにした! 「えっち!」 ミユの背負い投げが炸裂! 「キーッ!」 戦闘員の言葉を訳すなら『不可抗力だ!』に違いない。 このおっぱいミュぅっと揉まれちゃった事件が今日のベストショットだろう。 暑さと恥ずかしさで顔を真っ赤にしてゼーハーゼーハー。ミューは額の汗を拭った。 目に入る敵はもう1人しかいない。戦闘員はみんな砂浜で気持ち良さそうにお休みだ。 レイディスコーピオンが鞭を振るった。 予定としては『バシン!』と良い音を鳴らす予定が、砂に音を吸収されて『プシッ』みたいな腑抜けな音が鳴ってしまった。 「鞭のクセして弛んでるとはけしからん、お前はふにゃ○ンかっ!」 なんか勝手に怒り出してレイディスコーピオンは鞭を捨ててしまった。 そんな光景を見ていたミューは意味不明な心境だった。 「いきなり鞭をふにゃチ○呼ばわりして怒り出すなんて……欲求不満!?」 そう言われてみれば、レイディスコーピンは欲求不満そうな顔をしている。怒り易いのもそのせいかカルシウム不足のせいだ。 「アタクシが欲求不満だと!? ち○こなんて付いてる下等生物にアタクシが媚びるとでも思っているのかッ!」 生放送の電波に乗る『ち○こ』発言。しかも言っているのは怪人と言えど、見方を変えればコスプレ美女。きっと高視聴率だ。 常夏のビーチでプリティミューVSレイディスコーピオンのち○こナシ対決がはじまろうとしていた。 これまでミューに挑んだち○こアリ怪人たちは、ことごとく破れていった。 しかし、この戦いの行方は? 自慢のハサミでレイディスコーピオンが攻撃を仕掛ける。 ミューのマジカルハンマーはその攻撃を防ぐ。だがハサミは片方の手だけだったが、お尻にもうひとつ武器があった。 刃物を先端につけたような鋭い尻尾がミューに襲い掛かる。 「きゃーっ!」 ミューの悲鳴と共に切り裂かれる甘ロリ衣装。 男たちから歓声あがった。 再び切り刻まれるミューの衣装。そして、湧き上がる歓声。砂浜はムンムンした暑い熱気に包まれた。 衣装をボロボロに切り裂かれ、ミューは剥がれ落ちそうな胸元の布を押さえて後退った。 「このドSの痴女!」 「おほほほ、もっと辱めに合わせてから止めを刺してやる。シャーッ!」 奇声をあげて襲い掛かってくるレイディスコーピオン。 ミューは切り札を出した。 「マジカルハンマー・フィギュアチェンジ!」 振り下ろされたハンマーはレイディスコーピオンのおでこにペチン! が、なにも起こらなかった。 鋭いハサミはミューの胸を切り裂く! 湧き上がる歓声! 「きゃーっ!」 叫ぶミュー。 外れたブラジャー!! ミューは両手で胸を隠してしゃがみ込んでしまった。 これって絶体絶命のピンチか! ミューを見下して立つレイディスコーピン。 「お遊びはここまでだ。止めを刺してくれるわ!」 振り上げられる鋭いハサミ。 このままミューはやられてしまうのか! 「ちょっと待つにゃー!」 その声はまさか……!? 海をクロールで泳いで来る人影……人影? 褐色の肌をした若い男が世界新記録に迫る勢いで、いやそれ以上のスピードで海を泳いでくるではないか! 「何者だ!」 叫んだレイディスコーピオンは見てしまった。 海から上がってきた美少年の姿を……しかもフル○ンだ! 「おいらが相手だにゃ!」 顔に似合わない口調。しかもフル○ン! 「な、なんだ貴様は……ち○こ丸出しでアタクシに敵うと思っているのか!」 威勢は言葉だけで、レイディスコーピオンは焦っていた。その視線が向けられているのは、美少年の股間!! ――巨根だった。 「クソッ、ち○こごときに……ち○こなどにアタクシが負けてなるものかっ!」 取り乱しながらレイディスコーピオンは謎の美少年に襲い掛かった。 まるで猫のようなしなやかさで攻撃をかわす美少年。そのたびに、ち○こが右左に踊る。 レイディスコーピオンはち○こから目が離せなくなってしまった。 海だからってち○こ丸出しで戦うなんて弾けすぎだ。てゆーか、卑怯だ卑劣だ、放送事故だ! ただいまお茶の間では急遽差し替えの映像が流れている。ち○こが踊ってる映像なんて真昼間からテレビで放送できるかボケッ! 踊っているのはち○こだけではない。それに踊らされるレイディスコーピオン。 「早くち○こを隠せバカがっ!」 「おいらはいつも裸だにゃー!」 「巨根を自慢したいなら他のところでやれ!」 もうレイディスコーピオンの頭の中はち○こでいっぱいだった。 その隙に謎の美少年が攻撃を繰り出す。 「ねこパーンチ!」 鋭いツメがレイディスコーピオンの腕を掻っ切った。 切られたのは腕なのに、血を豪快に噴いたのは鼻の穴だった。 真っ赤に燃える太陽のような鼻血をレイディスコーピオンは噴出した。 レイディスコーピオンが怯む……攻撃にではなくち○こに怯んだ隙に、謎の美少年はミューを抱きかかえた。 抱きかかえられたミューは顔を真っ赤にする。その視線はもちろんち○こ! 今日はもうち○こフィーバーだ! そして、謎の美少年はミューを抱きかかえたまま走り出した。 「ひとまず逃げるにゃ!」 独り残されたレイディスコーピオンは砂浜に膝を付き、何かをブツブツ呟いていた。 「ち○こ……ち○こ……ち○こ……ち○こ……」 かなり重症のようだ。 閉店ガラガラ〜。 海の家に逃げ込んだ謎の美少年とミユ。ミユの変身は解けてしまっている。 2人が店に飛び込んだのと同時に閉店ガラガラして、外からの出入りを一切封じた。 フランクフルトを食べていたアインはその手を止めた。 「ちんちんを隠したまえワトソン君、看板娘の前だよ」 顔を真っ赤にして『いやん』と声をあげたババア。 というか、やっぱり美少年の正体はワトソン君だったのだ。しゃべり方からしてバレバレだった。 ワトソン君は脱ぎ捨ててあった白衣を腰に巻いた。 「なにも着ないほうが涼しくていいにゃ」 軽く愚痴を溢すワトソン君を、ずっと驚きの眼差しで見たままのミユ。 「巨根の正体……じゃなくて美少年がまさかワトソン君だったなんて……しかも巨根」 巨根にこだわりすぎ。 そして、ミユはもうひとつショックなことがあった。 「てゆーか、ワトソン君ってショタキャラじゃなかったの!!」 ミユの勝手な妄想では、ワトソン君はアインよりも幼くて、擬人化したらショタそのものだと思っていたのだ。見事に期待を裏切られた! しかも巨根だなんて反則だ! なんかもうミユはいろいろショックだった。 世の中なにを信じていいのかわからない。疑心暗鬼になりそうな勢いだ。 でも、どうしてネコのワトソン君が人間の姿に? まさか悪い魔女に呪いをかけられた? でも、やっぱり有力な説はどっかのマッドサインエンティストの被害者? 疑うミユの視線がアインに向けられた。 「アインがやったの?」 「ん? なんのことだい?」 「ワトソン君がなんで人間の姿になってるわけ?」 「あぁ、彼は水をかぶると人間の姿になっちゃうんだ」 なんかそんな設定聞いたことがあるような。 しかも――。 「お湯をかぶると元の姿に戻るよ」 と、アインは追加した。 やっぱりそんな設定聞いたことがあるような。 ミユはどっからか真っ赤なヤカンを持ってきて、ワトソン君の頭からお湯をぶっかけた。 「熱いにゃー!」 叫び声をあげたワトソン君の身体が縮んでいく。アソコのサイズもミニサイズ。 そして、全身に毛の生えた三毛猫になってしまった。 「マジだ……」 ミユは信じられないと言った感じで呟いた。 やっぱり世の中信じられないことばっかりだ。 ミユはなんだか頭がガンガン響いてくるようだった。頭痛かなっと思ったら、閉店したシャッターを叩く音、そして声。 「逃げるなんて卑怯だぞ!」 レイディスコーピオンの声だった。どうやら重症から立ち直ったらしい。 すぐそこまで敵が迫っている。だが、アインは余裕をぶっこいている。 「このヤキソバも美味しいよ」 フランクフルトの次はヤキソバまで食っていた。 ミユはアインに噛み付いた。 「ちょっと、ごはんなんて食べてないで外の怪人をどうにかしてよ!」 「どうにかするのはキミの仕事だよ」 「でも……今のあたしじゃ……」 ――敗北。 3匹目の怪人にして早くも挫折。 だが、まだ本当に負けと決まったわけじゃなかった。 ヤキソバを食べながらアインは言う。 「キミが負けたのは当然だよ。アクアモードじゃないからさ」 そうだ、アクアモードがあった。 海や水辺に適しているという変身モード。 ここでワトソン君が説明すると見せかけて、先にアインが口を開いた。 「だから、変身のときにサイエンス・アクア・メイクアップって叫ぶだけだよ。1回の説明で覚えようよバカだなぁ」 「バカじゃないから。でも本当にそれであの怪人に……だって、マジカルハンマーだって効かなかったのに」 プリティミューの必殺技『フィギュアチェンジ』が効かなかった。 それについてもアインは明確な回答をした。 「あぁ、それね。萌えメーターが足らなかったからだよ。ザコ相手なら少しでいいけど、強い相手はたくさん萌えをためなきゃいけないんだ」 「はぁ?」 なんかそういえば、そんなようなメーターの存在があったような気がする。プリティミューに変身したときに、胸のあたりにハートマークのメーターがあったような? そんな話をしている最中も、外からは喚き声が聴こえてきていた。 「オイこら、早くここから出て来い! さもないと海の家ごとふっ飛ばすぞ!」 そろそろ出て行かないとマズイかもしれない。 ミユがビシッと背を伸ばして立ち上がった。 こうなったらアクアモードに賭けるしかない。 「よしっ、あたしガンバルから」 ラッキーセブンをケータイに入力して叫ぶ。 「サイエンス・アクア・メイクアップ!」 ブルーの光に包まれるミユ。 そして、アクアモードに変身したミユの姿とは――? 痺れを切らしたレイディスコーピオンはロケット弾を打ち込む準備をしていた。 そこで開店した海の家から出てきた人影。 ミューだ、アクアモードに変身したミューだ! 野次馬たちが歓声をあげた。主に男の歓声。 アクアモードに変身したミューの姿……その姿はスク水だった! そう、紺のスクール水着。胸に縫い付けられた白い布には、黒いペンで『ミュー』と汚い字で書かれている。 そして、このスク水の最大の特徴は萌えメーターだ。通常の変身時には胸にあったメーター、それがアクアモードではお尻についているのだ。お尻にハートがついていた! まさか夏でもない時期にスク水を着るなんて思ってもなかった。 しかも、プールじゃなくて海。 しかも、公衆の面前でテレビにまで映っている。 しかも、今日は怪獣騒ぎでカメラの数が多い。 ローカルヒロインから全国区のヒロインに昇格だ! もう絶対に友達や身内に正体がバレる。今まであまりバレてなかったのが不思議なくらいだが。 プリティミューとレイディスコーピオンが向かい合う。 「今度は負けないんだから!」 「おほほ、衣装を替えたところでアタクシには勝てないわよ」 ハサミと尾を操るレイディスコーピオンに対して、ミューはいつのもハンマーではなくバレーボールだ! バレーボールというのは語弊がある。どうみても鉄球だ。 「バレーボールで勝負よ!」 でもやっぱりバレーボールらしい。 ミューの宣戦布告ではじまったバレーボール対決。 ビーチバレーの標準的なルールに乗っ取るなら2対2の対決だ。 レイディスコーピオンと戦闘員のコンビ、ミュー側の相方は……いない。 「しまった……自分で戦いを申し込んでおいてパートナーがいないじゃん!」 ミューはワトソン君に顔を向けた。 「おいらはネコだから無理だにゃ」 人間に変身すればいいじゃん、と思うかもしれないが、きっとフル○ンだ! ミューはアインに顔を向けた。 「ぐわっ、知らないうちに落札されてる!!」 ミューのこと完全にシカトでノーパソをやっていた。しかも、おそらくオークション。 こんな感じでささやかなピンチを迎えたミューに手を差し伸べたのは! 「センパイ、わたしバレー得意ですよ!」 すっかり、忘れてた。メガネッ娘メグがいたんだった。 メグの参戦により、ついにバレー対決の幕が開けた。 なぜか放置されていたバレーネットを使い、2チームがコートの中に入った。 ネット越しにレイディスコーピオンがビシッと指を差してきた。 「この勝負でアタクシが勝ったら貴様らの命を貰うだけではないぞ。この帝都はこの砂浜のように、砂漠と化すのだ」 まさか、この冬なのに常夏現象はジョーカーの仕業だったのか!? 「絶対にそんなことさせない!」 これを言ったのはミユじゃなくてメグだ。どっちかというと、ミユは帝都の平和に関してそれほど興味がない。 「あたしは起爆スイッチすら押されなきゃそれでいいんだけど」 あとバイト代さえもらえれば。 そんなこんなでバレーボールがはじまる。 サーブ権はミューだ。 どう見ても中身が空気じゃないないボールをサーブする。 「とりゃ!」 ボールがビューンってぶっ飛ぶ。 ゴキッ! なんか嫌な音が鳴って、顔面でボールを受け止めた戦闘が泡を吐いて倒れた。 退場! 他の戦闘員によって担架で運ばれていく。 そして、すぐに別のメンバーが補充された。 そうそう、このバレーには特別ルールがある。それは得点制ではないこと。ボールを敵にぶつけて相手が倒れるまでやり合う。 ミューは完全にザコ戦闘員狙いで、次々と相手の数を減らしていく。 そして、ついに戦闘員はすべて倒されレイディスコーピオンを残すのみになった。 「おのれ小娘め……戦闘員ばかり狙うなんて卑怯だぞ!」 「戦略って言って欲しいかな」 ミューのチームはメグもちゃんと生き残ってる。てゆか、たぶんボールを一発でも喰らえば三途の川を渡れる。 けれど、そもそもメグはバレーそっちのけでミューを激写している。 一眼レフを構えて激写、激写、激写! これってもしかして、最初から1対1で戦っても良かったんじゃないの的な展開。 ミューが豪快なサーブを放つ。 「うりゃ!」 狙う相手はレイディスコーピオンしかしない。 飛んできたボールをレイディスコーピオンが打ち返した! それをまたミューが打ち返した。 それをまたレイディスコーピオンが打ち返した。 それをまた……以下省略。 バレーっていうか卓球かよっ! みたいなラリーの猛襲が繰り広げられ、ミューはだんだん息が切れてきた。 砂浜を照りつける太陽。平気な顔をしているレイディスコーピオン。ミューは熱さで意識が朦朧としてきた。 そして、ついに鉛のように重い鉄球がミューの腹にヒットした。 「うっ……」 当たってみるとカナリ痛い。 「大丈夫ですかセンパイ!」 とか身を案じながらもメグは痛がるミューの表情を激写。 そして、事件は起きた!! 日本ではありえないくらいのビックウェーブがミューたち全員を呑み込んでしまった。 なんだこの展開!? 海の中から現れる白い触手。 パソコンをやっていたアインが目を剥いて立ち上がった。 「大魔王イカだ!」 すっかり忘れてた。 「バイト君、フィギュアにするんだ!!」 アインが叫んだ。 そのときミューは……触手に捕まっていた。 「無理だから!」 しかも、メグまで捕まっていた。にも関わらず激写中。 「センパイ笑ってくださ〜い」 ついでに、レイディスコーピオンも捕まっていた。 「クソッ!」 レイディスコーピオンは自慢のハサミでイカの脚を切り刻む。 怒った大魔王イカが暴れ出した。なんかもう手に追えない感じだ。どうやって収拾するんですかこの事態! アインが叫ぶ。 「バイト君、必殺技を使うんだ!」 「必殺技ってなに!」 「アクアボムクラシュって叫びながらボールを投げるんだ!」 ミューは無我夢中で持っていたボールを投げることにした。 「アクアボムクラッシュ!!」 大魔王イカにボールが当たった瞬間、ドッカーン!! ミューたちを見事に巻き込んで見事な爆発。 まさか自爆技!? 砂が空に舞い上がり、煙幕が辺りを覆った。 「ゲホゲホッ!」 煙の中からミューが出てきた。 「あたしを殺す気か……」 辺りから煙が消えると、砂浜には隕石が落ちたみたいなクレーターが開いていた。 そして、アインは大魔王イカとレイディスコーピオンのフィギュアを大事そうに磨いていた。 今回もどうにかこうにかなったみたいで。 これで一件落着……と思いきや。 ミューは辺りを見回して気付いてしまった。 「メグちゃんがいない!」 まさかあの爆発に巻き込まれて……。 ミューの瞳に写る人影。 メグを抱きかかえて海から上がってくる美少年。 口からぷしゅーっと水を吐いてメグは目を覚ました。 なんか自分を抱いている上半身裸の美少年。慌ててメグは砂浜に下りた。 そして、見てしまった。 美少年の股間に生えているち○こ。 「きゃーっ!」 メグのツメがワトソン君の顔を引っ掻いた。 「にゃー!? 助けてあげたのになんで引っかかれなきゃいないにゃ!」 そんなこんなで事件は幕を閉じた。 そして、この日の夜にテレビ番組でこの事件が放送されたのだが、ほとんどカットされていたらしい。ち○このせいで。 ――どっかにある秘密結社ジョーカー帝都支部。 「ち○こに負けるとは……」 ゲル大佐は怒りで身体を震わせ、巨乳をプリプルさせた。 今日もサスペンダーだけで隠されている乳首がポロリしそうでしない。 通信装置に映し出される謎のシルエット。 《また小娘にやられたそうだな》 重厚なボイス。首領エックスだ。 「申し訳ございません首領」 ゲル大佐は頭を下げた。その姿は詫びているというより、ガッカリ肩を落としてる感じだ。 苦々しい顔をしてゲル大佐が顔を上げた。 「ち○このないレイディスコーピオンこそ、あの憎きプリティミューを倒してくれると信じていたのですが……奴はち○こに敗北したのです!」 レイディスコーピオンはミューをあと一歩まで追い詰めた。しかし、巨根を前にして怯んでしまったのだ。それが後々の敗北に繋がった。 「いや、しかしレイディスコーピオンが負けたのは無理もありません。あのち○こはアタクシが見惚れるほど立派なものでした……」 《言い訳とは見苦しいぞ!》 「も、申し訳ございません首領!」 ビシッとゲル大佐は背筋を正した。ついでに巨乳も揺れた。 《不甲斐ないお前たちに任せてはおれん。そろそろわしが遣わした怪人がその基地に到着するころだ》 「首領自らが遣わしたですと……?」 急にキツイ香水の匂いが部屋に立ち込めた。 「アタイをお呼びかしらぁン」 編みタイツを穿いたムチムチの太腿。 赤いマニキュアを塗られた長いツメ。 色っぽい唇の周りは……青かった。ヒゲだ! チューリップの花みたいなスカートを穿いた変態が現れた。 「むふふ、アタイの名前はサラセニアちゃんよぉン♪」 どう見てもオカマだった。 サラセニアとは食虫植物の名前だ。形は筒みたいで、そこに虫を誘い込んで溶解液で溶かしてしまう。 男でも女でもない怪人。これならばプリティミューに勝てると思ったのだ。 気になるところは股間についているか、ついていないかだ……。 ゲル大佐はサラセニアちゃんのスカート捲った。その眼が大きく見開かれる。 「な……なんという巨大な……しかもポジションも完璧だ……」 「いやん、えっちぃ♪」 こんなオカマで……本当にプリティミューに勝てるの……か? だが、ゲル大佐は確信した。 「これならば、これならばプリティミューに勝てるぞ! おーほほほほほほっ!」 果たしてゲル大佐は何を見て確信したのか? 巨大な……とはいったい何のことなのか! ち○こアリでも勝てず、ち○こナシでも勝てず、しかし今度の怪人は……。 ついに秘密結社ジョーカーの秘密兵器が動き出す。 プリティミューは巨大なアレにどう立ち向かうのか!? あれっ、てゆーかなんか重要なことを忘れているような? カキ氷シロップの謎とか……アインとか……。 おしまい 科学少女プリティミュー!専用掲示板【別窓】 |
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