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第6話_魔王復活 |
魔法大国アステアは今、一人の少女の身体を持った大魔王によって滅亡の危機にさらされていた……。 突如どこからともなく現れた魔王によって居住区は次々と焼き払われ街は死に業火に包まれ、人々は魔王の脅威に慌てふためき恐怖した。 アステア王国ヴァルハラ宮殿――今ここでは国の要人たちが集められ緊急会議が行われている真っ最中だった。 「君たちをここに集めたのは他でもない、この国は今魔王ハルカと呼ばれる者によって滅亡の危機にさらされている」 こう言ったのは現国王のクラウスだ。 彼は8歳という異例の早さで国王の座に付き、その才を活かしこの国を5年という短い時間の間に世界にその名を轟かす魔法大国とした若き王であった。 クラウスの声は重い……魔王の襲撃、彼は国王就任以来の最大の危機にさらされていた。 「すでに我が国の魔法兵団を戦場に投入したが……すでに全滅してしまったと聞いている……」 王の言葉にこの席に集められた者たちが一斉にざわめき始めた。 「まさか……世界に無敵と言わしめた魔法兵団が……」 「国王様、私たちはどうしたら?」 国王の表情は尚も重い。 「隣国に応援を頼んだが、応援が到着するのは早くても3日後になるだろう……だがその時にはこの国は……」 ……国王の言わんとすることが皆わかり、一同は沈黙した。 もうすでにこの国の最大の戦力は失われ、国の中枢、このヴァルハラ宮が落とさせるのも時間の問題だろう。3日など待っている時間はない。 甲冑の音を大きく響かせながら兵士が会議場に息を切らせながら飛び込んで来た。 「大変です、魔王が宮殿の目の前まで攻め入って来ました!」 人々はどよめき顔を見合わせた。 「静まれ!」 王の声で辺りは一瞬にして静まり返った。 「魔導砲の準備をさせろ!!」 魔導砲とはこの国の魔導士たちが古の文献を調べて現世に復元された魔導兵器で、その攻撃力は最大出力では小さな島を破壊させるほどのもので、その脅威の破壊力から実戦では今まで一度も使われたことはなかった。 王の意見に国始まって以来の”女性元帥”エルザが反論した。 「しかし、魔導砲は危険過ぎます。どの位の被害が出ると御思いで?」 ヴェガ将軍はその意見に顎ヒゲを手で触りながらこう言った。 「しかしねぇ、この国の非常事態にそんな些細なことを言っている場合ではないと思うが?(……ククク)」 「些細なことですって!(このゲスが!)」 エルザ元帥はテーブルを両手でバン! と叩きながら立ち上がり激怒した。 クラウス王はそんなエルザを見て、 「気を静めたまえエルザ元帥、確かに君の言うことはわからなくもないが我々には他に成す術が無い。君は何もせずに国が滅びるのを見届けろとでも言うのかね?」 「しかし……(国の宝である民の命が……)」 「国王の意見は絶対であるぞエルザ”元帥”(少し黙っていろメス犬は)」 エルザ元帥とヴェガ将軍の仲の悪さは王宮内では誰もが知っていることで、ヴェガ将軍がエルザ元帥よりも地位が下ということがエルザがヴェガの嫉妬をかう結果となり二人の仲を必要以上に悪くしているとも言われている。 国王クラウスは静かに淡々と二人に命令を下した。 「エルザ元帥は魔導砲の準備を、ヴェガ将軍は城にいる剣士たちを引き連れ魔王討伐を任せた」 「「仰せの通りに」」 エルザとヴェガは声を合わせてそう言うと、互いの顔を睨みつけた。 こうして、ついにアステア王国の存亡を賭けた魔王との戦いが本格的に始まったのだった……。 突然の爆発音とともに倒壊したルーファス宅を中心として、魔王の襲撃が始まった。 辺り一帯は瓦礫の山と化しその光景は悲惨なものであった。 中には生きながらにして瓦礫の下に生き埋めになった人もいるだろう……。救援隊はまだ来ない……だから彼女は自ら地上に出た。 瓦礫の山が爆発音とともに吹っ飛んだかと思うと、煙の中から女性が姿を現した。 「(……日差しがまぶしい)」 瓦礫に山の下から見事生還を遂げたのは彼女……カーシャだった。 カーシャは顔に手をやり空を見上げ瓦礫の山にたたずみ、辺りをくるりと見渡し考え事をした。 「(凄いことになっているな……このまま逃げるという手もあるがそうも言っていられないな。さて、どうするか? ……まずはあれからか?)」 『あれから』とは何のことだろうか? カーシャの考えることは少し理解不能なことがあるので検討もつかない。 カーシャは何かを探すように地面を見ながら歩き回ると、ふと足を止め、 「この辺り……」 と呟くと、腰を屈めて瓦礫を持ち上げては投げてという作業を繰り返し、どんどん瓦礫を退かしていった。すると、ベニア板が見えてきた……まさかこれは!? カーシャがベニア板を退かすと、そこに居たのは言わずと知れたルーファスであった。 カーシャはルーファスの姿を確認すると、ルーファスに足蹴り(かかと蹴り)をくらわしながらこう言った。 「起きろルーファス、いつまで気絶している気だ!」 気絶? ……ルーファスは死んだのでは? カーシャは容赦なくルーファスを蹴りまくる、ドゴッ! ドゴッ! とマジ蹴りだ……これは死者に対する冒涜では……なかったらしい。 ルーファスの死体が行き成り動き出しわめき出した!? 「痛いだろ、そんなに蹴るな! 一発目で起きてるから(まったく、なんでカーシャに蹴られなきゃいけないんだ)」 「だったら早く出て来い!」 あれっ? ルーファスは生きていたらしい……(笑)。 ルーファスは首をきょろきょろと動かすと思わずこう叫んだ。 「どこだここ!?」 ルーファスは気付くと穴の中にいた……そう言いたくなるのもわかる。 ルーファスは穴の中から這い出すと、辺りの風景がさっぱり、すっきり、ガラ~ンとしていることに気付いた。 「…………(なんじゃこりゃ~っ! ……建物が……町が……そんなことより自宅が無い!」 ルーファスは唖然としていまった……見覚えのある看板や建物が瓦礫と化している。 ルーファスは辺りを指差し今にも泣きそうな顔をしてカーシャを見つめた。 「何これ?(何があったの?)」 「魔王が”何故か”突然現れてな……こうなった(そんな目で見つめるな……はずかしいだろ)」 「魔王が……!? ハルカは、ハルカはどうした!」 ルーファスは慌てて辺りを見回した。 「ハルカはここにはいない……ハルカは……ハルカはもう……(……ふふ)」 カーシャの瞳は涙で濡らされ、地面に泣き崩れた。 「どうしたんだ、ハルカはどうなった?」 ルーファスはいつに無く真剣な表情でカーシャの肩を掴んだ。 突然立ち上がったカーシャの瞳には涙一つ無く、口元は笑っていた。 「それがだな、魔王に身体を乗っ取られて大変なことになってしまった、あはは(あれはもう笑うしかないな……ふふ)」 泣き崩れたのはカーシャちゃんの演出だったらしい。 「あはは、じゃない! 魔王にって、大事だろ!」 「全くだ」 カーシャの声にはまるで感情がこもってなかった。……誰がこんな事態を引き起こしたんだ! しかし、ルーファスはそれを知らない。 カーシャはルーファに背を向け突然歩き出しこう言った。 「ハルカを助けに行くぞ(……私の責任だからな)」 「当たり前だ……ところで魔王は何処にいるんだ?」 「知らん(とりあえず、こっちに歩いてみただけだ)」 「……(適当だ)」 カーシャは思いつきで生きる女だった。 倒壊した建物の上で今まさに戦いが繰り広げられていた。 「行けぃ、行け行け行け!どんどんかかれぇーっ!」 ヴェガ将軍はつるぎを前にかざし、その合図とともに兵士たちは次々と魔王に斬りかかって行った。 魔王は『ふん』と鼻を鳴らし手を天空にかざすと、その手が電光を放つと同時につるぎが現れ魔王はそのつるぎをガシッと掴んだ。 そのつるぎは雷をそのままつるぎにしたようなもので、丈が異常に長く普通の人間には使いこなせない魔王ならではの武器と言える。 つるぎを手にした魔王は襲い掛かって来る兵士たちにその刃を向け、いとも簡単に一掃してしまった。その光景は圧巻だった。力の差がありすぎる。そして、ついにはヴェガ将軍のみとなってしまった。 魔王は自分の下に転がる死体を踏みつけこう言った。 「人間とは無力なモノだな……私はこんなものの為に」 「魔王がどうした……そんなもの恐るるに足りんは!!」 ヴェガ将軍は叫び声を上げながら大剣を振りかざし、魔王に突然斬りかかった。 魔王はヴェガに哀れみの瞳を向けた。 「まだ、私に楯突く気か……?」 ヴァガの大剣が魔王を捕らえた……しかし、魔王は微動だにせず避けることすらしなかった。 「死ねぇっ魔王!」 ヴェガの大剣が魔王の肩に食い込んだ。 「(魔王など……!?)」 ヴァガの顔を見る見るうちに蒼ざめていく。……魔王が……剣で斬られたというのに魔王の口元は不適な笑みを浮かべている。 衝撃のあまりヴェガは身動き一つできなくなり、魔王に首もとを鷲掴みにしてそのまま放り投げられてしまった。 「ゴボッ……ウグ……(声が……出せん)」 ヴェガは首を抑え地面に這いつくばっている。それを見た魔王は静かにヴェガに歩み寄り彼のことを冷たい瞳で見下ろした。 「……こんなにももろく弱々しい者を神はなぜ作ったのか?」 突然魔王は腹に痛みを覚えよろめいた。魔王の腹には鋭い氷の刃が突き刺さっていた。 魔王は後ろを振り向き目を見開いた。 「お前か……女」 魔王の目線の先にはカーシャの姿が、 「待たせたな、魔王ハルカ」 たぶん魔王は待っていなかったと思う。 ハルカの身体に突き刺さった氷の刃を見て、ルーファスは取り乱した。 「な、なんてことするんだ、身体はハルカのものなんだぞ!」 そうルーファスの言うとおり、この身体はハルカのものだ。傷つけることは望ましくない。が魔王ハルカが自ら氷の刃を引き抜くと傷は見る見るうちに塞がり跡形もなくなってしまった。 「見ただろルーファス遠慮することはない、どんどん殺れ」 「(やれって言われても)」 ルーファスは躊躇した。だが魔王には躊躇などなかった。 魔王はつるぎを横にブン! と振り回した。カーシャはしゃがんでそれを避け、ルーファスはエビ反りで紙一重で避けたが服が少し焼け焦げた。 ルーファスの頬に冷や汗が流れた。 「(死ぬかと思った)」 と思ったのも束の間、魔王の次の攻撃が二人を襲う。 魔王のつるぎがルーファスの頭上に今まさに振り下ろされようとしていた。それを見たルーファスは両手を前に突き出しこう唱えた。 「デュラハンの盾!」 すると、ルーファスの前に半透明のシールドが現れ、間一髪の所で魔王のつるぎを受け止めた。 一般に使われる魔法、主にレイラ・アイラに関しては魔法を発動させる際にはその魔法の名を言う必要は基本的にないが、それ以外の魔法、ライラなどに関しては魔法を発動させる際には魔法の名前や詩を口に出す必要がある。 ルーファスの張ったシールドは明らかに魔王のつるぎに押されている。シールドが破られるのも時間の問題だろう。だがそのときカーシャがルーファスに向かって叫んだ。 「ルーファスその場を離れろ!」 と少し間を置いてすぐに言葉を続けるカーシャ、 「アイスニードル!!」 とカーシャが唱えると突然、魔王とルーファスの真上に巨大ないくつもの氷の刃が現れ急落下した。 地面に降り注ぐ氷の刃は容赦なく二人を襲う、そして魔王の身体を貫いた。ルーファスはシールドを張っていたおかげで助かったがルーファスの顔は明らかに引きつっていた。 魔王のつるぎに込められた力が少し弱まった隙をつきルーファスはシールドを解き猛ダッシュでその場から逃げると同時に魔王のつるぎが振り下ろされ地面を粉々に砕き横幅1m程の穴を開けた。 顔を引きつらせたルーファスはカーシャの方を向いてこう怒鳴った。 「巻き添えにして殺すきか!」 「だから、離れろと言っただろうが(それにシールドも張っていたしな、大丈夫だと思ったがな)」 魔王は地面に突き刺さったつるぎを引き抜くとこう言った。 「二人とも神の詩を詠えるとは驚いた」 その声は際して驚いているようには聞こえないが、二人に驚いたというのは本当だろう。 ライラは別名『神の詩』とも呼ばれ、文献などでは残っているのはその術を実際に使える者はそうはいない、先ほどライラを使った二人が一流の魔導士としての技量を兼ね備えている証であると言える。 魔王の目つきが変わった。その瞬間この場の空気が一瞬にして重くなった。 ルーファスとカーシャの身動きが止まり、魔王との息をもつかぬ睨み合いが始まった。沈黙が辺りを包み込む。 カーシャは天に手をかかげたままの体制で止まっている、次の攻撃の準備はいつでもできているというわけだ。一方ルーファスはこんな最中にこんなことを考えていた。 「(先に仕掛けるべきか否か……そうだった……お湯を沸かしたまま家を出てしまった)」 ルーファス今はそんなことを考えている場合ではないだろ。それに家はすでに全壊しているのでお湯の心配はいらない。 辺りの沈黙を破ったのは馬のひづめの音だった。 「止まれー!!」 という女性の声とともに馬に乗って現れたのはエルザ元帥率いる城に残って待機をしていた魔法兵団の残りだった。 魔王の目線が今運ばれてきた大きな荷物に注がれた。 「(……魔導砲!? ……人間がこのような兵器を持っていようとは)」 魔導砲は普通の大砲の3倍近くの大きさがあり、その表面には魔導文字がびっしりと刻まれている。 エルザは馬から飛び降りると魔導士たちにこう指示をした。 「魔王は私が少しの間引き付ける(魔王……見た目はたたの少女ではないか)、その間に魔導砲の準備をしろ!!」 その言葉を聞いた魔王は鼻で笑いこう言った。 「私を引き付けるか……面白い」 魔王はつるぎを構え直し、エルザを迎え撃つ体制を整えた。 エルザは地面を強く蹴り上げ魔王に向かって走り出した。そして、走りながら魔法で作り出した光り輝くライトソードと呼ばれるつるぎを出し魔王の近くにいた二人を見てこう言った。 「ルーファスとカーシャ先生、戦意がまだあるのならば援護を頼む!」 へっぽこ魔導士の名をこの国で知らない者はいないだろう。それと、エルザとルーファスは古くからの知り合いであった。それに加えて以前カーシャはルーファスとエルザが通っていた魔導学院の教師であった。 エルザは魔王に向けて刃を叩きつける。魔王はつるぎでそれを受け止め、ぶつかり合った剣から火花が散った。その間にルーファスとカーシャは魔王の背後に回って魔法を放った。 「サンダーボール!」(ルーファス)&「ライトクロス!」(カーシャ) 二つの魔法は魔王に直撃したが、魔王の身体には傷一つ付かず、ただハルカの着ている服がボロボロになっていくだけでもう上半身の服は着ていないも同然だった。それを見たルーファスは、 「(幼児体型だと思ってたけどそうでもなかった)」 と戦いには関係ないことを考えていた。ルーファスのえっちぃ。 魔王はエルザの剣を受け止めながら、片手をエルザの腹の位置に持っていき魔弾と呼ばれる魔法の弾のようなものを撃ち放った。それを受けたエルザの身体は後方に10mも飛ばされ、エルザの落ちた地面は大きな砂埃を上げた。 魔王はつるぎを消すと、腕を横に振るいながら呪文を唱えた。 「ウィンドカッター」 魔王の振るった手からは緑色に光る三日月状の刃が次々と砂煙を上げながらカーシャに向かって凄いスピードで飛んで行き、カーシャはそれを避けるためにレビテーションで上空に舞い上がったが、刃は方向を突如変えカーシャに尚も襲い掛かる。 魔王は意識を集中させ、ウィンドカッターを操っている。そのためカーシャがいくら逃げても刃は襲い掛かって来る。 次から次へと飛んでくる刃に逃げることしかできないカーシャはルーファスに助けを求めた。 「ルーファスなんとかしろ!(こんなに空を飛び回っていたらスカートの中身が丸見えだ)」 カーシャは刃に当たることより、自分の穿いているスカートの中を人に見られることを気にしているらしい。カッワイイ~。 ルーファスは少し考えた。 「(魔法で魔王を攻撃してもシカトされそうだから、刃本体を相殺した方がいいか)」 そう思った彼は刃に直接魔法を放った。 ルーファスは横投げの要領で手の平に魔弾を作り出し投げた……が魔弾は見事的から外れた。 「標的が遠すぎる」 ルーファスはボソッとそう呟いた。 「ちゃんと狙えへっぽこ!」 そう言われたルーファスは作戦変更、空を飛んで標的の近くまで行くことにしたのだが、空を飛んだまではよかった……が作戦は失敗だった。空を飛んだために魔王の視界に入ることになり、刃がルーファスまでも襲うことになったのだ。それを見たカーシャは本気でこう思った。 「(役立たずのへっぽこ)」 「わ~助けてぇー誰かー」 ルーファスは必死で刃を交わしている。役立たずだ。 上空で刃から必死に逃げるその姿は遠めから見るとまるでうるさいハエ飛び交っているようだった。 一方魔導砲の準備はというと――魔導士たちが魔導砲に向けてマナを注ぎ込んでいる真っ最中だった。そうここに集まった魔導士たちは目の前で戦いが繰り広げられていたのをただ見ていたわけではない、魔導士たちは自然界にあるマナを自らの身体を通して魔導砲に注ぎ込んでいたのだ。そして、ついに魔導砲を最大出力で打てるまでのマナを注ぎ込み終わった。 「撃てーーーっ!!」 エルザ元帥の声とともに魔導砲が轟音を立てる。魔王はその音を聴いてはっとした表情を浮かべた。この攻撃はまさに上空を飛びかう目障りなハエに気を取られ過ぎた魔王にとっての誤算が生み出した不意打ちであった。 魔導砲はもの凄い音と光を放ちながら地面をなぎ払い魔王に向けて進んで行く。次の瞬間、辺りは耳の鼓膜が破れんばかりの衝撃音とともに爆風が巻き起こり世界は白一色になった。 徐々に世界に色が戻って来る……魔王はどうなったのか? 魔王はまだ生きていた。魔王は両手を自分の前に突き出しシールドを張り魔導砲を受け止めてはいるものの、魔王の身体は地面を削りながら徐々に後ろに押されている。 それを見た魔導士たち、そしてエルザ元帥は愕然とした。小島を一つ消滅させてしまうほどの攻撃力を持つ魔導砲がシールドで防がれている。しかし、彼女たちにはそれを見ていることしかできない、すでに自らの身体を媒体として大量のマナを魔導砲に注ぎ込んでしまったため身体に過度の負担をかけ立ったいることすら困難な状況なのだ。 そうとなればこの場でまだ戦えるのは、あの二人しかいないハズなのだが、二人の姿は何処にも見当たらない……。二人は魔導砲が巻き起こした爆風とともに何処かに飛ばされてしまっていたのだった。 魔王のシールドがミシミシという音を立てながらヒビが入り始めた。このまま行けばシールドは壊され魔王は魔導砲の直撃をくらうと誰もが思ったとき、魔王の身体に変化が現われた。 ハルカの背中から突如漆黒の悪魔の翼が生え、肌にはヒビが入り皮がどんどん肉とともに剥がれ落ち地面にボトボトと落ち始めた。脱皮っぽい!? 魔王の身体が徐々に魔導砲を押しながら前に前進して行く。そしてついには魔王は一気にマナを増幅させて、魔導砲の軌道をずらし空の彼方に弾き飛ばしてしまったと同時にハルカの身体が膨張し肉が全て剥げ落ち、中から別の生き物が姿を現した。脱皮完了!? 漆黒の引き締まった身体と紅い翼と鋭い手の爪を兼ね備え、燃えるような瞳でエルザたちを睨みつけていた。 この姿こそが魔王ハルカの真の姿であり、魔王復活の瞬間でもあった……。 真の復活を遂げた魔王。ハルカはどうなってしまったのか……。そして、あの二人は今どこに……? つづく 大魔王ハルカ総合掲示板【別窓】 |
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