第1話_憧れのセンパイ
 和清(かずき)はずっとこんなチャンスを待っていた。
 憧れの優輝(ゆうき)センパイと二人っきりになれるチャンスを。
 高校に入学して、部活なんて入る気なかった和清だったが、放課後ぼーっと廊下を歩いていると、目の前に絵画を抜け出してきたような女神が現れた。
 そして、誘われるままふらっと入部してしまった演劇部。
 まったく演劇経験なんてなかった和清だが、部活動は皆勤賞。もちろんセンパイ目当て。
 部員は片手で数えるほどしかいないので、2年生の優輝が部長をしている。副部長は1年生だ。
 そんな部員不足のせいで、ろくな舞台もできないし、練習はいつも発声練習ばかりで終わってしまう。
 はじめのうちは長かった部活の時間も、だんだんと短くなってきてしまうのは仕方ない。
 今日も陽が暮れる前に部活が終わってしまった。
 憧れのセンパイと少しでも長くいたい。
 最後まで空き教室に残っていた和清と優輝。
「カギ閉めるから早く出て」
 と、優輝が帰宅を促す。
 ――帰りたくない。
「あの……センパイ!」
 和清の声は少し震えていた。
 その変化を感じ取ったのか優輝は首を傾げた。
「なに?」
「付き合ってください!」
「どこに?」
 そんなことを言いたいんじゃない。でも優輝も気づいているみたいだ。だって優輝は小悪魔みたいなイタズラな笑みを浮かべている。
 和清は優輝に詰め寄った。
「そうじゃなくて、センパイのこと好きです!」
「知ってるよ」
 和清はドキッとして言葉に詰まった。そして、恥ずかしさが込み上げて込み上げて、胸が掴まれたみたいにギュッと苦しくなってしまった。
 イタズラな笑みを浮かべる優輝は和清と目と鼻の先まで近づいた。嗚呼、呼吸が聞こえる。
「だってカズ君わかりやすいから」
 和清は動けなかった。汗がどっと出る。
 気持ちを悟られないように隠していた――と思っているのは本人だけ。バレていた、しかも好きな相手に指摘されるなんて、こんなに恥ずかしいことはない。
 頭の中は真っ白。
 勇気を出した告白も、どこかか遠い空へ飛んでいってしまった。
 世界が回転した。
 和清の視線は壁から天井に向けられ、すぐ目の前にはふっくらとした唇。
 強烈で刺激的なキスだった。
 床に押し倒され、唇を奪われた――憧れのセンパイに。
 ずっと憧れだった。
 離れた場所から眺めていた――憧れ。
 手が届かなかったからこそ――憧れ。
 それが今、唇と唇を重ね合わせて、互いの温もりまで感じている。
 和清はそっと優輝の背中に手を回した。指先は震えてしまっている。
 スラッとしていて痩せて見えていた優輝だったが、触れてみるととてもやわらかい。やわらかいだけではなく、優しく押し返してくる。
 いやらしく動く優輝の舌に応えようと、和清は懸命に舌を絡ませた。
 優輝の顔がそっと離れた。唾液で濡れた唇から伸びた糸が、和清と繋がっている。
 股間が熱くなり、和清はもっと深く繋がりたいと欲望がたぎった。
「このまましてもいいんですかセンパイ?」
「されるのはカズ君のほう。するのはわたし」
 パンツを脱いでイタズラな笑みを浮かべる優輝。
 和清はゾッとした。
 目の前でありえないことが起きていた。
 スカートを押し上げる尖ったなにか。
 ツンとする臭いがした。
 ビクッ、ビクッとスカートが揺れた。
 優輝のスカートの中になにかいる!?
 股間を萎縮された和清は脳裏に浮かんだモノを強く否定した。
「ウソ……だろ……センパイ?」
「なにが?」
 ビクッ、ビクッとまたスカートが揺れた。
 口をあわあわとさせながら和清はスカートを指差した。
「ウソだって言ってくれよ」
「なにがウソなのかなァ? ハッキリ言ってくれないとわからないよ。さっきわたしのことスキって言ってくれたときみたいに、ここにナニがあるかハッキリ言ってみて」
 そんな恐ろしいこと口にできない。
 ずっと憧れていた、告白もした、大人のキスもした。そのすべてが崩れてしまう。いや、崩れるなんて生やさしいものではない。
 破壊。
 破滅と崩壊。
 驚きと恐怖が世界を冷たく凍らせる。
 身動きのできない和清の手を優輝が無理矢理つかんだ。
 和清は抵抗する気力を奪われていた。
 手が導かれる。
 優輝の手が和清の手を包み込み、スカートの上から硬いモノを握らされた。
 夏服のスカートは生地が薄く、その凹凸が手に伝わってくる。
 先っぽは少しやわらかく、くびれから下は硬く太く、そして熱い。
 スカート越しに和清の手の中で、ビクビクと跳ねるように動いている。
 優輝は和清の手を強引に動かして、棒状の硬いモノをスカートの上から擦った。
「んっ」
 優輝の鼻から漏れた甘い声。
 少女の声。
 声だけであれば、興奮せずにはいられない。
 しかし、手の中にある現実。
 和清の手のひらで先端が転がされる。
 目尻を下げた優輝の頬は紅潮して、今にも蕩けてしまいそうだ。
「ねェ、カズ君。わたしのとカズ君のと、どっちが大きいかなァ?」
 和清は手の中でそれが大きくなったのを感じた。
 じゅわぁっとスカートに染みが浮かぶ。
 優輝のイタズラな笑みは妖しくていやらしいほどだった。
「背比べしよっか?」
 混乱している和清には、優輝の言葉が理解できなかった。
 けれど、それはすぐにわかる。
 ベルトをつかんだ優輝の手。
 乱暴にベルトが外され、チャックを開けられたズボンは脱がされ放り投げられた。
 優輝は恍惚と嬉しそうな顔をした。
「カズ君には素質あると思ってたんだ」
 輝く瞳の先でトランクスが下から押し上げられていた。
「違っ……違うんだよこれは……」
「なにが違うのかなァ、こんなにおちんちんビンビンにさせて」
「っ!」
 和清は絶句した。
 小悪魔の言うとおりだ。
 間違いない。
 和清は勃起していた。
 それも激しく勃起していた。
 一度は萎縮した猛りが、スカート越しにそれを触らされているうちに、再び肉欲を蘇らせたのだ。
 肉体の反応とは裏腹に、和清は否定した。
「違うんだよ、本当に違うんだよ」
「いいよ、言い訳しなくても。だってわたしのアレ触ってるときに大きくしちゃったんでしょ。わたしのアレを触って興奮したんだよ、カズ君は」
 和清は否定したかった。
 でも体は否定を許さない。
 優輝に言葉を投げかけられながら、和清はさらに硬くしてしまったのだ。
 トランクスがズリ下げられる。
 竿が下を向き、トランクスが脱がされたと同時に、バチンと跳ねて腹を打った。
 もう痛いほど膨張している。
 目の前で勃起した肉棒を見られている。
 ただ見られているわけではない。
 あんなことで勃起してしまった肉棒を見られているのだ。そう、あんなことで。
 辱められている和清に、なおも浴びせられる辱めの言葉。
「勃起しても先っぽが隠れるくらい皮が余ってるね。わたしのこと考えていっぱいオナニーしすぎたのかな?」
 好きな子のことを考えてオナニーをしないわけがない。
「わたしもカズ君のこと考えて、いっぱいいっぱいオナニーしちゃった」
 スカート越しに棒をつかんで優輝は上下に擦った。
 そして、和清の先っぽに近づいてくる濡れた唇。
「うっ」
 思わず和清は声を漏らしてしまった。
 皮の中に舌が入ってくる。
 舌が亀頭に絡みつき、上手に皮を剥いていく。
 抵抗することはできたはずだ。
 しかし、和清はされるがままに身を任せた。
 亀頭は激しく吸引され、優輝の唇がカリに引っかかり、ポンっと音を立てながら抜けた。
 跳ねる肉棒。
 優輝の唇から垂れた涎れ。
 完全に皮を剥かれ、肉色の顔を出した先端。
 いやらしい小悪魔の瞳が和清に見つめていた。
「じゃあ背比べしよっか」
 優輝は和清の太股に跨ると、スカートの中に和清の肉棒を隠した。
 見えないスカートの中でなにが起ころうとしているのか?
 先っぽと先っぽでキスをした。
 どちらのせいなのかわからないが、ヌルッとした先端のせいで、無邪気にキスをしながら擦れてしまう。
 キスのあとは激しく抱き合った。
 二つの棒が優輝に握られ、背比べをさせられたのだ。
 和清の体がビクビクと跳ねてしまった。
 親指の腹で弄ばれる和清の亀頭。
 潤滑剤がたっぷり出ているために、グチョグチョに弄られてしまう。
 強すぎる快感に和清は絶えられなかった。
「センパイ、センパイ!」
 喘ぐような叫び声。
「どうしたのォ、もっとして欲しいのォ?」
「もうやめて……苦しい……死ぬ、死ぬ……」
「天国にイっちゃっていいよ」
 二つの棒を握る優輝の手が上下に動かされた。
 先端に合わせて竿までも……。
「ひぃぃっ!」
 和清が顔を引きつらせた次の瞬間だった。
 ドビュ!
 ドクッ……ドクドク……。
 青臭さが充満して、スカートの内側から染みが浮き出てきた。
 ボトボトと熱いモノが和清の腹に落ちる。
 スカートから抜かれた優輝の手は、白濁液でべっとりと汚れていた。
「カズ君、いっぱい出ちゃったね」
「……はぁ……はぁ……」
「わたし、まだイッてないよ?」
 そう言って優輝はついにスカートを捲り上げた。
 眼を剥いて和清は恐怖した。
 ビクッビクッと震える巨大な影。
 それは和清の想像を絶していたモノだった。
 もう逃れることはできない――この世界から。

 無印 おしまい


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